石景山から曹妃甸へ③ 白紙に描かれた設計図

 

 

新しい首都鉄鋼の設計責任者の何巍・首都鉄鋼設計院院長
 首都鉄鋼が北京から出て、中国全土で「新しい家」を見つけようとしているとき、渤海湾にある小島の曹妃甸が浮かび上がってきた。

 

 唐の太宗の妃の曹氏がここに埋葬されたことから名付けられたこの島は、孫文の『建国方略』では「北方の大港」になるべきだと認識されていた。曹妃甸を抱える河北省は、すでにその巨大な開発価値に気付いていたので、双方はすぐに同調した。

 

 確かに、曹妃甸は天然の深水の良港である。大陸側の水深は1.5メートルほどしかない浅瀬で、大海に面した側は急に25メートルも深くなり、浚渫しなくても25万トン以上の巨船が停泊できる。しかしさまざまな原因で、この島は長い間荒れ果てたままに置かれ、ずっと開発されてこなかった。

 

 だが首都鉄鋼にとっては、これがかえって幸いした。「白紙」の上に、自由に設計図を描くことができたからである。

 

首都鉄鋼。北京の市街地の拡大と都市建設によって、首都鉄鋼の発展はますます多くの制限を受けるようになった(写真=魯忠民)
 2003年、この「白紙」が、首都鉄鋼設計院の何巍院長の前に置かれた。そのとき、彼は興奮した。が、かつてない圧力も感じた。新しい首都鉄鋼をどのような姿にするか。どのように設計すれば、所期の目標を実現することができるか。当時、39歳の若さだった何院長は、彼の設計グループを率いて、日本、韓国、欧米の有名な鉄鋼企業を訪問した。

 

 その後の2年間に、彼らは国際的な進んだ経験を参考にし、首都鉄鋼の実際状況と結び付け、設計に打ち込んだ。「もっとも苦労したのは、移転の過程で、新しいものを創造しなければならないことが数え切れないほど多いので、いかにして自分の設計思想を自由なものにし、どのようにしてかつてない建設の構想を打ち出すか、というところでした」と何院長は言う。

 

 何院長と同僚たちは、170万字にのぼる首都鉄鋼移転のフィージビリティー・スタディーを国家発展・改革委員会に提出した。そして帰ってきた返事は、「これはこの数年で、もっとも科学的で先見性をもつ、実行可能な企画書である」というものであった。

 

2007年8月に撮影した曹妃甸の新しい首都鉄鋼の熱間圧延生産ラインの建設現場(写真=魯忠民)
 移転企画によれば、首都鉄鋼は、2008年の北京オリンピックの前までに、生産能力を半分に減らし、曹妃甸の第一期プロジェクトを完成させる。2010年までに、石景山地区の製錬、熱間圧延の生産をすべて停止し、曹妃甸の第2期プロジェクトを完成する。生産能力は970万トンになる、という。

 

 首都鉄鋼の移転は、簡単な引越しではない。現在保有している90%以上の設備が捨てられる。移転するのは、生産能力だけである。より正確的には、首都鉄鋼は曹妃甸に行き、世界的水準の鉄鋼企業を新たに建設し、新しい首都鉄鋼は220項目の世界的水準の技術を集め、中国の鉄鋼工業の競争力を高める、と言うべきである。

 

人民中国インターネット版

 

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