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武式太極拳の伝承

魯忠民=文・写真

武禹襄の旧居
「武式太極拳」の創始者である武禹襄の旧居は、灰色の瓦、灰色のレンガの大きな家屋で、ひときわ目を引く。垂花門や客間、過庁、書斎、寝室などがあり、その立派な構えから、この地の名家であったことがよく分かる。現在はいくつかの部屋が一般開放され、武式太極拳の由来を伝えている。

幼いころから洪拳(中国南部で発達した中国武術の一種)を習い、拳技に長けた武禹襄(1812~1880年)は、楊式太極拳の創始者である楊露禅と切磋琢磨し、太極拳の概要を心得た。その後、河南省温県の趙堡鎮へ行って陳清萍に師事し、陳式太極拳を学んだ。そして故郷に戻り、王宗岳の拳法理論と陳清萍の教えに基づいて、武式太極拳を確立した。

一般開放されている部屋には、武家が太極拳を練習する場面が再現されている

武禹襄は儒学の教養をもつインテリであった。そのため、儒学を基礎に、兵法や医学、養生学、武術などの教えを参考にして、武式太極拳を創りあげた。また、『十三勢行功心解』『太極拳解』『太極拳論要解』など、太極拳に関する重要な著作も残した。

裕福な家庭に生まれ育った武禹襄は、拳法を教えることで生計を立てる必要はなかったので、その教えを受け継いだ弟子は少なく、甥の李亦畲(1832~1892年)、李啓軒兄弟だけだ。李亦畲は、武禹襄の拳架(スタイル)と理論を継承して、さらに完全なものにした。著作も数多くあるが、なかでも『廉譲堂太極拳譜』は、太極拳の権威的な拳譜と見なされている。李啓軒にも『一字訣』や『太極拳行功歌』などの著作がある。

武禹襄と二人の弟子によって、武式太極拳は拳架、行功、打手の面で基本的なスタイルが確立された。理論面では、インテリが太極拳を研究する道を開いた。今では、楊式太極拳と同じく、国際的な武術流派および健康法になっている。

武禹襄の旧居の正面広間
江南に伝わる

李亦畲に続いて武式太極拳を世に広めたのは、郝為真(1849~1920年)である。郝為真の弟子は多く、現在、世界各地で武式太極拳を教えているのは、ほとんどが彼の門下だ。

郝為真が最初に武式太極拳を広めたのは、河北省の邢台市。比較的有名な弟子として、李聖端、申文魁、郝中天のほか、「太極拳の名人」と呼ばれる李香遠が挙げられる。郝為真は邢台市で、十三勢、打手、三十二勢散手などの実技のほか、多くの理論を教えた。

次男の郝月如は父親の後を継ぎ、武式太極拳をより広く普及させた。1928年、全国各地に「国術館」が設立されたが、彼は永年県の「国術館」の館長を務めた。その年、国民政府は都を南京に移し、北京で拳法を教えていた名人たちの多くも南方に移住した。武式太極拳もこのときに江南に伝わった。1930年、郝月如は南京や鎮江へ赴き、江蘇「国術館」や最高裁判所、中央大学などで太極拳を教え、武式太極拳の中堅として多くの弟子を育てた。

武式太極拳が江南で普及した陰には、二人の人物の功労がある。一人は、国学の大家である章太炎に師事していた徐震(1898~1967年)。徐震は中央大学や武漢大学などで国学を教え、1950年代以降は、西北民族学院中国語学部の主任と甘粛省武術学会の主席を兼任した人物である。

1931年、徐震は郝月如について武式太極拳を学び、理論研究の著作を数多く発表した。数年前、北京大学の学者たちは「国学必読書300冊」というリストを作ったが、そのなかに徐震の著作は5冊含まれており、そのうち3冊が太極拳に関する著作である。

武禹襄 郝為真 李亦畲
もう一人は、蘇州大学の数学教授である呉兆基。呉兆基は李香遠について武式太極拳を学んだ。有名な古琴家でもある呉兆基は、江蘇呉派古琴の大家として、文化的教養が非常に高い。武式太極拳は、呉兆基の手によって古琴と見事に結びついた。江蘇地区では、太極拳と古琴を愛好し、普及させるインテリが数多く生まれた。

新たな流派が生まれる

北京で武式太極拳をもっとも早く学び始めたのは、孫禄堂(1861~1932年)である。郝為真に師事した孫禄堂は、武式太極拳を形意拳、八卦掌と融合させ、孫式太極拳を創り出した。

1950年代以降、北京で武式太極拳を広めたのは、楊式太極拳の大家の崔毅士である。李香遠とは同郷であり、親友でもある。彼らは楊式太極拳を教える傍ら、多少の武式太極拳も教えた。2004年11月28日には、北京市武式太極拳研究会が設立された。

武式太極拳の愛好者の努力によって、天津、鄭州、石家荘、上海、瀋陽、重慶、吉林、邯鄲などの都市にも相次いで研究会が設立された。武式太極拳に関する著作も次々と出版され、武禹襄、郝為真、郝月如などの理論も広く知られるようになった。

 

人民中国インターネット版 2008年12月

 

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