経済改革の重い一筆―中国為替制度改革の3年間

 

人民元レート改革が中国の経済、民生にもたらす変化

レート改革がより深く推進されると、中国経済の各方面に深甚な影響をもたらすようになった。

3年間に、人民元対ドルレートの上昇ぶりは全体として「小走り」だったが、累計上昇幅は21%と相当な数字に達した。

マクロ経済局面からみると、人民元レート形成メカニズム改革は経済構造の調整、産業の最適化・グレードアップ、経済成長モデルの転換を促し、金融機関の自主的な価格設定やリスク管理の能力を育成し、マクロ経済運営の柔軟性を高めた。

転換には痛みが伴う。人民元上昇は輸出収入の減少、利益や競争力の低下といったリスクを意味し、輸出企業に一連の課題をもたらした。一部の輸出企業は受注数や利益が減少した。また一部のコスト競争力や技術含有量が低く、汚染度が高く、エネルギー消費量の大きい中小企業は、競争資本を徐々に失い、市場から閉め出される形になった。

昨年以来、珠江デルタ地域などの沿海地域の貿易企業、特に繊維・アパレル分野の労働集約型企業の倒産や移転といった現象が相次いだ。人民元上昇要因が、税率引き上げ、人件費の増大、産業構造のグレードアップなどとともに、背後にある重要な要因と考えられている。

人民元レートの弾力性が高まるにつれて、企業も金融リスクのヘッジツールを常に求めるようになった。多くの企業は資金回収・決算方式の調整、決算通貨の変更、長期注文の分散、レート変動条項を契約に組み込むといった方法を取り、国際市場のニーズ減少やレートリスクに主体的に対処しようとしている。

人民元レート改革が国民生活に与えた影響も大きい。改革当初、ほとんどの人はレートと自分の生活には何の関係もないと考えていたが、3年後の今日、レートは熱い議論が交わされる注目の話題へと徐々に変化した。

現在のレートへの関心をみると、ある側面からますます国際化する中国人の生活ぶりを映し出していることがわかる。輸入消費財を買い、海外留学をし、海外旅行をし、といったことはすべてレートと関連がある。

人々の生活への影響をみると、人民元レートが適切に引き上げ調整されると、輸入消費財の価格が下がり、国内居住者の実質的な消費力および消費レベルが高まるとともに、海外旅行や海外留学にかかる費用が以前よりも安くなる。全体としてみると、人民元上昇は国内の消費者の生活水準を高めることになる。

人民元の対香港ドル価格も上昇し、これにより大陸部居住者の香港でのショッピングコストがより低下し、実質的な恩恵がもたらされるようになった。こうして大陸部居住者の香港ショッピングブームと香港居住者の人民元預金ブームが促進された。

以前は個人の外貨購入は厳しく制限されていた。2005年8月、レート改革のスタートからわずか半月ほどで、国は国内居住者の個人海外旅行に際しての外貨購入限度額の引き上げを発表。その後、個人の外貨購入政策はたびたび調整され、現在では年間の購入限度額が5万ドルまで引き上げられた。購入手続きも徐々に簡素化している。

国家観光局のデータによると、2007年の中国国民の出国者数はのべ4095万4千人で、2005年に比べて32%増加した。うち私的な理由での出国者数が増加を続けており、ここから海外旅行が国民の生活に入ってきたこと、レート改革が多くの中国人の生活をますます便利にしていることがうかがえる。

今後の改革は「任重くして道遠し」

年初以来、米国の低所得者向け(サブプライム)住宅ローンの焦げ付き問題の影響や主要国の通貨政策などの影響を受けて、世界経済の伸びが鈍化し、国際金融市場が変動し、主要通貨のレートや国際エネルギー・穀物価格の情勢が、国際流動資本の動向や規模に大きな影響を与えたということは明らかだ。

複雑なグローバル経済の変動と過酷な挑戦は、人民元レート改革、特に人民元の上昇を注目すべきレベルにまで押し上げてもいる。

現在の国際投機資本の流入加速により、マクロ調整が多くの新たな挑戦にさらされるようになったとの見方がある。

人民元上昇が繊維製品を代表とする一部の輸出産業に厳しい挑戦をもたらしており、経済の大きな落ち込みを阻止する必要があるとの見方もある。

また、人民元レートの反動圧力を警戒し、金融リスクを予防する必要があるとの見方もある。

経済学者の左小蕾氏は多くの経済学者と同様、「現在、中国の貿易黒字の増加ペースは下降気味で、このことはマクロ調整が目標に向かって発展しており、国際収支の基本的バランスを促進するのにも有利であることを示している。米ドル情勢の変化は流動資本の転換リスクをもたらすが、適切に応対すれば潜在的リスクを解消することができる。中国は国際ホットマネーの衝撃に対応できる能力を完全に備えている」との見方を示す。注目すべきは、年初以来、中国はレート改革の面で関連政策のさらなる改善を進めており、人民元レートの弾力性が一層高まり、双方向の変動の特徴がより明瞭になってきたということだ。

外貨管理部門も数年来、短期的投資を行う国際流動資本の問題を非常に重視しており、国境を越えた資本の流入・流出に対する監督管理の強化、国際収支状況の改善、経済・金融の安全に向けたニーズの確保、経済・金融の安定的発展の促進などの必要性を強調している。

 

「チャイナネット」2008年7月21日

 

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