五台山での円仁(1)「竹林寺」

 

五台山の谷

これは南の方角、山西省台懐鎮の小さな町を見晴らす眺めである。谷の内の白塔は長くこの聖地のシンボルとなってきた。遠くに見えるのは南台である。円仁は日記に「樹木や珍しい花々はすべて他所とは異なる。ここは全く特別の地である」と書き留めている。私が初めてここに来たのは、観光ブーム以前の1986年であった。以来この地を4回訪れているが、この谷の遠景は少しも変わっていない。

円仁記念館に飾られている円仁像の写真と位牌

現在、円仁を記念する特別館が建てられ、読経机の上には円仁像の写真と位牌が飾ってある。1930年代に一日本人が寄進した円仁記念の石碑は、今も本堂の前に立っている。2002年にここを訪れた際、私たちのグループは経を唱え、供物を捧げ、寺の中庭に16本の苗木を植樹した。しかし、苗木への水遣りはあまり重視されなかったようだ。2カ月後、もう一度訪れたときには、生き残った苗木はわずか1本であった。

竹林寺の塔

唐代において、竹林寺は高位の学僧を擁していることで有名であった。円仁はここで種々の修行法を習得した。帰国後日本の寺で実践し、確立した「常行三昧」なども、ここで学んだものであった。修行僧は阿弥陀仏の名を唱えながら、90日間昼夜を問わず歩き続けるという修行である。

竹林寺再建工事

この寺に過去の偉大な栄光をよみがえらせようとする突貫工事が進んでいる。新しい本堂の大柱にするために、巨大な木材を切っている大工たちの仕事を見ていると、1000年前の同じ普請に立ち会っているような気がした。「竹林寺に六院あり。一寺全体で40人ばかりの僧がいる」と円仁は書いている。



 

 

阿南・ヴァージニア・史代 米国に生まれ、日本国籍取得。10年にわたって円仁の足跡を追跡調査、今日の中国において発見したものを写真に収録した。これらの経験を著書『「円仁日記」再探、唐代の足跡を辿る』(中国国際出版社、2007年)にまとめた。





 

人民中国インターネット版

 

 

   <<   1   2  3  


人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850