昂素村 砂漠の村の変遷

文・写真=王丹丹

ウレンガオワさんの太陽熱を利用したかまど 果てしない砂漠だった地は、現在、一面の林になっている

内蒙古自治区オルドス(鄂爾多斯)市オトカ(鄂托克)前旗の昂素村は、モウス(毛烏素)砂漠にあり、伝統的な牧畜業を主とする地区であり、総面積は68万ムー(1ムーは約6.667アール)、人口は168戸である。以前、この地は常に旱魃に襲われ、砂嵐が絶えず、加えて長年の放牧により牧草地の砂漠化は著しいものがあった。

近年、昂素村の村民は、勤勉な労働により砂を防ぎ、砂を治め、植林し、生活環境を改善すると同時に富に向かう道を進んでいる。

植樹と防砂が生活を変える

52歳のウレンガオワさんは、昂素村で牧畜業を営む。「ウレン」は、モンゴル語で美しいという意味であり、「ガオワ」は、聡明で器用、という意味である。ウレンガオワさんは、夫のヤンバトアさんと一緒に20年あまり、その勤勉な二本の手によって生活を改善してきた。

記者がウレンガオワさんの家の前に立ち、あたりを見回すと、人工林が遠くまで続いている。20年あまり前、ここが一面の砂漠だったとはとても信じられない。

ヤンバトア、ウレンガオワさんはモンゴル族が賓客を迎えるときの贈り物、「ハタ」を用意して記者団を歓迎した

ウレンガオワさんは「20年ほど前、私の家では、4、5ムーのトウモロコシ畑と、100あまりの羊を飼っていました。当時は、砂嵐が起きると植えたトウモロコシはすべて砂に埋まり、生かすのはとても難しかった。植樹で砂を治めれば、環境を改善し、収穫が増え、もっと羊が飼えると思いました」と言う。そこで、1985年からウレンガオワさんは、家の付近に植樹を始めた。当時は、一家の生活は、羊による毎年のわずかな収入頼りだったが、食費以外の残りはすべて植樹にまわした。

過去の生活について語ると、ウレンガオワさんの声には嗚咽が混じった。「当時、昼間は子供をおぶって木を植え、一日の苦労のあとは、薄い粥とトウモロコシパン、日々は本当に大変でした。苗木を植えても成功率は低く、がっかりすることも多かった。けれど、夫が励ましてくれました。植え続ければ、いつか成功すると。夫の励ましがあったので、続けられたのです。いま多くの樹木が茂り、子孫に貢献できたことになります」

草葺の小屋はウレンガオワさんの旧居である ウレンガオワさんの家

記者は、ウレンガオワさんの家の近くに低い草葺の小屋を見つけ、「あれは、羊の囲い場ですか?」と聞いてみた。ウレンガオワさんによると、彼女たちの家は2002年に建てられたもので、あの小屋は以前の住まいだという。一家が数十年生活した小さな草葺の小屋は、いまでは物置小屋になっていた。小屋はすでにぼろぼろだが、彼女は取り壊したくなく、残して記念にしているという。20年の努力により、ウレンガオワさんは、9万株を植え、総面積は3000ムーになる。樹木が防壁になり、環境は改善され、穀物も牧草も良く育つようになった。

環境保護が昂素村を発展に導く

「草原は牧畜民にとって金庫のようなもの。環境を保護することは、後代が続けて利用できることになる」これは昂素村の村民の共通認識になっている。 2000年の西部大開発戦略の実施以来、内蒙古の生態環境建設は、明らかな効果があがっている。1998年から2008年にかけ、国家は、累計371億元を連続して天然林資源の保護に投じ、北京天津への飛砂源の処理、「退耕還林」(耕地を林に戻す)、「退牧還草」(放牧地を草原に戻す)など、一連の生態建設重点プロジェクトは、良好な成績をあげている。

 

水道、電話、衛星テレビ、太陽エネルギーを利用したかまど、洗濯機、トラクターなど、ウレンガオワさんの家には、生活に必要なものは何でも揃う。節電のために、一部分の家電は、風力発電(左上)を利用する

ウレンガオワさんの紹介によれば、近年、羊の放牧により、草原を請負い、植草と水を施すなどで、収入は大きく改善され、現在、一家の収入は、毎年20万元あまりになり、請負う草原は、1000ムー、羊は2000頭余りとなり、これは環境改善と大いに関係している。

現在、ウレンガオワさんの二人の息子は大学を卒業し、都会で仕事している。新しい住まいのほか、かれらは3台の車と1台のトラクターがある。「いまの生活は何ひとつ不自由がなく、都会と同じですよ」とウレンガオワさんはいう。

歌舞にすぐれた昂素村の村民たち

2006年、昂素村は自治区により、新農村新牧畜区の試験村に指定されている。数年来、村は次第に砂漠から整った家屋と豊かな緑と牛と羊が群れる新農村になっている。一人あたりの平均収入は2万元を突破し、現代生態型家庭牧場の発展の道を進んでいる。

 

人民中国インターネット版 2010年1月19日

 


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