公園

 

 

監督 尹麗川(イン・リーチュアン)

2007年 中国  97

11月 彩の国さいたま中国映画祭上映作品

 

あらすじ

 

 昆明のテレビ局で生活情報番組のディレクターを務める小君の父親が郷里から出てきた。高校の教師をしていた父親は娘が嫁き遅れるのを心配し、公園で子どもの良縁を探す親たちの仲間入りをする。実は小君には音楽を志す年下の恋人がいるのだが、収入が安定しない彼との結婚は目鼻がつかない。

 

 父親は社会学を研究する息子がいるという女親と知り合い、小君は初め見合いに反発するものの、その母親と自分の父親が再婚したらいいのではと思い始め、両家揃っての食事が成立するが、相手の青年がゲイであることを偶然知ることになった父親は憤慨して席を立ってしまう。

 

 田舎に帰るための汽車の切符を買いに出かけ、スリに遭い、スリともめた父親は留置所に入れられてしまう。自分が娘の役に立つどころか、娘に迷惑をかけたことがショックで、ふさぎこんだ父親は老人性うつ病にかかってしまう。

 

 逆に病んだ父を思いやるようになった小君は男手ひとつで自分を育ててきた父の思いに気づき、父と寄り添って生きることを決意するのだった。

 

解説

 

 観光と文化による地域振興を狙う雲南省が始めた、毎年2人の若い女性監督が雲南を舞台に撮るというプロジェクト「雲南影響」の第一作。監督はフランスに留学し、ドキュメンタリーを学んだとはいうものの、ストーリー映画は初めてという前衛詩人の尹麗川。2003年にテレビのドキュメンタリー番組で各地の公園に子どもの結婚相手を探す親たちが釣り書きを手に集まっているという報道を見た尹麗川は、一気にこの父と娘の物語の脚本を書き上げたという。

 

 文化大革命の前、あるいは、そのさなかに青春期を過ごした親の世代と改革開放後に成長した子の世代の間に横たわる溝は大きい。一組の父娘を描きつつ、監督の目は世の中の全ての親子に注がれ、不器用ながらも互いを思いやる気持ちを理解していく姿を淡々と、だが情感たっぷりに描いていて、初監督作品ながら、見る者の心に響く作品に仕立て上げた。

 

 主人公が見合いする青年の一人がゲイであることも描かれ、それが公開に至ったことにも感慨深いものがある。中国社会のさまざまな現実を見事に捕らえた佳作である。

 

見どころ

 

 主人公が独りで住む古い家のインテリアの色彩が愛らしく、ちょっとした小物にまで細心の注意が払われ、実にセンスがいい。エリック・ロメールの『満月の夜』を思わせる雰囲気だなあと思っていたら、監督がフランス留学の経験があると聞いて納得。昆明の夜の街の通りの雰囲気も、あるシーンなどはまるでユトリロの絵のように美しいことにも感嘆した。ヒロインの衣装もカジュアルだが洒落ていて、聞けば監督自身の手持ちのTシャツなどを着せたそう。何度も見ると、細部にまで神経の行き届いた実にセンシティブな作品。

 

 登場人物の台詞も自然で、いわゆる芝居口調を極力排除しているのが分かる。公園に集う親たちは実際にそこに集まっていた人たちを撮ったのかと思うほどだ。ドラマの中に主人公や見合いの相手の一人が取材した映像を盛り込むなど、ドキュメンタリーを学んだと言うこの監督らしさも生きている。

 

 主演の李佳は、『故郷の香り』で演じた農村の女性とはまったく違うモダンな雰囲気で、いかにも今風の若い女性をさらりと演じて、好感が持てる。感心したのは父親役の王徳順の演技。『ヘブン  アンド  アース』で演じた老いぼれ傭兵とは、しばらくは気づかないほどの変貌ぶり。もともと身体芸術家であって俳優ではない彼を変身させた監督の手腕に驚いた。

人民中国インターネット版

 

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