中日環境協力の幕開け

 

胡錦濤主席と福田康夫首相の両首脳は7日、「戦略的互恵関係の包括的推進に関する中日共同声明」に署名した。この声明には「環境やエネルギーの分野における協力が私たちの子孫と国際社会に対する責務であるとの認識に基づき、特にこの分野で重点的に協力していく」とうたわた。これにより、両国の環境保護協力は正式な幕開けとなった。(文:劉軍紅・中国現代国際関係研究院日本所研究員)

 

時代は変化し、世界も変化している。新世紀に入り、人類の生産方式や生活スタイルは歴史的な転換期を迎えている。100年余りの工業発展の歴史は人類に光明・効率・便利さをもたらすと同時に地球に分厚い温暖化のガスのベールをかぶせた。地球温暖化は人類の生存空間に脅威を与えている。

 

人類の生存権を勝ち取るため、16年前の1992年、「気候変動に関する国連枠組条約(UNFCCC)」が締結、1997年には149カ国・地域により「京都議定書」が採択され、工業化の利益を優先的に享受してきた先進諸国に二酸化炭素の排出量削減の目標値を規定した。この国際的な共通認識に基づき、2008年から2010年の期間、日本・英国・ドイツ・フランスなど経済先進国は先駆を切って同時に「第一約束期間」に入り、「低炭素社会」づくりの道を歩み始めた。

 

実際には2007年はすでに「気候元年」といわれ、この年の末に第13回気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)が開かれ、「ポスト京都議定書」の枠組みが定められた。今では「低炭素社会」「気候秩序」「環境外交」が時代のキーワードになっている。一方、アジア地域最大の発展途上国と先進国として中国と日本は歴史的変遷の責任とチャンスを同時に迎えた。

 

過去2回のオイルショックを経て日本は産業構造の転換に成功し、省エネや環境保護の技術面で先進国としての地位を確立した。日本の経験と技術はアジアおよび世界の低炭素社会づくりにおける財産であるとともに、中日両国を時代の潮流に乗せ戦略的互恵関係を拡大するための現実的資源を提供することは間違いない。

 

中国側からすると、環境の徹底改善や、産業構造の根本的な転換は経済を持続的に発展できるかどうかに関わる大問題であり、さらに環境保護と経済発展の両立した構造をいかに構築するかが科学的発展を実現する上で重要なカギを握っている。戦略的協力の強化により、日本の先進技術や経験を取り入れ、中国の環境保護市場を開発し、共同で未来の新型産業を構築し、アジア地域の環境規則と基準を整備することはアジアの調和や共同発展につながり、世界の繁栄と安定を維持する新たなスタート地点となる。

 

今回の両国首脳会談で環境保護協力が幕を開け、戦略的互恵関係に真の内容が盛り込まれた。報道によると、09年に事業総額2~3億ドルに上る「二酸化炭素(CO2)の地中貯留技術」の協力事業が中国でスタートするという。日本側がこの分野の最先端技術を提供するのは今回が初めて。火力発電所で排出した二酸化炭素は「回収、液化」され、黒竜江省の大慶油田に注入される。日本の経済産業省によると、この技術は日本で最初に使用されたもので、成功すれば将来、火力発電所のCO2排出量が1億5千万トン削減できるとされている。油田に注入したCO2は希釈剤の役割を果たし、原油の稠密度を下げ、年間平均で約150~200万トンの増産が見込める。今回の技術協力では政府を筆頭に企業が続くという官民共同運営の全く新しい方式が採られた。日本側はプラントメーカーの日揮、トヨタ自動車、中国側は中国石油天然気集団公司(中石油)、中国華電集団公司などが共同参加する。

 

中国の火力発電は電力構造全体の63%を占め、火力発電所のCO2排出量の削減は中国の省エネ・排ガス削減の重要な課題となっている。日本の経済産業省の予測によると、2030年にアジア地域の環境保護市場は2~3兆ドルの規模に達する見通しだ。官民参加型の環境保護協力は非常に将来性があり、アジアの環境協力における手本として今後期待がかかる。

 

「人民網日本語版」 2008年5月9日

 

 

 
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