涙の中に笑いあり――庶民の喜び悲しみ描く中国映画

 

 

 2007年、賈樟柯の『三峡好人』をはじめ、一般庶民の日常生活を反映した映画が相次いで上映された。「大作」を視覚的に十分に楽しんだ後、観衆たちはさらに作品の「市井の人々」の物語に打たれた。

 

 『三峡好人』に描かれていたような、寂しく、そして哀れな雰囲気とは異なり、その後上映された「市井の人々」を描いたいくつかの映画は、いずれも喜劇性と悲劇性を融合し、笑いの裏に隠れた涙の物語である。社会の底辺に生きる人々の生活の辛さを語ってはいるものの、自嘲やユーモアも交え、全体の雰囲気はそれほど重苦しいものにはなっていない。そのため、より多くの一般観衆に受け入れられ、好評を博した。以下の作品は、その中の代表作と言えるものである。

 

『鶏犬不寧(One Foot off the Ground)』

 

『鶏犬不寧』のポスター

 河南省開封市の豫劇(河南省の地方劇)の劇団では、長年の経営不振のために、中年役者たちが相次いで退職せざるをえなくなった。芝居以外、何ひとつできない彼らは、たちまち生活の重心を失ったようになってしまう。馬三は毎日ぶらぶらと仕事もせず、闘鶏に明け暮れる。四海は犬を売って生計を立てる。劉兵は鶏の蒸し焼き売りの義父に頼りながら、写真館を始める。しかし、彼らはそんな平凡な一生に甘んじていたくはなかった。そこで、それぞれが腕前を発揮しようと、あれこれととんでもないことをやらかす。

 

 庶民の生活を描くこのコメディーのセリフには、河南訛りが使われている。現状に満足できない主人公たちは、生活を変える道を探ろうとしているが、さまざまなひどい目にあっては、笑われるばかり。しかし、そんな笑いの後に、なんともいえない悲しみがわき起こってくる。

 

『落葉帰根(Getting Home)』

 

 落葉帰根』のポスター

 趙とその義兄弟の劉は、故郷を離れ、深センに出稼ぎに来ていたが、ある日、劉が事故で死んでしまった。二人の故郷には、他郷で死体をさらすとさまよう亡霊になってしまうという古くからの言い伝えがある。そこで趙は、劉の死体を故郷に連れ帰り、故郷で埋葬しようと決意する。途中、トラックの運転手、強盗、警官、美容院の女の子など、さまざまな人物と出会う。関わりにならないように避けようとする人もいれば、気前よく助けようとする人もいる。この旅をめぐって、不思議な物語が展開してゆく。

 

 中国のトップコメディアン趙本山主演のこの映画は、「死」がテーマではあるが、軽やかに、ところどころに面白可笑しいシーンが組みこまれている。ほどよい匙加減をわきまえた趙本山の見事な演技によって、軽薄な印象を与えない作品に仕上がっている。

 

『香巴拉信使』

 

インターネットによって広く知られるようになったチャン族(羌族)のアマイナさん。『香巴拉信使』で、重要な役である翔秋を演じた

 山道を通う郵便配達人の王順友(詳しくは本誌2006年4月号に参照)の実際にあった話を脚色したこの映画は、片田舎の郵便配達人・王大河がたった一人で、山地に住む人々に郵便物をとどける様子を描いたものである。一通の手紙を届けるために、十数日も歩かなくてはならない。しかも行く手に待つのは険しい道である。夜になると山中で野宿し、かがり火の灯りに頼って馬に新聞を読んで聞かせる。ある日、住民に届ける一匹の子ブタが逃げてしまった。花が満開の山道を、王は子ブタを追って駆けのぼってゆく。

 

 こうした軽やかでユーモアのあるストーリーに対して、後半は重苦しいムードの、著しく対照的なストーリーとなっている。やがて、王は暴走した馬に蹴られて重傷を負うが、山奥では助けてくれる人もいない。そうこうしているうちに、馬も怪我をして歩けなくなってしまう。大雨の中、王はつらさに歯を食いしばり、心を鬼にして大切な馬を殺す。この瞬間、前半の美しいシーンがまぶたの裏に浮かび、涙せずにはいられない。

 

人民中国インターネット版

 

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