チャン族は、「万物に悉く霊が宿る」という多神教を信仰している。村内の所々に神を体現する白い石が置かれているが、それぞれが、天神、地神、山神および関帝聖君(三国時代の武将関羽をさす)などの諸神を意味している。アバ・チベット族チャン族自治州の他の県には、白い石を祖先として祀っているチベット族の村もある。
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誰もがチャン族刺繍のすばらしい技術を持っている村の女性たち |
竜さんの家の門のそばに、約30センチ四方の穴を見かけた。不思議に思って聞いてみると、民家の門を開けるためのものだと分かった。鍵そのものは木製で、長さ約40センチ、幅7、8センチのものである。上部に、2、3個の木の釘がついていて、門を開けるときは鍵を持った手を穴に入れて、内側から木製の錠前を開ける。それぞれの鍵は釘の位置が違っており、異なる錠前を開けるのに使い分けられるようになっている。
桃坪寨の建築の中でも、もっともすばらしいものとして地下水路を挙げなければならないだろう。黒石板で築かれた暗渠がクモの巣のように村の隅々まで分布している。澄み切った山の泉が暗渠を通じて、各家まで流れ込み、人々はわざわざ外へ出ることなく家にいながらにして利用することができるのである。
万が一戦争が起こっても、流れの絶えることのない泉があれば、侵入した敵と持久戦を続けることができる。火災が起こっても、その場で水を汲み、火を消すことができる。古代チャン族の人々は、独自の知恵を働かせ、こうした給水システムを作り出したのである。
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多くの民家の前に掛けられている紐でつなげられた豚の肩胛骨は、その家の主人の生活の豊かさを象徴している |
櫓の背後の壁は平らではなく、上から見ると内側へ凹んだ二つの弧線が並んでいるような形になっている。この建築様式は、力学の原理を巧みに利用したもので、建物の各階に均衡に力がかかるようにすることによって、櫓の美観を強調しつつ、櫓をさらに堅固なものにしている。
狭い木製の階段に沿って、櫓の頂に登った。閉ざされた建物の中のすべての壁に、2、30センチ四方の通気窓がある。普段は通気用であるが、戦時には射撃口として使われた。
近づいてみると、勇ましい強固な面持ちの櫓と荘房は、優しい顔も持っていることがわかる。多くの石壁に、平べったい石で築いたまざまなデザイン、装飾が施され、古代チャン族の美に対する追求と信仰が現れている。
昼食の時間になった。竜さんは、彼女のいうところの「街では買えない、食べられない」チャン族料理、ベーコン、香ばしい豚のもも肉、蕨…などをごちそうしてくれた。(劉世昭=文・写真)
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