アジアとアフリカの連携強まる

 

江原規由 1950年生まれ。1975年、東京外国語大学卒業、日本貿易振興会(ジェトロ)に入る。香港大学研修、日中経済協会、ジェトロ・バンコクセンター駐在などを経て、1993年、ジェトロ大連事務所を設立、初代所長に就任。1998年、大連市名誉市民を授与される。ジェトロ海外調査部中国・北アジアチームリーダー。2001年11月から、ジェトロ北京センター所長。

2008年4月、国際化が進む中国経済に大きな出来事が二つありました。7日に、中国とニュージーランドがFTA(自由貿易協定)に調印したこと。10日に、人民元の対米ドルレートが7元の大台を超えたことです。

 

ニュージーランドとのFTAは、中国にとって初めての先進国との調印であり、地元紙(注1)は「新しい親友(中国)の誕生」と報じました。ちなみに中国は発展途上国とは、30余カ国・地域とFTAを締結済みです。

 

1ドル6元台への突入については、2005年7月21日の人民元の対ドルレート調整時から15.99%切り上がったわけですが、日本のメディア(注2)は、「『世界の工場』変わるか」などと報じています。このことが関係諸国・地域経済や世界経済にどんな影響を及ぼすかは簡単には論じられませんが、いずれもチャイナパワーが発揮されていることを能弁に物語る出来事であったといえます。

 

意識されるチャイナパワー

 

1949年の新中国建国後、世界からチャイナパワーが意識されたのは、1955年のインドネシアのバンドンで開催されたアジア・アフリカ会議(AA会議)ではなかったでしょうか。この会議ではアジアとアフリカが一致協力して世界平和にあたろうとする「平和十原則」が採択されました。その立役者は中国の周恩来総理、そしてインドのネルー首相らでした。最近、この会議を髣髴とさせるような動きが中国、インド、日本を舞台に展開されています。

 

4月初旬、インドで初の「インド─アフリカフォーラム・サミット」が開催されました。目的はインドとアフリカの「南南協力」の強化・推進にあったわけですが、チャイナパワーが大いに意識されていたようです。

 

経済発展の著しいインドにとって、アフリカにおける石油・鉱物資源など利権確保は大きな意義があります。中国は、2006年11月に「第3回中国・アフリカ協力フォーラム」を開催しており、資源関連はもとより、アフリカのザンビアに「ザンビア・中国経済貿易合作区」(注3)を建設するなど、アフリカ諸国に対する経済交流面でのアプローチを強化しています。インドはというと、アフリカいる約280万人の印僑などとの関係を生かし、インド企業のアフリカ進出、企業買収などが加速していますが、資源確保、ビジネス面で中国に遅れをとりたくないのが本音でしょう。

 

5月末には、今度は日本で「第4回アフリカ開発会議」(注4)が開催されます。これには中国は参加の意向ですが、インドは不参加となっています。中印日の三国がアフリカに対するアプローチで競合しつつも、ともに成長する枠組みづくりを模索しているわけです。

 

元高をチャイナパワーに

 

「中国・アフリカ協力フォーラム北京サミット」が2006年11月5日、人民大会堂で開催された

 

FTAとの関係ですが、アジアにはFTAの枠組みに関し、「東南アジア諸国連合(ASEAN)+3(日中韓)」とするか、「ASEAN+6(日中韓豪印ニュージーランド)とするかの議論があります。中国とニュージーランドとのFTA締結は、より広いアジアFTAの誕生に向けた一歩として、大きな意義があります。アジア・大洋州に広域FTAが誕生すれば、長期的には、アジアとアフリカとのより広域なAA─FTA締結も十分ありえます。

 

人民元高については、中国の経済・社会の発展にプラス・マイナス両面の影響がありますが、中国企業の対外展開(アフリカでの合作建設区など)など対外経済・ビジネス関係の発展や目下、中国が進める輸入促進には、積極的要因になります。中国が輸入を増やせばアジア経済の安定につながり、将来的には、アジア共通通貨の誕生に大きく貢献するのではないでしょうか。

 

昨今、アフリカへの世界の関心が急速に高まってきています。バンドンのAA会議は、アジアとアフリカの存在を大きく世界にアピールし、世界史に大きな足跡を残しました。半世紀前のAA会議と同じく、中国には、アジアとアフリカがともに飛躍し、世界経済が裨益する上で、チャイナパワーを大いに発揮してほしいものです。

 

注1 『ヘラルド』紙  4月8日付け

注2 『朝日新聞』  4月11日付け

注3 合作区については、本誌2008年2月号を参照

注4 5年に1度で、 今回は横浜で開催

 

人民中国インターネット版

 

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850