あなた、あきらめないで、頑張って

 

「私はもうだめだ。君は早くここを離れろ!子供を頼む。二人で頑張って生きてくれ」「あなた、あきらめないで。すぐに救助の人がきてくれるから!」都江堰市に広がる廃墟の中、朱芙蓉さんは瓦礫の上に這いつくばって、涙まみれに必死に呼びかけた。

 

地震が起きた後、幸いにも難をのがれた朱さんは、家にいるはずの夫の譚剛義さんのことが気になって、八キロから離れた自宅まで徒歩で向かった。午後五時過ぎ、やっとのことで朱さんが家に着くと、住まいのアパートの建物は崩壊し、瓦礫の山となっていた。彼女は慌てて瓦礫の山の上に登り、泣きながら大きな声で叫んだ。「あなた!どこにいるの?」「私はここだ!」かすかな返事が足元の瓦礫の中から聞こえてきた。夫の声だった。朱さんは人が変わったように、瓦礫の山を掘り起こしはじめた。しかし、何層にも重なったコンクリートの壁に阻まれ、自分ひとりの力ではどうにもならず、ただすすり泣くだけだった。

 

「石がぶつかって足をケガをしてしまった。長くは持たないだろう。ここは危険だ。君は早くここを離れろ。頑張って生きてくれ」夫の言葉を聞いて、朱さんは不吉な予感がした。「あなた、頑張ってね。私もうちの子もあなたを愛しているわ。家族みんな一緒よ……」

 

夜になると、余震で妻がケガをするようなことがあってはいけないと心配した譚さんは、「芙蓉、安心してくれ。私は頑張るから」と、離れたがらない妻に約束し、避難を促した。

 

翌朝、朱さんは再び夫が閉じ込められている場所に足を運んだ。「あなた、聞こえる?私はここにいるわ」しばらく経ってからようやく、かすかな声が聞こえた。「芙蓉、生きているよ」朱さんはほっとして夫を励ました。「もう少し頑張ってね。すぐに救助の人が来てくれるから」

 

午前八時過ぎ、通りかかった武装警察部隊の隊員を載せたトラックに、朱さんは助けを求めた。このとき、廃墟の両側の五メートルほど離れたところに二棟の危険な建物があり、余震でぐらぐらと揺れ、今にも倒れそうであった。閉じ込められている人たちを傷つけないように、救助隊員たちは機械を使わず手で掘ってゆく。石の塊を取り除いた後、小さなハンマーで大きなコンクリートの壁を砕いた。一時間あまりたって、譚さんと救助隊員の間は壁一枚隔てるだけとなったとき、再び余震が襲った。「みなさん、離れてください。この下はがらんどうなんです。あまりに危険です」建築業に従事している譚さんは、現状をよく把握していた。もしこの瞬間に倒壊が起こったら、救助隊員たちも中に落ちてしまう。幸い余震はわずか数秒続いただけでおさまり、引き続き救助作業が進めたられた。午前十時半、譚さんは武装警察の隊員たちによって二十時間ぶりに瓦礫の中から救出された。

 

「本当にありがとうございます」朱さんは鋭利な瓦礫の破片にもかまわず、その場で救助隊員たちに跪いた。その場にいた百名近い人々は、愛が生んだこの奇跡に歓声と拍手を送った。

 

 

人民中国インターネット版 2008年5月20日

 

 

 
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