感知日本

―生活の中の日本のエレメント

王寒蕾 上海外国語大学

 女の子向けの小さい店でかわいい人形、鮮やかなヘアピンが売られている。そのような店の中で小さい猫のようなおもちゃがよく見かけられる。その猫はすわって片方の前足を挙げて人を招く姿をしている。名前は招き猫である。普通は商売繁盛の縁起物とされている。猫の色は白や赤、黒色の他に、ピンクや青、金色のものもあり、色によって意味が違う。金色の招き猫は財源が豊かになることを祝福するのに対して、白いのは幸運の象徴とされ、赤いのは病除けの意味を持ち、黒い招き猫は魔除けの意味を持ち、ピンクのは恋愛が円滑になることを祝福し、青いのは交通安全を祝福する意味を持っている。近年中国で「招き猫」ブームが起きている。店やレストランの入り口などに招き猫がよく置かれている。招き猫の首飾り、招き猫のブレスレット、招き猫の携帯飾り、そのようなものがいろいろある。その猫は非常に人気がある。周りの多くの友達たちは招き猫の飾り物を買っている。招き猫が好きなため、この猫が代表する文化についても興味を持つようになった人が少なくない。

中国にも福の神があるが、どうして若者が招き猫を好きになったのだろうか。その理由は簡単だ。自国の福の神を身につけるのは俗っぽいと思っているからだ。外国の福の神なら、そのような感じがしない。人間はみな幸福になるために一生げんめい努力する。しかし、この世界は自分で支配できないことが多いから、超自然の力に頼ってしまう。

中国では日本の福の神が流行っている。それは偶然なことだろうか。

実はこの世界に偶然がない。日本の招き猫が中国で人気があるのも偶然ではない。1960年代から、日本は製造技術が進み、だんだん先進国になった。その大発展の日本は商品を輸出するだけではなく、自分の文化も輸出している。経済力が強い国になってはじめて文化力が強い国になることができる。招き猫はその一例だ。

日本は独特な文化を持ち、特に伝説と昔話が豊富な国である。桃太郎、雪女、河童は全部日本の昔話の中のキャラクターだ。日本の歴史と神話は絡み合っている。日本人は、太陽の下にあるすべてのものに魂や神をが宿っていることを信じている。日本の伝説の神は世界で最も多いといわれている。そして、それぞれの神は独特のキャラクターがあり、人間のような喜怒哀楽などの感情も持っている。

そして、日本文化と中国文化は東洋文化の一部のため、共通点が多いから、理解しやすくて受け入れやすい。昔から、中日の文化交流が盛んだった。文化だけでなく、日本の伝統食品もずっと以前から中国に輸入されていた。日本は海の国だから、水産品も多く、日本風の食べ物が中国でよく見かけられる。すしとたこ焼きの好きな中国人が多い。食品の輸入に従って、食べ物に関する新しい言葉も中国に輸入された。弁当という言葉は中国でよく使われている。中日の文化交流はますます盛んになり、日常生活においても随所にその文化交流の成果が見られるようになった。

文化の多様性は創造の源泉である。そのために、世界的な文化交流をすることが必要だ。中国は自分の文化を発展させるために、積極的に日本の文化を輸入している。中日の文化交流の発展に関して、中国の政府はだんだん主導的な役割を果たしていくだろう。2007年から、中国のテレビ放送局は再び日本のドラマを輸入した。日本の新しいドラマ、アニメも中国の観衆にテレビでみられるがゆえ、日本の生活の仕方と習慣が理解しやすくなっている。中日の人民の相互理解にも役に立つと思う。文化は世界の財産として相続できる。

現在中日の交流は勢い盛んになってきた。中日の関係は今やお互いに相手の発展を支えあう新たな段階に入った。招き猫のような文化のメッセンジャーはもっと活躍するに違いない。私たちの周りの日本のエレメントは今後もだんだん増えていくだろう。それらを見ること、それらに触れること、また、それらを使うことにより、日本の魅力を感じ取ることができる。日本に対するわれわれの理解も一層深まるに違いない。

選評コメント

日本から入ってきたさまざまな「招き猫」がブームとなっている現象を導入部として、異文化交流の本質に鋭く迫っている。平易な文体の中にも論理的構成力と確かな文章力を感じさせる。

創作におけるインスピレーション

 私は今大学三年生で、日本語を専攻として勉強しております。日本語を勉強するようになってから、日本文化についてもますます興味を感じるようになりました。想像力に富んだ日本の物語、特に鶴姫や桃太郎などの昔話が大好きです。また、招き猫の恩返しも深く印象に残りました。

今、日本は中国の重要な仲間であり、両国の関係も日増しに緊密になっています。でも、多くの中国人は日本という国をあまり知りません。文化の差が原因で誤解が生じてしまうケースも少なくありません。

私の夢は、日本語の通訳者になって、日本の文化習慣、日本特有の発想と美意識を中国に紹介することです。私の紹介によって、中国の人々が日本という国をもっと理解することができればいいなあと思っております。招き猫のような優れた文化のメッセンジャーを選んで今回の投稿作品に書いてみたのは、その夢を実現するための第一歩と言えるかもしれません。これからも自分の夢をかなえるために、一生懸命に頑張っていきたいと思います。

受賞の感想

このたび、人民中国雑誌社、日本科学協会、中国青年報社共同主催の「笹川杯作文コンクール2009―感知日本」に参加し、三等賞に入賞して、たいへん嬉しく思っております。

小さい頃から日本のことに興味をもっておりましたが、その時は日本語が全然分からず、日本に対する理解も限られたものでした。三年前、上海外国語大学に入学し、日本語を専攻として勉強し始めました。先生方は、日本語だけでなく、日本の政治、経済、文化などについても教えてくださいました。また、日本語の文章の書き方も詳しく説明してくださいました。先生方のおかげで日本のことが少し分かるようになり、先生方のおかげで自分の考えと気持ちを日本語で表現できるようになり、今回の作文コンクールに入賞することができました。この場をお借りして、上海外国語大学日本文化経済学院の先生方に心より感謝申し上げます。

また、この賞をくださいました人民中国雑誌社、日本科学協会、中国青年報社にも衷心より感謝の意を表したいと思います。

 

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