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中国の産業振興はチャンス グローバル企業が見る「両大会」 北京で開催中の両大会(全人代、全国政協)に世界中が注目している。世界的に有名なグローバル企業も高い関心を示し、両大会への評価と期待を表している。 ▽国際社会を勇気付けた成長率8%目標 ドイツバンクのチーフエコノミストを務める馬駿氏は取材に対し、「今年の政府活動報告は人々を勇気付けるものだった。私が気付いたのはまず、今年の両大会が、国民生活や消費刺激、社会の安定確保を強調していること。具体的な措置で言うと、社会保障資金への今年の中央財政投資は2930億元に達したことだ。昨年の予算を439億元上回り、17.6%という大きな伸び幅を記録している。地方財政の投資も拡大される予定だ。次に、農村養老金制度が初めて議事日程に上がったこと。農村養老金は今年、農村人口の10%をカバーする計画だ。これは画期的な変化を示している。また、農民工(出稼ぎ労働者)や大卒者に対してより多くの就業チャンスを提供することも打ち出された。これらはいずれも、注目すべき構造的な変化だといえる」と語った。 世界経済の成長率がプラスにとどまった08年、中国GDPは9%の成長率を記録し、世界経済成長への貢献率は20%に達した。「経済成長がマイナスに転化しようかという時に、中国経済が8%成長を実現すれば、その貢献率は40%を超えるだろう」と馬氏は語る。 国際投資の分野では、中国への帰還が09年の潮流となりそうだ。UBSのグローバルエコノミストを務めるジョナサン・アンダーソン氏はこのほど、「今年収益を上げるには中国に戻ることがカギとなる」と主張する文章を発表した。アンダーソン氏によると、活力を損なうような経済減速を中国は回避することができるし、完全な衰退に陥ることはない。世界各国の経済が急激に収縮しつつある現在、世界の投資家らは中国の成長速度を評価している。シティグループの専門家も、「政府の4兆元におよぶ経済刺激策を受け、中国経済は09年、8%を超える成長率を記録する」との見方をしている。シティグループのアジア太平洋地域のチーフエコノミストを務める黄益平氏は、「成長率8%確保に自信を持つことができるのは、政府が意欲と能力を持っているからだ。中国のマクロ経済の展望は世界のほかの地域よりも明るい」と語る。 ▽中国振興のチャンスをねらうグローバル企業 世界的に有名なコンサルタント会社「プライスウォーターハウスクーパース(PwC)」でTMT(技術、メディア、通信)産業を担当するフリッツ・ライテンス(Frits Litjens)氏によると、中国はすでに製造業の中心となっており、今後はハイテク産業の中心となっていく見込みだ。欧米先進国はここ10年で経営の重心を中国に傾けてきた。「30年前、人々は重心を欧州から米国に移した。現在は中国に移し始めている。特に今は、今回の危機から我々を連れ出すのは中国だという見方が強い」。 PwCはこのほど、中国に展開する各産業のグローバル企業100社余りを対象とした最新調査報告「アジアのグローバル人材の主要流動傾向」を上海で発表した。これによると、中国はグローバル企業にとってアジアで最も主要な投資先となっており、グローバル企業は地域本部を巨大な市場である中国に設立するようになっている。「中国に地区本部を設けている」という企業は対象企業の33%、「中国は最も主要な従業員の駐在先だ」という企業は78%に達した。グローバル企業は今後、海外留学経験者を優先的に雇用していくと見られる。 ABBグループのグローバルシニアバイスプレジデント北アジア地区総裁を務めるブリース・コッホ(Brice Koch)氏によると、中国のような低コスト国にとって金融危機は新たなチャンスとなる。ABBグループは今後、中国への投資を拡大し、人材の募集と訓練を強化していく構えだ。コッホ氏によると、中国が4兆元の投資計画を打ち出して内需を高めることは、中国経済の長期的で力強い発展を確保すると同時に、グローバル企業の中国展開にも新たなチャンスをもたらした。 本部を米国に置く「ベストバイ」は世界的に有名な小売企業だ。アジア太平洋地区の総裁を務める楊徳銘氏によると、ベストバイ社にとって中国は最大の調達市場となっている。昨年だけで新店舗5店が新設されており、中国への投資が減ることはないという。 米国のアクセンチュア社は世界でも有名なコンサルティング会社だ。アジア太平洋地域アウトソーシング部の副総裁を務めるチャールズ・ハンティング(Charles Hunting)氏は、中国政府がこのほど打ち出したアウトソーシング発展加速のための政策を高く評価している。中国には優秀な人材とインフラがあり、アウトソーシング発展には大きな潜在力がある。中国のアウトソーシング市場へのグローバル企業の重視はますます高まっているという。 IBM大中華区ソフトウェアグループは北京で6日、中国ソフトウェア市場への投資と展開をIBMが引き続き拡大することを宣言し、知的ソフトウェアをテーマとした今年の戦略を発表した。四川省の家電メーカー「長虹」とIBMはしばらく前、四川大地震の復興・再建市場をターゲットに総合的な情報化サービスを提供していく協力目標を明確化した。これには、情報化された家電・ネットワーク・IT製品やシステムの解決方法を関連プロジェクトに向けて提供することなどが含まれている。 ▽中国投資への高い自信 中国経済の先行きや投資すべき分野などはグローバル企業が関心を寄せるテーマとなっている。シーメンス中国のリチャード・ハウスマン(Richard Hausmann)氏は、「中国市場に対して同社は自信を持っている」「中国経済の健全で安定した発展に貢献したい」と語る。 ハウスマン氏はこの2日間、新聞やインターネットで報道される両大会関連のニュースをチェックしている。省エネ・環境保護産業の発展に力を入れることは、人民代表や政協委員が熱心に話す話題となっている。ハウスマン氏によると、シーメンス社は最近、中国の省エネ・環境保護産業に13億5千万元の追加投資を行った。中国市場への同社の投資総額は今年と来年で113億5千万元にのぼる見込みだ。そのうち40%が省エネ経済の発展に投じられる。 「中国は世界で最も活力のある経済体。グローバル商社にとっては無視できない市場だ。伊藤忠のグローバル戦略にとっては今後の重心の置き場所となる」と話すのは伊藤忠商事の中国総代表を務める桑山信雄氏だ。「繊維業を例に取ると、日本の繊維業は徐々に萎縮している。今後の中国市場の発展は我々にとってとても重要になる。この分野への投資も拡大させていく計画だ」。桑山氏によると、世界金融危機は経済に打撃を与えているが、中国は危機から真っ先に立ち上がる国となり、中長期的に見ても成長する潜在力はとても大きい。 「ウォールマートは世界最大の小売商だ。さらに信頼に値する、環境保護への影響がさらに小さいサプライチェーンを再建する条件がウォールマートにはあるし、その責任も負っている。小売業界全体をそうやって引っ張っていかなければならない。世界的な製造大国である中国の特徴を生かし、供給元との緊密な協力で実質的な進歩を促し、環境保護を公約しているメーカーとともに買い入れ政策を通じて環境保護の目標を実現していく計画だ」。ウォールマート社の総裁とCEOを兼任するリー・スコット(Lee Scott)氏は取材に対してこのように述べた。金融危機のダメージは広がっているものの、小売業のビッグであるウォールマート中国の売り上げは今年、減少することがないだけではなく、大きく増加すると見られている。中国経済の発展に対して同社は大きな自信を持っている。
「人民網日本語版」2009年3月10日
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