北京動物園唯一の女性パンダ飼育員である閻宝芝さん。もともとはチケット売り場で働いていたが、1992年にパンダ館に配属された。
担当しているのは雌の蒙蒙。パンダ舎を清掃するほか、エサを作って与えたり、体調を管理したりするのが主な仕事だ。勤務時間は毎日10時間にもおよぶ。
パンダ舎を掃除していると、蒙蒙が足にまとわりついてきて、ふざけて噛みつくことがある。愛情表現の一つなのだが、力が強いため、噛まれたところから血が出たり、爪でひっかかれて傷ができたりすることも多い。
蒙蒙はときどき、自分のイタズラが過ぎたことがわかり、頭を下げて「ごめんなさい」と意思表示する。まるで悪いことをしてしまった子どものようだ。「そんなときはいつも蒙蒙を許しちゃいます。私にとって蒙蒙は娘のようなものですから。私たちは心でつながっているのです」
ある日、1歳に満たない子どもパンダが水遊びをしすぎてカゼをひいた。下痢が続き、処置をあやまると生命に危険がおよぶ。みんな慌てふためき、涙をこぼす人もいた。その後の数週間、飼育員たちは家に帰らず、日夜交替で看病した。心を尽くした看護のおかげで子どもパンダは元気になり、飼育員たちはほっと息をついた。
閻さんの自宅は動物園から離れたところにある。そのため、毎朝6時には家を出なければならない。起床は5時だ。「たいしたことはありません。飼育員として、この国の国宝であるパンダの面倒を見るのが私の務めなのですから」
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