国際金融危機と日中協力の展望

在青島日本国総領事館 齋藤法雄総領事

過去30年余り、日中の相互依存関係は飛躍的に強まり、名実ともに、「一衣帯水」の隣国として、特に、経済関係や人的交流等の面で緊密化している。例えば、経済関係は、2007年の日中貿易総額は2366億米ドル(日米貿易総額は2137.49億米ドル)で日米貿易総額を超え、中国は日本の最大の貿易相手国となり、日系企業による中国国内での直接・間接雇用創出数は920万人、中国への進出企業数も2万2千社を超えている(注:2005年4月23日付「人民日報」薄煕来・前商務部長発言)。

人的往来も、2007年の日中往来者数は約514万人である(訪中者約400万人、訪日者約114万人、1日平均約1万4千人往来)。また、日中間の友好姉妹都市は328組ある。こうした国民間の直接交流を通じて、相互理解と相互信頼を増進することが、未来志向の日中関係を構築する上で極めて重要であると考えており、我々は人的交流、特に青少年交流をより一層促進していきたいと考えている。

国際金融危機により、世界各国の経済成長率は、大幅減速やマイナス成長している。中国経済は(09年1月~3月期の実質GDP成長率(前年同期比)+6.1%)小幅の減速である。中国政府は、景気減速と金融危機に対して、08年7月からマクロ経済政策を引き締めから緩和へ転換し、同年11月、国務院は2010年までに投資額4兆元の内需拡大政策を発表した(中国の旺盛な内需は、全世界に大きな市場を提供している)。

国際金融危機による世界的な不況の中、日中両国は、今こそ、協力を強めていく時である。2008年の日中首脳の相互往来は5回実現しており、(5月胡錦涛主席訪日、7月洞爺湖サミット参加のため胡主席訪日、8月北京五輪開会式出席のため福田前総理訪中、10月日中平和友好条約締結30周年記念レセプション出席のため麻生総理訪中、12月日中首脳会談のため温家宝総理訪日)首脳往来の度、両首脳は両国の友好的発展と協力関係の強化の重要性を確認し合い、様々な決定をしている。例えば、中国各地で日本の技術を紹介する「省エネ・環境協力相談窓口」の設置や「文化センター」の相互設置等がある。そして、2008年を「日中青少年友好交流年」とし、4年間で毎年4千人の青少年交流を実施している。

また、2008年12月、日本の福岡で「日中韓首脳会議」を開催し、日中韓の首脳は、世界経済及び金融市場が深刻な課題に直面している今こそ、3カ国が協力を強化すべきであることに一致し、現下の国際金融危機による悪影響を克服するとともに、アジアにおける持続的成長を達成するために、アジア諸国の努力を促進する3カ国の協力を共に強化することを決意している。

昨日は、第2回「日中ハイレベル経済対話」が東京で行われた。今後もこうした対話が定期的に行われ、日中の経済交流・協力が促進されることを期待している。

現下の国際情勢を克服し、世界経済の安定と繁栄を取り戻すためにも、国際社会が協調して行動することが不可欠であり、また、日中両国の良好な関係の発展がアジア地域のみならず世界の安定と発展につながるのであり、日中両国が共に働き、共に伸びることが重要である。

日中両首脳は、両国の友好的発展と協力関係の強化の重要性について以下のような言葉で表現している。胡錦涛主席は、「日中は和すれば双方に利益をもたらし、争えば双方の利益を損なう(中日和则两利、斗则俱损)」。麻生総理は、日中の「共益」、日中両国が切磋琢磨して協力していくことが、真の戦略的互恵関係である。

現在、国際金融危機に直面し、日中は、経済・貿易面での協力関係をより強化するべきであるが、その他の分野、例えば、省エネ・環境分野、青少年交流、ハイテク産業分野の交流等も重要である。省エネ・環境分野での協力に関しては、中国の環境問題は深刻であり、日本は過去高度成長期に環境問題に直面した経験があり、日本は省エネ・環境保護分野において優れた技術を有している。日中両国が省エネ・環境分野で交流・協力を深めることは双方にとって有益である。また、あらゆる層で対話や交流が積み重ねられ、相互理解が社会の広い面で深まることを希望している。

当館は、両国の友好的発展と協力関係の強化に対して少しでも貢献できるよう努力していきたい。そして、ここにいらっしゃる、これまで良好な日中関係発展のために尽力されて来られた方々に心から感謝申し上げます。

 

人民中国インターネット版 2009年6月