・リンゴがもたらしたもの
中国の農家は、お金が貯まると家を建てる習慣があります。ここ栖霞の農家もそれは同じで、そのために建材などの関連産業も盛んになりました。また、農機も買うようになりました。オートバイ、衣類などへの需要も増えました。輸送業も伸びました。ほかの町からリンゴのバイヤーが集まってくるので、飲食店やホテルなどのサービス業をも大きく成長させることにつながりました。
90年代から始まった投資プロジェクトには、リンゴに関連する企業が参加しています。ジュース、蜂蜜漬け果物、缶詰、リンゴ酢、リンゴ酒、干しリンゴといったリンゴを加工する企業が次から次へ進出してきました。それだけではなく、農薬、化学肥料、包装材料、冷凍倉庫など、関連する業種の参入もありました。
今では果物を入れる箱を扱う企業は150社あまり、年間生産高が5億元に達しています。肥料の生産企業は12社あり、およそ6万トンを生産しています。リンゴを保護する紙袋の企業は100社あまりで、年間30億枚を生産しています。
1992年に経済技術開発区が設置され、現在、日本、韓国など外資系企業も進出しています。
・現代的な取引
これまで収穫の時期になると、リンゴのバイヤーたちが全国各地から酢霞に集まってきました。しかし、今年からは、はるばるやってくる必要がなくなりました。というのも、今年6月20日に、「山東栖霞リンゴ電子取引所」が始まり、ネットでリンゴの売買が出来るようになったからです。
この電子取引所で、富士リンゴの等級、購入量、出荷日付、輸送目的地などを入力し、決められた期間内に代金を払えば、希望する納品先にリンゴが届けられるという仕組みになっています。 バイヤーにとっては買い付けから納品までの時間が短縮されると同時に、コストも削減されました。そして何よりも品質が確保できるようになっています。
電子取引所の潘徳輝社長は、「始まったばかりなので、取引量はまだ少ないです。でも、全国最大のリンゴ卸市場という強みがあるので、きっと増えていくと思います。全国一のリンゴの街ですから、全国で最も大きなリンゴの電子取引所になるでしょう」と、抱負を持っています。
・環境にやさしい町づくりに
栖霞市には2500ものの山があり、110本あまりの川が流れています。今、栖霞市では環境にやさしい町作りに力を入れています。植林を行い、市外区の緑地率は40.3%に達し、市の一人当たりの緑地面積は9.7平方メートルに達しています。
都市建設前の町 | 都市建設後の町 |
また市では観光地の開発を進めています。ハイキングコースを整備したり、温泉を生かした町づくりに力を入れました。また、風力発電事業も始めており、すでに45台の風車が設置され発電しています。
新鮮な空気に包まれた緑いっぱいの町・栖霞市ーーそれが煙台をはじめとする周りの都市部の住民を引き付けています。
中国の改革開放とともに歩んでいる栖霞市は、この30年で、中国一のリンゴの町に成長しました。今、環境にやさしく、住みやすい街づくりを進めています。
「中国国際放送局 日本語部」より 2008年12月