昔ながらの北京の小吃(軽食)は種類豊富で味もさまざま。街のいたるところで口にすることができる。
有名な小吃をすべて味わいたいなら、北海公園の北に位置する什刹海のほとりに新しくオープンした「九門小吃」へ足を伸ばすといい。以前は北京の小吃というと、前門付近に集中していた。しかし前門地区の再開発のため、老舗の小吃店は相次いで店を閉じ、ここに移転してきたのだ。
連日大人気のスポット
「九門小吃」は、宋慶齢故居の西側の孝友胡同にある。「小腸陳」は陳家の鹵煮火焼(豚モツと中国風焼きパンの煮こみ)、「年ガオ銭」は銭家の年ガオ(もち)、「ダイ酪魏」は魏家のダイ酪(やわらかいプリンのような牛乳で作ったデザート)、「豆腐脳白」は白家の豆腐脳(おぼろ豆腐)など、それぞれ家伝の小吃を提供。合わせて11の老舗小吃店が集まる。
「九門小吃」は北京の四合院(中庭を四棟の建物で囲む伝統的な住宅)を模して建造されたレストランで、テーブルや椅子、茶具はすべて古めかしく味わいがある。広いホールには、北京の伝統的な演芸会の趣が出るようにと、舞台も設けてある。
また、11の老舗小吃店のほか、国内外の観光客の需要を満たすため、糖葫芦(サンザシのアメがけ)や泥人形、しん粉細工の人形、切り紙細工などの民間工芸品の屋台も設けられている。
オープン以来、北京の小吃を味わいにわざわざここへやって来る人が後を絶たない。常連客によると、少なくとも3人以上で出かける必要がある。一人が席を取り、一人が列に並んで小吃を買い、一人が列に並んでお金を払う。そうしなければならないほど、大人気なのだ。
失われた庶民性
かつて、北京の小吃は、老舗店を除いて、ほとんどが道端の露店で売られていた。その点、新しく建てられた「九門小吃」は衛生的で清潔。しかし、値段もそれにともない高くなった。
もともと50グラムで2元5角(約40円)のダーリェン火焼(豚肉などの餡を小麦粉を練った皮で細長い形に巻いたもの)は、「九門小吃」では4元(約64円)。爆肚(牛や羊のモツをゆで、タレにつけて食べる料理)の老舗「爆肚馮」は、値段はそのままだが、量を200グラムから150グラムに減らした。
計算してみると、ここで一回食事をすれば、一人あたり70元(約1120円)近くかかる。一般庶民にとって、この値段はかなり高い。
北京テレビ局は先ごろ、庶民を対象に「九門小吃」に関する調査を行った。それによると、多くの人が「九門小吃」は北京の伝統的な小吃文化を壊したと考えている。
かつて、小吃の店はあちこちの胡同(横町)や路地に散在し、「小吃街」もたくさんあった。小吃を食べたいと思えばどこででも食べられ、非常に便利だった。
しかし今は、有名な小吃の店がすべて「九門小吃」に集中しているため、観光客にとっては便利だが、市の東部や南部に住む人々には不便きわまりない。小吃を食べたいと思ったら、北京市内を半分ほど通り抜けなければならないのだ。
北京の小吃はもともと、非常に庶民的な食べ物である。それは食材からもわかる。豆腐や豆乳、豚や牛、羊のモツなどは、当時の金持ちにとって食べるに値しないものだった。そこで、貧乏人たちはそれらを使って小吃を作った。味もよく、値段も安いため、車引きや作男でも買って食べることができた。
しかし、地価が高い什刹海地区に位置する「九門小吃」は、コストが大幅に上がったため、値段も高く設定している。このような高価格では、大半の人はたまにしか味わうことができない。毎日小吃を食べないと気がすまない北京っ子にとって、これは受け入れがたいことだ。北京の小吃の庶民性は失われてしまった。
「九門小吃」のオープン以降、昔ながらの北京の小吃は再び人気を集め、各メディアもわれ先にと報道した。これに庶民性が加われば、言うことはないのだが。
人民中国インターネット版
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