北京五輪の開会式に見る「中国エレメント」

 

三、壮大な絵巻 空に昇る夢

中国の絵巻

巨大な絵巻が空に昇ったあと、ゆっくりと広げられ、中国のストーリーが一つ一つ現れる。ダンサーたちがしなやかで美しい舞姿で筆に取って代わり、白い画面に墨跡を残す。肉体の美しさと芸術の美しさが完ぺきに結び付き、「天人合一」の真意を明かす。作品が人格化され、人間本位の理念が技法に具現されて、この水墨画が詩意に溢れ、情感豊かで、形式を重んじる傑出した芸術作品として完成する。これも歴史が後代に残した珍しい贈り物ではないだろうか。

雄壮で美しい絵巻き

敦煌壁画の飛天女

敦煌壁画の女神は、中国人が再び描いた詩趣に富む想像だ。それまでは「飛天」と言えば、想像力は、五色の石を錬って欠けた天柱を補った女媧、小鳥に変身し溺死の恨みを晴らすために海を埋めようとした精衛までさかのぼった。今回、飛天女は美しい舞踏で歴史に見事な絵画作品を残した。

飛天女

四、漢字の道を探る 

動と静が心のままに古代文字文字をつくった者が本当に蒼頡であれば、彼は魂と思想を持つ芸術家に違いない。さもなければ、古代文字がどうしてこれほど奥深くて美しいのか。それによって哲学者は道理を見抜き、芸術家は美しさを発見し、考証学者は歴史の史料を見抜き、歴史学者は社会の変革を予見する。古代文字は日常生活からは消えてしまったが、その大きな現実的意義は、埋もれさせるべきではない。疑いなく、文字をつくること自体が智慧を必要とする哲学であり芸術だ。



古代の文字

太極拳動なのか、静なのか。中国人は陰陽五行学説で一部の生活問題と哲学問題を解決してきた。その陰陽学説は武術にも貫かれている。激しい格闘では、小さな力で大きな力に抵抗できるという柔で剛を制すことがそれだ。戦った結果、最終的には生理的本能へと回帰する。つまり、静かで寂しい境地の中で生命の原動力を動かすのだ。老子は「夫(そ)れ物芸芸(うんうん)たるも、各々其の根(こん)に復帰す。根に帰るを静と曰う、是を命に復すと謂う」と言った。太極が主張する「内静により外動を求める」とは、ほかでもなくこれこそ、その極意だろう。

 
太極拳

五、 四大発明  

科学技術中国の発明は、製紙、火薬、活版印刷、羅針盤という「4大発明」だけではないが、より多くのものはすでに人々に忘れられてしまった。例えば、紀元前1000年には中国人が最初に凧揚げを行ったし、紀元前2世紀には落下傘と花火が発明され、2世紀には催涙弾、1300年には眼鏡、17世紀には徐正明がヘリコプターを発明している。エピローグ 光とアイデアの結合もしも開会式で見せるものが単調で古臭く、面白味のない民族の物語だったなら、それは大失敗だろう。シドニー五輪とアテネ五輪では、主催国は先進的な技術で自国の歴史・文化を示し、アイデアに富む手法で古い土着の文明と古代ギリシア文明をごく自然に展開した。また、アトランタ五輪の黒人文化やバルセロナ五輪でのアリ氏の震える両手、ソウル五輪のテーマソング「HAND IN HAND」(手に手を取って)なども記憶に残っている。神が「光よ、あれ」と言ったことで、世界に光が生じた。大家が「アイデアよ、あれ」と言ったことで……

全世界から選ばれた子供1万人の笑顔
    花火で彩られた「鳥の巣」

「フィナーレ」は、あたかもヒバリが夜空でさえずり、光り輝く天の川が村々に舞い降りてくるようだ。数十分間の間に、われわれは孔子と3千人を数える彼の弟子に出会い、缶の音や竹簡の音を耳にし、漢代の服をまとい、絶世の音楽を楽しみ、節回しの美しい昆曲(明代末から清代にかけて流行した江蘇省昆山県を発祥とする中国歌劇)や才子佳人などによって古代に連れ戻された。張芸謀監督の手になる華やかな開会式は、彼の十八番の印象派的手法を踏襲したうえ、オリジナリティーに富んでいた。今回の開会式は世間に認められるだろうか。何はともあれ、世界は2008年に最も真の姿の「中国エレメント」を目にした。同時に、文化の力、アイデアの力こそが、100パーセントわれわれの胸を打つことができることも裏付けられた。

 

「北京週報日本語版」より2008年9月1日

 

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