宋時代(960~1279年)の大文豪、蘇東坡、秦少游と謝瑞卿は、ともに傑出した文人で「文人三才」と称されている。経典と歴史に精通し、ぬきんでた文才を持つ3人は、互いに重んじあい、極めて親密な間柄でもあった。
神宗年間(1068~1085年)のある年、全く雨が降らなかった。皇帝は、自ら雨乞いをするために、祭壇を設け、蘇東坡に祭文を作るように命じた。
友の謝瑞卿は、もともと科挙の試験を受けるために都に行くつもりであったが、祭事が行われることを知り、皇帝の顔を一目拝みたくなった。
蘇東坡は、謝瑞卿の思いをかなえるべく、彼に僧衣を着せ、祭壇にお香を供えさせ、皇帝が現れると、お茶を献上させた。
皇帝は、謝瑞卿のまれに見る清い顔立ちを見て、彼にいくつかの質問をした。それに対するよどみのない応答に皇帝はたいそう喜び、すぐさま謝瑞卿に仏印という法名を与え、皇帝の面前で剃髪式が行われた。それを見た蘇東坡は、皇帝の前に謝瑞卿を出したことを後悔した。
ある日、蘇東坡は秦少游を誘い、美女を呼び寄せた。そして仏印を酔わせ、女性を近づけて、俗世に引き戻そうとしたが、図らずも仏印は、すでに無常を悟っていた。俗念には動かされず、心は一途に仏に向いていたのだった。(写真・文 魯忠民)
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