車内で過ごす楽しい時間
北京交通ラジオ局の李秀磊・副局長は近年の発展について次のように話す。「以前、北京の道路が渋滞であればあるほど、ラジオ局は人気が出ると冗談を言われたことがあります。実際、私たちは北京の発展と人々の生活の変化に合わせて、運転中や渋滞中に必要な情報を提供しようと最大限の努力をしています」
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「1039自動車クラブ」が組織したドライブ旅行はリスナーたちに大人気だ | 路上でまず欲しいのは道路状況の情報だ。北京の道路にはたくさんの交通監視カメラが設置されていて、交通ラジオ局にとっては主要な情報源となっている。これに商建成さんや王景順さんのような情報連絡員からの情報が加わり、交通ラジオ局の交通情報は、車の流れをスムーズにするために大きな役割を果たしている。
交通情報を伝えるのは、最初の頃は30分に一回だったが、今では15分に1回になった。朝夕のラッシュアワーには、アナウンサーが交通指揮センターの大型スクリーンに提示された交通情報を直接リスナーたちに伝える。
しかし実際、マイカーで通勤する人たちは、毎日自分が通っている道路の状況についてはよく知っている。それではなぜ交通ラジオ局の放送を聴いているのかというと、ほかにも興味を引かれる内容がたくさんあるからだ。
交通ニュースは、路線バスや地下鉄、飛行機、鉄道などの情報も伝えるし、自動車の購入や種類、性能・特徴、中古車の売り買いに関する知識を披露したり、修理や車検、点検整備に関する内容を紹介し、ドライバーの質問に答えたりする番組もある。さらに、若くて流行に敏感な人たちに向けて、自動車の改装やドライブ旅行などの情報を発信する番組もある。こういった車に関する話題に、中国人は最近とても関心を抱いているのだ。
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北京交通ラジオ局のスタジオ | また、北京の人々は、交通ラジオ局の放送は北京人特有の世間話をするような雰囲気で番組が進み、ユーモアたっぷりで面白いと感じている。渋滞のなかで感じるストレスを和らげてくれるとともに、気持ちを軽くしてくれ、温かみや親しみを感じさせてくれる。
李副局長は、「90年代に放送を開始したときは、香港や台湾の訛りが流行っていたため、北京交通ラジオ局のような大陸風のスタイルはダサかった。しかし十数年たった今では、逆にこれがオシャレになりました」と話す。今は庶民の言葉で庶民のことを語るラジオ局が増え、庶民に合わせた親密な口調がリスナーとの距離を近づけたことと、経済発展により大陸文化に自信が出てきたためだろう。
今のラジオ放送が以前と大きく違うのは、リスナーとの双方向性の交流がますます増えていることだ。聴きたい曲の電話リクエストから始まり、携帯電話のショートメールが普及してくると、リスナーたちは「我が家の近くの道路に子犬がいるので、運転手さんたちに注意を促してください」といったメッセージを送るようになった。アナウンサーがこのようなメッセージを読んだことで、身近なことについて話したいという願望が誘発された。そして、路上で見たこと、聞いたこと、思ったこと、生活上の楽しいこと、困ったことなどを送るようになった。
あるとき、一人の女性が送った「27センチの女性モノの靴を探しています。売っているところを知っている方いませんか」というメッセージが読まれると、すぐに「売っているところを知っている」という返事が戻ってきた。「私たちのところでオーダーメイドできますよ」という靴生産工場の人からの返信まであった。このように、お互いに助け合う場が自然と形成された。
車の運転は閉鎖された孤独な空間のなかで行われるが、交通ラジオ局によって、見知らぬ人とも情報交換したり、気持ちを分かち合ったりすることができる。おもしろくしかも実用的。たとえば雨や雪の日は、初心者ドライバーは怖くて慌ててしまう。そんなとき、ラジオのアナウンサーや車を運転しているリスナーたちがどうすればいいのかを教えてくれ、緊張をほぐしてくれる。
北京交通ラジオ局とリスナーたちの双方向性の活動はますます広がっている。植樹活動を行ったり、貧困地域の小学校に寄付をしたり、生活に困っているタクシードライバーを援助したりと、その活動の幅はさまざまだ。また、自動車クラブを組織してドライブ旅行に出かけたり、自動車博覧会を催したりしている。こういった活動により、ラジオ局とリスナーたちの気持ち、そして関係はさらに深まっていく。 (馮進=写真 侯若虹=文)
参考データ
▽中国初の交通ラジオ局は、1991年9月30日に誕生した上海交通情報ラジオ局。今では、ほとんどの大・中都市に交通ラジオ局がある。全国の交通ラジオ放送の広告総量は3年ほど前から毎年25%以上の伸びで増加。2006年の広告収益は15億1600万元に達し、ラジオ放送全体の広告収益の31%を占めた。
▽ラジオの生放送、双方向性というスタイルは各地で好評を博している。遼寧省葫蘆島市では、千台近くのタクシーが交通ラジオ局の放送を聴いて、車を奪って逃げた犯人を追跡したことがあった。45時間後、犯人3人はタクシードライバーと警察によって捕らえられた。
▽1950年代、北京の自動車保有量は2300台だった。1978年は約7万7000台、北京交通ラジオ局が設立された1993年は40万台。1997年2月には100万台に達し、2003年8月には200万台、2007年5月にはとうとう300万台を超えた。 |
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