被災地が故郷の重罪者が帰省 四川

 

地震被災地に実家がある重罪者にとって、帰省して家族に再会するのは最大の願いだ。しかしながら重罪者という特殊事情により、彼らはその想いをそっと心の奥にしまっておくほかはない。四川省監獄(刑務所)管理局はこのほど、同省東部の刑務所の重罪者3人について、特例措置として帰省・家族への再会を許可した。看守の警備の下、服役囚3人は服役後初めて出獄、家族への再会を果たした。「華西都市報」が伝えた。

 

嬉しさのあまり眠れなかった

 

6月13日午前5時30分、重々しい音と共に、南充川中刑務所2号門がゆっくりと開けられた。高く大きな鉄門の裏手には、川中刑務所を出獄する服役囚鄧さん、王さん、余さんの3人が待っていた。3人は今回初めてその高い鉄門をくぐり、四川大地震で幸いにも生存していた家族への再会のための帰省を許されたのだ。

 

14年前、18歳になったばかりの鄧さんは、殺人罪のため死刑判決を受けた。今回の地震で、鄧さんの実家は倒壊、70歳を超える父親が負傷した。刑務所内のテレビで故郷の被災状況を目にする度に、鄧さんは何とも言えない息苦しさにさいなまれ、故郷へ帰り両親に一目会いたい気持ちに駆られた。12日午後、鄧さんは看守から帰省許可の知らせを聞き、その夜は一睡もできなかったという。

 

4回看守に土下座した父親

 

鄧さんの実家は江油の二郎鎮にある。江油市司法局の呉勇局長は鄧さんが帰路を想い出すことができるかを心配し、鄧さんを乗せた車を自ら運転し、鄧さんのお姉さんに高速道路出口で待っていてもらうように手配した。

 

到着した鄧さんを見るなり、母親が駆け付け鄧某を抱きかかえ、大きく泣き崩れた。鄧さんはまるで子供に返ったかのように母親の肩に手を回し、やはり号泣した。「僕は何にもお父さんお母さんに恩返しができなかった。苦労を掛けてごめんさない!」。数分後、鄧さんは母親の懐から離れ、母親の頬をつたう涙をぬぐいこう言った。自分は真摯に生まれ変わった。刑務所は何度も減刑を図ってくれた。来年にはうちに帰ることができる、と。

 

ちょうどその時、父親がぎこちない足取りで走り寄ってきた。「息子よ、おまえはもし生まれ変わることができなかったら、もう二度とおまえの顔を見ることはない!」。父親は鄧さんの後ろで見守っていた看守責任者の范仲根の姿に気付くなり、范の手を握りしめ、突然地面に座り込み范の前で大泣きした。「私たち一家の団らんのためにどれだけお骨折り下さったことか。もう息子には会えないと思っていました!」。

 

鄧さんの父親は今回の地震で左肩を負傷、治療を経て今ではほぼ回復に至っている。范看守は刑務所が鄧さんのために特別に準備した被災見舞金5百元を差し出したが、父親は受け取るすべもなかった。年老いた父親は、こうやって親子再会できただけでも幸せだ、これ以上政府にお手数をお掛けすることはできませんと述べた。現場に居合わせた他の警護者の説得の末、父親は結局見舞金を受け取った。一行が鄧家のテント住宅内に入ると、鄧さんの父親はさらに3回ひざまずき、監獄管理局への感謝の意を表した。

 

「おまえが家を新築してくれるのを待ってるよ」

 

王さんの実家は安県の古い中心街に位置している。午後2時頃、警護の車が王さんの実家前に到着すると、一面が廃墟と化していた。王さんの家族は県内の臨時避難所へ避難していた。

 

現地司法当局の手配により、王さんは避難所テント前で家族との再会を果たした。王さんの2人の姉は弟を見るなり、急いで駆け寄り、弟を抱きしめ泣き叫んだ。「弟よ、家は倒れたけど建て直せるわ。もう絶対に罪を犯さないで!」。王さんの姉の夫、余某も駆け寄り、王さんの手を握りしめ、涙を流してこう言った。「弟よ、お父さんは亡くなった。おまえはしっかり改心しなさい。僕たちはおまえが戻り、新居を建ててくれるのを待ってるよ!」

 

再会終了を前に、王さんの希望で一家全員で記念撮影をした。「カシャ!」とシャッターの音と共に、一家全員の幸福な笑顔が戻った。

 

出獄後にはお母さんに安心して晩年を迎えてもらいたい

 

余さんの実家は北川にある。今回の地震で、既に70歳を過ぎた母親は倒壊した家屋の下敷きとなり、重慶市の病院で手当てを受けた。また今年20歳になる姪は亡くなった。「家族がけがをして死んだ。なんてことだ!」。再会した家族は一斉に泣き叫んだ。「こんな事で悲しんでいてどうするの。もっと大変な目に遭った人たちはたくさんいる!」余某は涙をぬぐいそう言った。余某は家族の手を取り、その涙をぬぐい去り、一家を励ました。

 

数分後、随行した看守は重慶の他の看守らと連絡を取り、余さんに対し電話で母親の厳某と話すように促した。「息子よ、私の話をよく聞きなさい。お母さんはおまえが一日も早く帰ってくるのを待っているよ!」。重慶の病院に入院中の母親はこのように息子に告げた。自分は既に一命を取り留めた。安心して改心しなさいと。余さんは唇を噛みしめ、母親の励ましに応えた。目からは大粒の涙がしたたり落ちた。家族との再会が終わり、余さんは警護の車に戻る際、涙をこらえることができず、地面に伏し大声で泣いた。「お母さん、待っていてください。刑務所から出たら、必ず幸せな晩年を過ごしてもらえるよう頑張ります!」。

 

四川省監獄管理局によると、服役中の態度良好、実家の被災状況が深刻な受刑者については、今後も一時帰省を認める方針という。

 

「人民網日本語版」 2008年6月18日

 

 

 
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