自前で設備をつくる
装備製造業(注4)でも、新たに「外国要素」に向き合おうとしています。装備製造業は文字通り、設備をつくる産業です。「世界の工場」といわれながらも、例えば、集積回路チップ製造設備はその95%を、乗用車製造設備、デジタル工作機械、紡績機械、オフセット印刷設備はその約70%を輸入に頼っているのが現状です。中国国務院は、昨年6月、『装備製造業の振興を加速するための若干の意見』を発布し、優遇輸入税制や産業再編などで、同業界の高すぎる対外依存度、不合理な産業構造、低い国際競争力を是正するとしています。要は、装備製造業を振興し、自前で設備をつくっていこうというわけです。
そのカギは外資系企業との大胆な連携、特に、対中投資の主流となりつつあるM&A方式による外資導入にあるといえます。この点についてはすでに中国最大手の瀋陽機廠(瀋陽工作機械工場)の株の30%をめぐって、米国ヘッジファンドが中国建機大手の三一重工との取得合戦を制したとか、今年上半期に遼寧省(注5)で新規設立された外資系設備製造企業が227社の多数に上ったなどの事例が指摘できます。
中国にとって装備製造業の振興は、時代の要請となっているわけですが、当の装備製造業には国家を代表する重点企業が多く、外資を無制限に受け入れられないことは、米カーライル社の中国大手建機メーカー、徐工機械のM&Aが紆余曲折したケース(注6)などが教えるところです。装備製造業の振興に「外資要素」をどこまで許容していくのか、中国は時代の選択に向き合っているといえます。
経済規模で世界第4位となった中国は、世界経済に大きく貢献してきました。同時に、エネルギー、環境問題そして粗放型産業構造による経済の非効率性など課題を内包しています。装備製造業の振興はこうした課題の是正につながると期待できます。
今や、中国経済の課題を世界が共有する時代です。その意味で、中国の装備製造業の発展は世界の問題であるとの問題意識が広まり、かつ、アウトソーシング業の隆盛で中国経済の「顔」の表情が変わることを期待したいものです。
注1 信息産業部によれば、中国のソフト・情報サービス業は2000年以来、年率40%以上の発展を遂げており、同輸出は5年間で7.4倍も増加。
注2 『大連日報』2007年6月22日。また大連、西安、成都、深セン、上海、北京、天津、南京、済南、武漢、杭州は、アウトソーシング・サービス拠点都市に認定され、税制面などで優遇措置を受ける予定。
注3 『21世紀経済報道』 2007年8月6日
注4 機械工業および電子工業の一部、汎用・専用設備製造業、航空・宇宙関連製造業、鉄道運輸設備製造業、交通器材・交通運輸設備製造業、電気機械・器材製造業、通信設備・コンピューター・電子設備製造業、計器・メーターおよび事務用品製造業など。
注5 遼寧省を先進的装備製造業拠点とする優遇政策を制定済み。(人民ネット2007年8月8日)
注6 徐工機械が重点企業であったことから、カーライル社の買収に待ったがかかった。 |
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