リーダーの育成に協力する日本 二階俊博経済産業大臣に聞く

聞き手  于 文  

写真   賈 秋雅

とき   2009年3月4日

ところ  経済産業省

四川大地震の後、日本政府は中国現地から合計3回、総勢200名以上にも及ぶ地震災害復興視察団を受け入れている。阪神・淡路大震災や新潟県中越大震災などを始めとする震災復興の経験から得たノウハウや技術を伝授し、二階俊博経済産業大臣自身が視察団と会見、激励した。復興支援のみならず、中日間の人的交流の裾野を広げることに道を開く今回の交流について、東京支局は二階大臣に単独インタビューを行った。

インタビューに答える二階俊博経済産業相(写真・賈秋雅)

――中国の大地震被災地に対して、各国は様々な支援の手を差し伸べました。日本政府は、総額5億円相当の無償資金協力を表明、民間有志からも同時に緊急援助物資を供与し、国際緊急援助隊も派遣しました。こうしたハード面の援助以外に、復興に携わる中央政府の幹部や被災地の地方幹部に日本で蓄積されたノウハウを伝授するというソフト面の支援も続いています。特に「人」への支援について、大臣はどのようなお考えをお持ちでしょうか。

二階俊博大臣(以下二階と略す) 阪神・淡路大震災の時、新進党の現地対策本部を設置し、80日間、東京、神戸、郷里の和歌山という三角形の間を往来しながら、私自身も被災地の床で寝、水汲みを行うなどの復興活動を行った経験があります。その時に最も強く感じたのがリーダーの重要性でした。「咄嗟の時に判断できる人材」が必要です。西澤潤一先生は東北大学の学長であられたとき、卒業生に向かって、「リーダーたるもの咄嗟の判断を迫られる時が必ず来る。常日頃からそうした状況や起こりうる問題について考え、知識を身につけておかなければ正しい判断はできない。」と話されていました。 中央、地方を問わず、リーダーたる者、咄嗟の判断ができるようにしなければならないと思います。

日本と中国はまさに一衣帯水の国であります。今回の地震では中国の人々は大きなショックを受けました。日本は地震や津波などの自然災害が多く、被災と復興の経験が蓄積されています。その経験を中国の人たちに生かしてもらい、中国でも優れたリーダーを育成して、今回のような大災害に際しての救援と復興に役立てていただければと思います。 

――大臣は視察団を接見してくださいましたが、中国の幹部たちに対して、どんな印象をお持ちになりましたか。

二階 みなさん熱心ですね。日本の経験を少しでも取り入れて、四川の早期復興に結びつけていこうという意欲が伝わってきました。また、地震から日が経っていますが、あまりにも大きな地震であったために、心に深く震災の痛みを持っているように感じとれました。私たちにも同じような経験があって共感できます。復興に貢献したい、ともに復興に役立ちたい、との気持ちは同じだと思いました。

兵庫県の神戸市、それから新潟県の山越村など、実際に被災地を見ていただきました。現地の人々の体験はまだ生々しく、御苦労された経験から、少しでも四川の人々の復興につながればとして、現地のみなさんは大変熱心に対応してくださった。三班に分かれて調査しましたが、それぞれ満足して帰られたと思います。あのような大きな地震を体験したわけですから、お互いに地震の恐ろしさを、そして何よりも復興を急ぐことを共有しあったのです。被災者の精神的な面でのケアも大事だという認識を共有することもできました。今回の復興支援を通じて日本との間に真の友情が築かれたのではないかと思います。これこそが人と人との交流の大切な部分です。

二階俊博経済産業相(左)と弊社東京支局局長の于文さんの記念撮影

――2008年5月、胡錦濤主席が訪日した際に行われた「日中両政府の交流と協力の強化に関する共同プレス発表」の中で、日中両国の関係強化のため、両国の将来を支える「中堅幹部の交流」を進めることについても一致しました。今回の件は、その交流の一環になりましたでしょうか。

二階 昨年の年初から、私は中国の指導部に「中堅幹部交流」についての提案をしてきました。これまで、観光交流については一定の成果をあげてきておりますが、今後は、指導者になる中堅幹部同士の交流が必要だと考えました。技術や文化の交流も含め、さまざまな分野や業種で交流のテーマをつくろうという話し合いから始めました。私が中国を訪問した際にも、多くの幹部の方々にお目にかかって話し合い、共に努力しようとの共通認識ができました。そして、胡錦濤主席が訪日し、共同プレス発表をして頂いて、すぐに大地震が発生しました。

「中堅幹部交流」の第一ページを四川大地震の復興から開こうと、私は百人でも、二百人でも、復興のためのリーダーをつくるために日本に学びに来られるなら、一週間でも受入れを準備すると李源潮中央組織部長に申し上げました。このような支援は、復興のリーダーを作るためにも、急がなければ意味がないのです。復興視察団が来日したその都度、ささやかな歓迎会を催し、森元総理、福田前総理、麻生総理らが出席され、代表団の皆さんと打ち解けた意見交換を行いました。四川省の幹部の皆さんも心を開いて事情を話された。頑張ろうという気持ちを強くしていただけたなら、第一ページの中堅幹部交流は成功だったと言えるでしょう。

――防災という今後の課題で、中国は何をすべきであると思われますか。

二階 災害は人の命を奪う可能性があります。普段からしっかり対策を尽くさなければなりません。

日本では以前、東南海・南海地震がやがて発生するだろうと言われながら、それに対する準備ができていなかったのです。私は議員立法で、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法を提出し、一日で衆議院と参議院を通過するようお願いしました。中国においてもこうした法律の準備と法体系の整備が必要です。地震が起きてから対策を講ずるのでは遅い。あらかじめ準備し、勉強しておけば、よいと思います。

これは日本での失敗例ですが、阪神・淡路大震災の際、全国から消防自動車が集められましたが、ホースの径が被災地の給水栓と合わず、使用できなかったことがありました。その時の反省から、今では規格が統一されています。中国においてもきっと似たようなことがあるでしょう。平時に準備しておくことが重要であり、今のうちにさまざまな対策を講じるべきだと思います。

四川大地震のような大規模災害は、今後も東アジアにおいて起こりうるものです。被害を最小限に食い止めるためには、各国それぞれが防災対策を強化するとともに、近隣諸国間の協力が不可欠になると考えます。現在、中国の協力を得て、東アジア16ヶ国でERIA(東アジア・アセアン経済研究センター:東アジア経済統合推進のため、政策研究・政策提言を行う国際機関)を創設していますが、防災協力が一つのテーマとなるよう提案したいと思います。ただ、その前にやはり中国は今被害を受けた四川をいち早く復興させなければなりません。私たち日本人も、神戸から復興のニュースを世界中に発信できるようになることを一番に考えました。神戸空港がつくられたのも、神戸は復興したというニュースを世界に発信したいという私たちの願いと理想、目標のためでした。

「さすが中国、10年かかるだろうと世界が思っていた復興を、5年で完成させた」と言われるようにして、不幸な傷跡を拭ってくださるよう、中国の友人たちが奮起されることを願っています。そのために、日本としても役に立つことがあれば、できる限り協力したいと思います。

 

人民中国インターネット版 2009年5月8日

 

 

 
人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850