ヨーロッパ情趣あふれる青島

 

 

青島の砂浜をそぞろ歩くと、海の向こうから吹いて来る風を感じることができる。青々とした山々にまとわりつきながら、雲と霧が広がってゆく。大空の下にびっしりと建ち並ぶ、数千棟に及ぶヨーロッパ式建築が印象的だ。「緑の木、赤の瓦、青い山、青い海…まるで十九世紀のドイツの街のよう」。1927年に康有為が青島を形容したこの言葉が実にふさわしい光景であることに感嘆する人もいるかもしれない。

 

よその土地から来た人はみな、青島に足を踏み入れたとたん、この地の異国ムードに引きつけられる。「馬牙石」の敷きつめられた道が、人々を教会へと誘う。所により広くなったり狭くなったりする石段が、険しい山の斜面にかかっている。石段を登る人たちはみなひっそりと歩いているようだ。傍らの高い塀に、そよ風にそっと揺れるオウバイとアラセイトウの花がまばゆい。模様が磨り減って消えてしまった石段もあれば、柿や梨、海棠、胡桃の木が植えられた庭もある。  青島には同じ塀はふたつとないという秘密に、気づく人もいるかもしれない。高い塀、低い塀、そして木造、鉄製、眤山産の花崗岩造りの塀など、バラエティーに富んでいる。また、草花や錨、ドイツ語のレタリングの浮き彫りなどがはめこまれた塀もある。いずれもゲルマン風の雰囲気と異国情緒を醸し出し、歳月を重ねるに伴い、ますます美しさをましてゆく。

 

忘れがたいのは、赤い瓦屋根、そして屋根に高くそびえる塔と天窓であろう。木製でつくられた屋根の下端の緑色の骨組み、さまざまな彫刻の施されたドアや窓、柱礎の飾りなどとの組合わせは、バルザックの小説のエッチングの挿絵にそっくりである。ここに並んでいるヨーロッパ式建築は、ほとんどが19世紀から1930年代までに建てられたものである。当時の青島は、「万国建築博覧会」「東洋のミュンヘン」「東洋のスイス」及び「リトル・ハンブルク」と呼ばれていた。  まず何よりも観光客の目を奪うのは、青島の都市そのもののあでやかな姿、たおやかに美しく、山と海と街とが互いに抱き合うような風景であろう。800キロ以上に及ぶ海岸線に描き出された35の海湾と70の島が、波打つ黄海のロマンとやさしさを感じさせる。2008年北京オリンピックのヨットレース開催地である青島は、早くから「中国のヨットの都」として広く名を馳せてきた。

 

青島の山々は、青々とした豊かな緑をたたえている。青島は海に囲まれた街であり、街の中に、山の中に、海の中に街がある。道は長い触角が四方八方へと空の果てまで続くかのように伸びている。青島を訪れるヨーロッパからの観光客は、懐かしさにも似たような思いを抱くかもしれない。それは青島が20世紀の初頭へ戻ることのできるタイムトンネルであるからだ。

 

地元の人は誇らしげに語る。「幾世代にもわたる人々の努力によって、100年前に植民地であったころの様相はもはや面目を一新しました。時代感と歴史感が調和して存在することで、海港都市の青春の息づかいをよりきらめかせているのです」  (王鐸=文  張岩=写真)

 

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