徹底分析:中国の国防費

 

現在開催中の第11期全国人民代表大会(全人代)第2回会議で、09年の中国の国防予算が前年比14.9%増(624億8200万元増)の4806億8600万元に上ることが明らかにされた。中国の国防費の長年の持続的な伸びをどう見るかに、人々の注目が集まっている。(文:国防経済研究の専門家、衛和氏)

まず最初に、中国の国防費が適度に限られたものであることに目を向けるべきだ。近年、中国の国防費が比較的大幅に伸び、すでに多額になったように見えるが、孤立的・一方的な視点ではなく、歴史的・連結的な視点で中国の国防費を注視・分析すれば、実際には決して多額ではないとの客観的な結論に至ることができる。歴史的に見ると、中国の国防費の伸びは明らかな埋め合わせの意味を帯びている。国家統計局の公開資料によると、1979年から1989年までの国防費の伸びは平均1.23%だが、同時期の消費者物価指数の平均上昇率7.49%を勘案すると、実際には年平均6%以上のマイナスとなる。1990年から1997年までの国防費の伸びは平均15.8%だが、同時期の消費者物価指数の平均上昇率は9.7%であるため、物価要因を排除した実際の伸び率は、年平均わずか6.1%となる。物価指数が比較的落ち着いた1998年以降、長年の経費不足が国防と軍隊建設にもたらした影響を緩和するため、ようやく国防費は実際の比較的大幅な伸びを徐々に示すようになった。10数年間の「忍耐」の過程で、中国の国防と軍隊建設は経費不足による大きな影響を被った。中国そのものの情況から見ても、国防費は極めて限られたものだ。今回の両会(全人代と全国政協)で発表された数字を例に挙げると、09年の国防予算は前年実績比14.9%増、財政支出予算に占める割合は6.3%で、過去数年と比べると、その割合はやや減少している。一方、同期の教育費は22.5%増、医療衛生費は20.9%増、社会保障・就業費は23.1%増、環境保護費は22.3%増、社会保障的な中低所得者向け住宅供給事業の経費は199.6%増であり、各社会事業費の伸びと比べ国防費の伸びは低めであり、中国は常に主要な財力を民生改善に充てていることが見てとれる。国際的に見ても、米国、英国、フランス、ロシア、日本などと比べると、中国の国防費は国内総生産(GDP)比であれ財政支出比であれ、国民1人あたりの額であれ軍人1人あたりの額であれ、主要指標のいずれにおいても低い方なのだ。

次に、中国の国防費の適度の増加が、完全に正当かつ合理的なものであることに目を向けるべきだ。中国はまだ統一を成し遂げていない発展途上の社会主義大国だ。領土が広く、人口が多く、2万200キロ以上の陸上国境、3万2000キロ以上の海岸線、300万平方キロ以上の領海を擁す、世界で最も陸上国境が長く、最も多くの国と国境を接し、国境を跨る民族の多い国であり、安全保障上の周辺環境は非常に複雑で、国家の主権・安全・領土保全維持の任務は極めて困難であり、国家の安全と発展の利益に適した揺るぎない国防と強大な軍隊の建設を必要としており、国防費の適度の増加は完全に必要・正当・合理的なものなのである。

第3に、一部の西側諸国が騒ぎ立てる中国の国防費の問題には、事実の根拠がないことに目を向けるべきだ。両会前後になるたびに、一部の西側諸国はいわゆる中国の国防費問題を喜んで騒ぎ立て、中国の国防費は不透明で真実性がなく、防衛上の必要を上回っているとでたらめな憶測をし、「中国脅威論」を誇張することで、中国のイメージに泥を塗り、中国の発展を抑え込もうとする。これは冷戦時代に旧ソ連の軍事費について騒ぎ立てたのと軌を一にする手法であり、西側の冷戦思考および「中国抑制」「中国弱体化」という一貫した戦略を反映している。いわゆる国防費問題の本質は、統計上の数字や方法をめぐる学術論争ではなく、根本的なイデオロギーと現実の利益をめぐる政治的な争いなのだ。中国の国防費をめぐるこうした国々の主たる観点には、何の根拠もない。

第4に、中国の軍事力の伸びが世界の平和パワーの発展であることにも目を向けるべきだ。中国が平和発展路線を歩み、軍拡競争や軍事拡張を行わないのは、現実的な利益から来る必要であると同時に、歴史的・文化的な必然でもある。国家の政策方針であると同時に、人民の民心の向かう所でもある。中華文明は世界の古代文明中、中断なく現在まで続いてきた唯一の文明だ。中国人の「和」の思想は、悠久の歴史、極めて豊富な内包、深遠の至りである影響力を有す。平和を図り、仲むつまじさを求め、調和を構築するとの理念は民族の血に滲み込んでおり、中国人の行動様式を決定する内在的な価値観となっている。こうした文化的遺伝子が、いくつかの国のような「強国すなわち覇権」の古い道を、中国が過去に歩んだことがなく、現在も歩んでおらず、将来も歩まないことを決定づけているのだ。

 

「人民網日本語版」 2009年3月9日

 

 

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