(1)ポスト五輪効果は小
「中国証券報」はこのほど、北京五輪後の経済効果を論じた署名論文を掲載した。主な内容は次の通り。
今年初めにある市場機関が「五輪は中国経済にどのような影響を及ぼすか」と題する研究報告を発表し、1956~2006年に開かれた12回の夏季五輪の開催国の経済状況について分析を加えた。それによると、開催国の国内総生産(GDP)は五輪開催年には成長するが(92年のスペイン・バルセロナ、00年のオーストラリア・シドニー、04年のギリシャ・アテネを除く)、開催翌年の成長率は前年を下回る(72年のドイツ・ミュンヘン、96年の米国・アトランタを除く)。開催国の経済成長は五輪後に鈍化するケースが多く、中国もその例に漏れないことが予想される。また同報告は、中国の巨大な経済規模、地域間の多様性といった特殊要因を踏まえると、中国が受ける影響は
平均レベルを大きく下回り、五輪は今後の経済情勢に副次的な役割を果たすだけで、決定的な役割を果たすことはないとの見方を示す。
同報告の結論はポスト五輪効果に対する懸念を引き起こしている。だが多くの討論が繰り広げられているが、最終的な見方は「五輪後の中国経済は衰退に向かわない」ということで一致しており、その論拠も「中国の巨大な経済規模に対して、五輪の中国経済に対する牽引作用は限定的だからだ」ということで一致している。
(2)「経済総量説」に限界
五輪後の経済を経済規模で考える「経済総量説」は、実際には論理に矛盾がある。たとえば五輪開催国の経済規模の大きさを考えると、1996年のアトランタ五輪、84年のロサンゼルス五輪、64年の東京五輪、72年のミュンヘン五輪後、米国、日本、ドイツの経済は開催年より減速することはあり得ないはずだが、実際にはそうではなかった。特に解釈が難しいのは80年代後半に世界最大の経済体だった米国で、2度の五輪開催後の経済成長の状況が大きく異なり、ロス五輪後には減速し、アトランタ五輪後には加速した。また相当の経済規模を擁する日本とドイツだが、五輪開催後の状況はまったく異なる。「経済総量説」による解釈は論理に多くの矛盾があることから、他のより重要な要因が作用していることが考えられる。
実際、主催国の経済規模の大小であれ、その他の視点からの観察であれ、これまでのポスト五輪効果の議論では、五輪そのものが経済に与える影響が中心的な話題であり、世界全体の経済環境に対する視点が欠けていた。このため、五輪後の経済成長の動きの原因を、五輪による推進作用の消失だけに求めるのは一種の誤りだといえる。
(3)世界経済の影響大
グローバル経済の一体化が進んでいることは争えない事実だ。各国経済に大きな影響を与えているという点でも、おおかたの見方は一致する。世界銀行提供の不変価格で算定した世界の一人当たり平均国内総生産(GDP)の成長率データをもとに、五輪の開催年と開催翌年の世界の経済成長を考えると、世界の経済成長の様子と五輪開催国の開催年・開催翌年の経済成長率の動きとが、経済規模よりもはるかにぴたりと一致することがわかる。
過去11回の夏季五輪のうち、開催翌年に経済成長が加速した大会は2回で、2回とも開催翌年の世界の経済成長率が前年の成長率を上回っていた。
一方、経済成長が鈍化した9回は、開催翌年の世界の経済成長率が前年の成長率を下回っていた。ここからグローバル経済情勢が五輪後の経済状況に最も大きな影響を与える要因だということがわかる。よって、中国はより広いマクロ的視野に立って、世界の経済成長の動きが中国に与える影響を仔細に検討し、これに基づいて対応マニュアルを制定する必要がある。
「人民網日本語版」より2008年8月25日
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