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蔡林海博士:「ポストコペンハーゲン会議」 2大陣営の様々な勢力の対局 2009年12月7日から18日にかけてデンマークのコペンハーゲンで開催された国連機構変動枠組み条約第15回締約会議(COP15)は、成果をあげることができなかった。チャイナネットはこのほど、第 3回国務院華僑事務弁公室専門家諮問委員会委員の蔡林海博士を訪ね、世界各国の温室効果ガス排出削減に対する姿勢、各国における「低炭素経済」の発展状況および、こうした情勢において中国が取るべき措置について伺った。 先進国と途上国・2大陣営それぞれの内部矛盾を読み解く COP15は京都議定書以降の温室効果ガス削減および環境保護に関する合意形成を目的とした国際会議。110数カ国の国家元首が参加し、地球規模の気候変動と温暖化がもたらす危機について強い関心を表明した。 だが、COP15は決して成功裏に終了したわけではない。先進国と途上国との間の矛盾がこのような結果をもたらしたのだろうか。蔡博士は次のように説明する。「実際、先進国側も分裂しており、2つの勢力範囲を形成する異なる利益集団が存在している。1つはヨーロッパ連合(EU)。EUは温暖化対策のリーダーとして、立法や二酸化炭素削減を実現する取引制度などの面で世界をリードしている。排出削減の面において、EUは米国およびその他の先進国よりも高い目標を設定しており、その積極的な姿勢も際立つ。EUは低炭素経済発展の積極的な取り組みを通じて気候変動に対応し、環境保護と排出削減の分野における優位性の強化を望んでいる。もう1つはアンブレラ・グループだ。アンブレラ・グループとはEUを除くその他の先進国を指し、米国、日本、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドが含まれる(地図上でこれらの国々は『傘』状に分布している)。これらの国々は排出削減の公約に非常に消極的な姿勢を示しており、中国を含むBASIC4カ国の削減目標を前提条件に据え、自国の削減目標を公約する傾向がある。EUも中国やインドなどの途上国が積極的に排出削減に取り組むことを期待しているが、米国が排出削減で責任を果たすことをより強く望んでいる。EUはこれを削減目標設定の際の1つの重要な条件としており、米国が責任を果たせばさらに高い削減目標を設定してもよいと考えている。こうした状況から、先進国内部にも激しい駆け引きがあることが見て取れる」。 さらに蔡博士は日本について、「2020年までの排出削減目標として1990年比で25%削減すると表明している。ただし、他国と同様、全ての経済体が排出削減に向けた取り組みに参加することを条件としている」と指摘する。 これに対し、途上国内部では、アフリカの一部の国々と小島嶼国はコペンハーゲン合意が自国の利益を損なうと主張し賛成票を投じなかったため、COP15 は法的拘束力のある合意文書を採択することができなかった。 これらから、COP15が成果をあげられなかった原因を、単純に先進国と途上国の2大陣営の対立に求めることはできないと言える。 先進国と途上国の間の隔たりは、「共通だが差異のある責任」の原則が最大の要因となっている。これについて、蔡博士は「途上国と先進国の2大陣営はいずれもこの原則を認めているが、これに対する解釈と重点の置き方はそれぞれ異なっている」と指摘する。 「先進国が強調するのは『共通』だ。地球は我々皆のものであるから、排出削減は皆が共に実現する必要があると認識している。一方、途上国が特に強調しているのは『差異ある』という点だ。現在の地球の気候状態は、過去200年間の先進国の高いレベルの工業化によって相当程度もたらされたので、先進国が歴史的責任を負い、排出削減の歩みを速めその実現に力を注ぐべきであり、途上国は自国の二酸化炭素排出量を緩やかに削減すればよいとしている」と詳しく分析する。 排出削減の議論の中で、先進国は1つの経済体全体の排出量に、途上国は1人当たりの排出量に重点を置いている。 また、資金の面では、米国のヒラリー国務長官が途上国への資金援助を表明したが、前提条件として途上国の排出削減参加およびBASIC4カ国の排出削減作業の透明性確保を挙げた。だが、途上国は先進国の資金援助を果たすべき義務と見なしており、無条件の資金提供を要求している。技術移転の面では、技術は基本的に企業が研究開発しその知的財産権を有しているため、途上国への無条件の移転は不可能と先進国は強く主張する。このように途上国と先進国の間には、資金と技術移転という非常に重要な面で隔たりが生じている。こうした点から、2大陣営の相互対立およびそれぞれの内部の矛盾と隔たりにより、COP15が法的拘束力のある枠組みを構築することができなかったことは容易に理解できる。 オバマ大統領はスピーチの中で、「現実社会における二酸化炭素排出は排出以外の何ものでもない。今後の排出は単なる数字の問題であり、客観的事実として存在する」と述べたことがある。蔡博士はこれについて「このようなとらえ方により、中国とその他の気候変動対応能力が劣る国との間の矛盾がさらに顕在化することになる」との見方を示す。その原因として以下の点を指摘する。「今後の矛盾は相当程度、温室効果ガス排出大国と気候変動対応能力が劣る国との間に生じる。今後、排出大国には米国、その他の先進国および途上国の中国が含まれる。気候変動は様々な自然災害を引き起こすことになる。例えば深刻な旱魃、水不足、島嶼国周辺の海面上昇などである。こうした場合、小島嶼国にとって致命的な脅威と損害が発生し非常に深刻なものとなるだろう。同様に途上国である中国にとっても、外交面や国際的なイメージに関わる非常に大きな問題となり、小島嶼国との間の摩擦も次第に大きくなるとみられる」。
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