生活のバリアフリー

 

パラリンピックの開催をきっかけに、障害者たちの生活状況に関心が集まっている。北京市の政府や民間団体は、 障害者の生活条件を改善し、彼らの社会参与を支援するために力を尽くしてきた。北京が障害者にやさしい真のバリアフリー都市になることを、誰もが願っている。

故宮には車椅子を乗せて階段を昇降できる機械がある。ほかにも、さまざまなバリアフリー設備が整えられ、障害者も参観しやすくなった(新華社)
北京市和平里の興化社区(コミュニティー)に住む耿さんは、脳血管疾患により下半身が不自由で、杖を使わないと歩くことができない。しかも自宅は9階にあり、誰かの手助けがないと外に出て太陽にあたるのも困難だった。

今年、興化社区は住宅のバリアフリー化プロジェクトを始めた。生活に不便を感じていた耿さんはさっそくこれに申し込み、第一陣のバリアフリー化テスト家庭に選ばれた。

バリアフリー設備メーカーの社員が耿さんの自宅を訪れ、家の構造と耿さんの希望に応じて、廊下には手すりを、シャワー室にはシャワーが浴びやすいようにと椅子を設置してくれた。また、歩行器も支給された。おかげで、耿さんは一人でもエレベーターに乗って外出し、団地内を散歩することができるようになった。歩行器には椅子が付いているため、疲れたらそこに腰掛けて休むこともできる。

興化社区はほかにも、体の不自由な高齢者や身体障害者が建物に出入りしやすいようにと、出入り口の階段の近くにスロープを設けた。このようなバリアフリー化の費用はすべて、区政府と心身障害者連合会が負担するという。

中国には今、心身障害者が8200万人余りいる。政府は障害者に関する事業と彼らの生活を重視し、国家級のものから、各省・自治区・直轄市、県や郷鎮にいたるまで、各レベルの心身障害者連合会を設立した。

北京は2006年から住宅のバリアフリー化を開始。06年には120世帯だったバリアフリー家庭は、07年には5000世帯に増えた。家の中に手すりやスロープを付けたり、シャワー用の椅子を設置したり、滑りにくい床材を使用したり、低い位置にレンジを設けたり……。ほかにも、聴覚障害者に来客やお湯が沸いたことを光で知らせる器具など、住宅のバリアフリー化にはさまざまな方法がある。

パラリンピックをきっかけに、北京のバリアフリー化はここ数年で大きく進んだ。06年から、毎年1000以上のバリアフリー化プロジェクトを実施しており、すでにオリンピック競技会場やその周辺、オリンピック指定ホテル、指定病院のバリアフリー化はほとんど終了した。現在は引き続き、公共の場所、交通機関、観光地などのバリアフリー化を進めている。

北京の昔ながらの住宅である四合院にもスロープがつくられた 盲導犬と共に上海の街を歩く視覚障害者(新華社) 蘆溝橋街道大井社区には視覚障害者のための歩行訓練場が設置されている(新華社) 

これらのプロジェクトの中で、住宅のバリアフリー化とともにもっとも注目されているのは、公共交通機関のバリアフリー化である。これまで、車椅子の人がバスや地下鉄に乗るのは非常に不便で、誰かに手伝ってもらわないと乗り降りができなかった。しかし今では、地下鉄には車椅子用の階段昇降機が設置されている。バスには電動スロープが備えられていて、それを下ろすと出入り口の段差がなくなり、車椅子に乗ったまま乗り降りできるようになっている。

このように、ハード面は徐々に整いつつある。次に必要なのは、社会の人々の理解と支持だ。

バリアフリーの交通機関が開通し、身障者たちが車椅子に乗ったままバスに乗ろうと思っても、運転手や車掌は電動スロープの使い方に慣れていないため、結局は自分たちの手で車椅子をバスに乗せる。そうすると知らず知らずのうちに、身障者たちの「他人に迷惑をかけてしまう」という心理的負担を増大させる。

杭州市で開催されている手話クラス。耳の不自由な人によりよいサービスを提供したいと、大学生及び病院やデパートのスタッフなどが参加している(新華社) 北京の地下鉄には車椅子用の階段昇降機が設けられた(新華社) 四川大地震によって右足を失った北川県の小学生、邱耀君は現在医師の指導のもとでハピリに励んでいる(新華社) 

このような問題は盲導犬の使用でも発生している。今年の初めごろ、大連盲導犬訓練基地から北京第一号の盲導犬「ラッキー」がやって来た。このことはマスコミや人々の注目を集め、みんなが盲導犬の普及に期待した。

しかし間もなくして、ラッキーの使用者である平亜麗さんは憂慮の表情を浮かべてマスコミの前に現れた。実際の生活の中で、ラッキーを連れて入ることができない場所が多く、バスにも乗れないからだった。社会の盲導犬に対する認識が不足しており、ラッキーの能力を十分に発揮することは難しかった。

パラリンピックの開催により、世界中から障害を持ったアスリートたちが北京に集結する。これをきっかけに、身障者が欲していることを社会が知り、彼らに対する理解と支援が深まることを期待している。そうなってこそ、北京は真のバリアフリー都市となることだろう。(高原=文 馮進=写真)

 

人民中国インターネット版 2008年9月2日

 

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