呉建中=文
技術展示から文化交流へと、万国博覧会は159年間にあたって、一貫してテーマで時代の訴求に応え、そしてテーマで世界の発展に影響を及ぼしてきた。
万国博覧会は1851年に初めて開催されて以来、ずっと非営利的な博覧会として位置づけられてきた。過去の150年余りの期間に、万国博覧会は「進歩」、「革新」「交流」を核心的価値とし、一貫して文明進歩の提唱と文明成果の展示を万国博覧会の各イベントのメインとしてきた。
テーマの移り変わりで時代の訴求に応える
歴代の万国博覧会は強烈な歴史的感覚と時代の息吹を持ったものであり、それぞれの時期において世界じゅうの人々が関心を持っている課題を表現し、そして課題についての注目と説明を通して世界に影響を及ぼしてきた。
最初の万国博覧会の正式の名称には、必ず工業或いは勧業と芸術の二つの単語が含まれていた。当時の万国博覧会には全て芸術館があり、工業と芸術の間の関係は、当時の人々が世界を認識するにあたっての焦点だった。現在の万国博覧会では主に人類文明の進歩を展示しているが、当時の博覧会で、最もよく人類文明の進歩を表現できたのは発明と発見だった。1851年のクリスタルパレス、蒸気機関二台及びさまざまな機器は、産業革命の成果のシンボルとなっていた。「全ては万国博覧会から始まる」とのテーマもその時から全世界に広がり、そして世界の発展の足跡に影響を及ぼすようになった。
その後、展示の重点は教育に移り始め、そして精神面においての課題により多く関心を示すようになった。万国博覧会は十九世紀末から、教育の大衆化と制度化の促進に重要なプラットフォームを提供した。1873年のウィーン万国博覧会のテーマは「文化と教育」だった。1889年のパリ万国博覧会の文化科学館では専門的に初級教育についての展示がおこなわれ、当時の主催側の教育重視の姿勢をアピールすることになった。
二十世紀に入って、人類の科学技術事業が急速に発展することにより、万国博覧会の展示の重点も科学技術に移り始めた。米国は自国の科学技術におけるトップとしての地位を強調するために、1933年に大胆に「進歩の一世紀」というテーマを設定し、とくに規模の大きな科学館をつくって、自国の科学の成果を展示した。現在、多くの人は万国博覧会のテーマは1933年から始まったと言っているが、正しいとは言えない。実は、1933年前にもテーマがあり、ただし、その時は展示の重点がなく、何でも展示したが、1933年のシカゴ万国博覧会では、展示の重点を一つの分野にしぼった。
1933年前後の毎回の万国博覧会は、全て科学技術に重点を置いたものだった。1958年のブリュッセル万国博覧会では、鉄の巨大な模型・アトミウムをパークの中央に置き、原子技術の人類に対する役割を強調した。1962年のシアトル万国博覧会では、五つのテーマパビリオンで生き生きと「宇宙時代の人類」というテーマを表現した。二十世紀の五十年代以降、人類の地球に対する過度な開発と資源の過度な消耗につれ、人々は改めて発展方式を考え始めるようになった。
国連は1972年に、ストックホルムで初めて環境をテーマとする国際会議を開いた。1974年には、米国がスポーケンで国際環境博覧会を催し、初めて明確に環境問題をテーマにした。1982年には、「エネルギーは世界の原動力」をテーマにしたノックスビル国際博覧会が開催された。それ以降、人類は更に新しい課題である「持続可能な発展」を考え始めることになった。
1992年6月に開かれた国連環境発展会議では、二十一世紀に向けて持続可能な開発を実現するための具体的な行動計画である文書『アジェンダ21』を採択した。その時から、毎回の万国博覧会は基本的に「持続可能な発展」という課題から離れることはなかった。例えば、2000年のハノーバー万博のテーマは「人間・自然・技術」で、2005年の愛知万博のテーマは「自然の叡智」であった。2010年の上海万博も科学発展の視角から世界の都市発展を検討することになった。
万国博覧会のテーマを説明する意義は、万国博覧会が注目する内容及びソリューションの主旨を更に強調することにある。万国博覧会を催すことで、人類の直面している課題を検討し解決する目的を達成することにある。
「都市」が初めて万国博覧会のテーマとなった
技術の展示から文化交流へと、万国博覧会はこの159年間に、一貫してテーマで時代の訴求に応えてきた。2010年の上海万国博覧会は、初めて「都市」を今回の万国博覧会のテーマにした。このテーマは、全世界で顕在化している都市問題に対する積極的な対応である。
「より良い都市、より良い生活」(Better City, Better Life)というテーマの確立は、ギリシアの哲学者アリストテレスの「人類は生活のために都市に来、よりよく生活するために都市に居住する」と言う言葉に起因する。
国連人間居住組織が1996年に発布した『イスタンブール宣言』では、「我々の都市は、人類が尊厳ある生活が送れる場所にならなければならず、健康・安全・幸福に生活できる、そして希望に満ちて生活できる場所にならなければならない」と強調していた。しかし、都市が直面している混雑、汚染、犯罪、衝突等数多くの問題は、都市化の過程に起こった人と自然、人と人、精神と物質の間のさまざまな関係のアンバランスからきている。長期的にバランスが崩れていると、都市生活の質が後退するようになり、更には文明も後退する恐れがある。いかにしてよりよい都市を建設し、都市住民の生活の質を引き上げるかは、人類が二十一世紀に直面している大きな課題である。
そのため、2010年の上海万国博覧会は「調和の取れた都市」の理念で「より良い都市、より良い生活」の訴求に応えているのである。博覧会は「都市」をテーマに、そして「都市多元文化の融合」、「都市経済の繁栄」、「都市科学技術の革新」「都市コミュニティの再生」「都市と農村の対話」をサブテーマとしている。可塑性が高く、参与の度合いが高く、大国、小国を問わず、豊かな国、貧しい国を問わず、どの国も自分の都市を展示することができ、他国の展示からもヒントを得ることができるのである。
万国博覧会の184日間に、世界各国の政府と国民は「より良い都市、より良い生活」というテーマをめぐり、そして展示、フォーラム及びイベントを通して、都市文明の成果を十分に展示し、都市発展の経験を交流し、先進的な都市理念をPRし、新世紀の人類の居住、生活及び仕事のために新しいモデルを模索し、調和の取れた社会の営み及び人類の持続可能な発展に生き生きとした証左を提供するのである。
人民中国インターネット版 2010年4月13日
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