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1984年静岡県うまれ。現在、日本国費留学生として、北京大学国際関係学院に在籍。学業の傍ら、中国のメディアで、コラムニスト、コメンテーターを務める。『七日談~民間からの日中対話録』(共著、新華出版社) | 最近、中国の「ブロガーの集い」に招待されることが多い。先日、自分がブログを開設している「鳳凰網(フェニックスサイト)」主催の集いに参加してきた。多種多様な考え方を持つ、影響力のあるブロガー20人くらいで飲み食いしながら、適当に世間話をする。これがやけに面白い。
官僚、商人、記者、軍人、芸能人などさまざまな立場の人間がブログという媒体を通じて知り合い、互いに見識を深めていく。このようなプラットフォームを提供してくれるサイト側の努力もあり、私にとっては、いい人脈づくりにもなる。
中国語でブログを「博客」、ブロガーを「博主」、有名かつ影響力のあるブロガーを「名博」と呼ぶ。ここ数年、中国ではブログが急速に普及している。2007年の時点で、ブロガー数は1億にのぼったと言われる。2008年のブログ発展概要をまとめた最新の統計によると、カテゴリー別に見て、経済・金融系のブログが最多の「点撃率(アクセス数)」を獲得している。これは最近の国内外の情勢及び中国人の関心事に関係するものと思われる。
今年度ブロガー王の座を射止めた徐小明氏は3億5500のアクセス数を獲得した。日常生活を日記風に描く女優の徐静蕾、現代社会問題を鋭く指摘する作家の韓寒両氏のブログも2億というアクセス数に達する。中国におけるブログの存在感を突きつけられる数字である。
こうした「名博」とは比べる余地もないが、私のブログは昨年3月に開設し、3ヵ月で500万、2009年1月現在で1300万のアクセス数を持つようになった。言論活動の「場」として、今や欠かせない道具になっている。
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アクセス数が2億を超え、自分の「ブログ集」を出版した女優の徐静蕾さん(右端) |
なぜ「博客」がここまで流行るのか。私のウォッチでは、三つの背景があるように思う。
まず、インターネット時代の到来が挙げられる。中国におけるネット人口は2007年の時点で2億5000万人を超えた。今後も増加の一途をたどるであろう。
現在、ウェブサイトは世論・マスコミ界において確実に影響力を強めている。とくに「新浪」「捜狐」「騰訊」「網易」などニュース、メール、ブログ、ゲーム、映像、掲示板といった豊富なアイテムを備える総合ポータルサイトは見逃せない。その勢いは活字媒体やテレビをはるかに凌いでいるというのが私の実感だ。
次に、ポータルサイト側が他のアイテムと比べて「博客」を相当重視し、積極的にプラットフォームを創設している現状がある。各社ともブログセクションに相当な数のスタッフを投入し、日々の情報・情勢をウォッチしながら特集を設け、「名博」を中心にブロガー側から提供される文章に、分担して目を通す。そして、価値のある文章をウェブ上における特定のページで、カテゴリー別にプロモーションしていく。
プロモートされた文章のアクセス数は1万、10万、100万、ときには1000万にものぼる。私はこれをブログにおける「三位一体」構造だと認識している。すなわち、ブログという媒体を通じて、プラットフォームを創設し、影響力を高めたいメディア側、執筆を通じて、日々の生活・ウォッチを整理し、知名度を上げたいブロガー側、あらゆる文章を通じて見識を深め、知性を磨きたい読者側の「利害関係」がかなりの程度で一致しているということだ。
ちなみに、中国ではほとんどのブロガーは実名で登録し、個人の写真を掲載している。編集側とのコミュニケーションも、MSNメッセンジャーなどを通じて密に行われている。
最後に、「情報のニーズ」という点から考えてみよう。中国の読者は、少なくとも現段階において、いわゆる「特ダネ」的な情報をいち早く求めるというよりは、誰でも知っている大きな事件や問題に対するさまざまな「視点」「見方」を知りたい傾向があるようだ。
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インターネットという社会全体に巨大な影響力を持つ媒体を通じて世論が形成されていく過程で、中国の読者が求める情報のニーズ、そしてそれを的確に察知し、議論を促進することで成長していく「博客」の存在は注目に値する。既存の情報と好奇心たっぷりの消費者との間に存在するグレーゾーンに、ブログは活路を見出していくのかもしれない。(文=加藤嘉一)
人民中国インターネット版 2009年3月25
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