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時代と彷徨う「80後」世代

 

1984年静岡県うまれ。現在、日本国費留学生として、北京大学国際関係学院に在籍。学業の傍ら、中国のメディアで、コラムニスト、コメンテーターを務める。『七日談~民間からの日中対話録』(共著、新華出版社)
「巴金や(謝)冰心の文章やスタイルは下手。読むに値しない」6月15日の夜、ユニークな芸能番組で人気を誇る湖南テレビのトークショー『零点鋒雲』で、いま中国でもっとも注目を集める若者の1人が、往年の著名作家たちを糾弾した。彼の名は韓寒。中国人は彼のことを「80後作家」と呼ぶ。

「80後」と聞いて、何を想起するだろうか。狭義では1980~89年、広義では80年代後に生まれた人間のことを指す。2002年ころからメディアに登場し始めたこの言葉、今では流行語と化している。世間はこの世代を「崩れ落ちた」「責任感が無い」「自分勝手」「反逆的」「愚かな」などと揶揄する。私も「80後」に属するだけに、他人事とは思えない。

日本市場にも事業を拡大し、インターネット検索サービスを提供する「百度」で「80後」と入力すると、3730万件出てきた。「80後論壇」「80後現象」「80後創業」など、あらゆる言い回しが目に留まる。それらをテーマにしたウェブサイトも多い。80年代以後に生まれた世代の一挙一動に、社会の目が集まっているということだ。それは、単なる文化的、社会的現象を超えて、ビジネスチャンス、さらには政治的インパクトにもなり得る。

「改革・開放」(1978年)後、「1人っ子政策」の申し子として生まれてきた彼らは、「文革」を経験していない。1989年の北京の政治的風波の後に本格的な教育を受けている。彼らが生きる社会を俯瞰してみると、中国の「特色」のある社会主義でありながら、市場経済が浸透し、人々の価値観や利益は日々多様化している。グローバル化の波が押し寄せ、競争社会の趨勢は激化していく。「私たちは祖国の変革とあらゆる外来文化のショックを直接被った転換の世代よ」。某メディアで働く同世代の友人は言う。

私の目に映る「80後」の特徴をざっくばらんに挙げてみたい。独立心、生命力に欠ける。幼稚。責任感で動こうとしない。公共意識が薄い。政治に興味を持たない。個人主義、功利主義、実用主義。自分勝手だが、大衆意識は濃い。リスクをとらない。理性、冷静さに欠ける。その一方で、イデオロギーにとらわれない。観念ではなく、プラグマティズムで行動する。自由な発想をする。向上心、創造力がある。国際的視野に富む。個性を追求するなどの一面も持ち合わせるようだ。

大人は往々にして、「80後」という1つの概念で若者を括りつけ、批判する。しかし、彼らの持つ特性は昨今の社会的背景に由来するというのが私の見方である。時代が彼らをそうさせているのだ。私が付き合ってきた「80後」のほとんどが、将来に不安を抱いている。先が見えないでいる。自由気ままに生きているようで、実際は社会、学校、家庭など各方面からの「圧力」に日々耐えている。就職難で、失業率も高い状況下で、周りのライバルに遅れまいと、必死にもがいている。自分と周り、個性と共存、今と未来、自由と束縛、快楽と緊張、祖国と世界。その「狭間」で戦っているのだ。孤独な世代なのかもしれない。

2008年5月19日、北京・天安門広場に集った若者たちは、四川汶川大地震の犠牲者に黙祷したあと、「中国がんばれ!」「汶川がんばれ!」と叫んだ

世間を騒がせる「80後」だが、今や社会全体として軽視できないプレーヤーになっている。その代表例が、ネット上での「言論活動」だ。現在、中国ではネット使用者が2億人以上いるが、私の感覚では、その半分近くが「80後」である。彼らはウェブサイトにおける掲示板、ブログなどで、生活の感想や社会問題への見解などを「語り合う」。ネット空間は自由で、日々の不満やストレスを発散させるプラットフォームにもなっている。匿名で書けば責任を負う必要もないと考え、過激な発言も控えない。

チベット事件、聖火リレー、四川大地震など一連の出来事を通じて、世論をリードしていたのは紛れもなく「80後」だった。カルフールボイコット運動や反CNNキャンペーンの先頭に立った。政府は冷静になるように呼びかけたが、若者たちの「苛立ち」はなかなか収まらなかった。政府が「80後」の「暴走」に困惑していたのは間違いない。四川で大地震が発生すると、北京大学のエリートも含めて、彼らはこれまでになく政府の取り組みを支持した。五輪を前に、欧米諸国や天災と戦う政府の姿が眩しかったのだろうか。

◇「80後」を奮い立たせているのは愛国心なのだろうか。それとも、いわゆる「ナショナリズム」なのか。ただ、彼らの言動は、案外「気まぐれ」な部分も大きい。どの場面で、どのように一致団結するのかも読めない。漠然と「愛国心」あるいは「ナショナリズム」で括ってしまうのは理性的ではない気がする。いずれにせよ、時代とともに彷徨う「80後」から、目は離せない。

 

人民中国インターネット版 2008年8月31日

 

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