正山小種を訪ねる

 

自然の甘味と香りに酔う

 

現在の正山小種について、工場を見学し、紅茶を試飲することにしました。今は自然保護区の中ですから、松の木を伐採することはできません。松の木は外から購入しているとのことでした。いまだ余熱の残っている工場の内部は、松脂の匂いが充満しています。中二階を含む三層の熏焙(燻して香りをうつす)室は、上に行くほど軽やかで良い香りになることがわかります。

 

試飲室に戻ってランクごとに試飲することにしました。最高級の「銀駿眉」、正山小種の特級・1級、「ラプサンスーチョン」として外国に輸出するものの順です。良いものほどまろやかで松脂の強い香りはありません。日本で飲んだ正山小種とはまるで違います。お茶として素晴らしい味と香りなのです。

 

「美味しい紅茶ですね。自然の甘味と香りが調和してまろやかです。これがあのラプサンスーチョンですか?」

 

「これが本物の正山小種です。ラプサンスーチョンとして輸出するのはこっちですよ」

 

それでは、と試飲します。

 

「やっぱりそうですか。私はこのラプサンスーチョンは飲めません。松脂の匂いがくどくて、茶の素晴らしさが死んでいますね」

 

「そうでしょう。ラプサンスーチョンは熏焙を繰り返すので松脂の匂いが強すぎるんです。私たちはラプサンスーチョンと正山小種は同じとは思っていません。正山小種の銀駿眉こそ最高の紅茶です」

 

最近は、中国の経済発展によって良いもののほうが国内で売れるのだそうで、紅茶も進化しているとのことです。帰りの道でも、武夷山に着くまで、あの素晴らしい銀駿眉の余韻に酔いながら景色を楽しむことができました。  (棚橋篁峰)

 

人民中国インターネット版

 

 
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