気候変動交渉における各国の溝を埋めることを目的にワシントンで開かれていた主要経済国フォーラム(MEF)が19日、閉幕した。気候変動交渉の困難さが再び浮彫りになった形だ。これに先立ちボンで開かれた気候変動枠組み条約作業部会では、6月の会合と12月にメキシコのカンクンで開かれる会議(COP16)までの間に、2回の追加会合を開催することが決められたが、具体的な問題は扱われなかった。今後の交渉をどう進めるか、つまり「2トラック」か「一本化」かで各国間には大きな溝があるが、今後の交渉の基礎となるのは依然「2トラックアプローチ」というのがメインストリームの意見だ。
05年2月に京都議定書が発効し、同年12月のモントリオール会議で「2トラックアプローチ」による新たな交渉プロセスがスタートした。1つは、議定書の下に特別作業部会(AWG)を設置し、附属書I国(先進国および経済移行国)の第2約束期間の排出削減義務を協議するというもの。もう1つは、発展途上国と京都議定書未調印の先進国(主に米国)が、気候変動枠組み条約の下で国際的な気候変動対策を促進するための長期的行動について2年間の対話を行うというものだ。対話は各国の相互理解の強化と共通認識の促進に重要な役割を発揮したが、各国の考えをまとめて締約国会議に報告するだけで、具体的な進展は得難かった。07年にインドネシア・バリ島で行われたCOP13で各国はバリ・ロードマップに合意し、条約下の長期協力の行動に関するAWGを設置し、新たな交渉プロセスがスタートした。これにより、既存の交渉プロセスと合わせ、「2トラック」の並行交渉が始まった。この後の度重なる協議を経て、両AWGは09年末のコペンハーゲンでのCOP15の前に、締約国の意見を幅広く集めた上で、各々文書案をとりまとめた。
しかし、欧米など先進国はCOP15で、2つのプロセスの「一本化」を主張した。交渉によって京都議定書に代わる単一の法的文書をとりまとめるというものだ。デンマーク案は、バリ・ロードマップの認める範囲を超え、発展途上国にも排出削減義務を強制しようと目論むものだった。同案は無数の発展途上国の強烈な反対によって日の目を見ずに終わった。
事実、長期的効力を持つ法的文書である京都議定書は、排出削減の数値目標を先進国に課し、法的拘束力のあるタイムテーブルと違約時の罰則を備えた、現在唯一の国際条約なのだ。議定書の第1約束期間が終了しても、議定書そのものは失効せず、その法的拘束力も弱まることはない。「一本化」は議定書の放棄を意味する。国際的な気候変動対策は約束履行体制の喪失によって著しく後退し、「共通だが差異ある責任」などの重要な原則も重要な法的裏付けを失うことになる。このような状況の下で、より整った新たな法的文書を成立させることは困難だ。先進国が「一本化」問題を再三持ち出し、先進国の排出削減の約束と発展途上国の自主的な排出緩和行動を同列に論じているのには、気候変動枠組み条約で確立された「共通だが差異ある責任」という基本原則を否定し、自らの責任を回避する意図がある。
現状から見ると、COP16の行方は楽観できない。国際気候変動交渉の当面の急務は、「2トラック」にしっかりと沿って交渉を加速し、第2約束期間における先進国の排出削減義務について法的拘束力のある合意を達成するとともに、COP15で合意された資金提供や技術移転といった鍵となる問題について、早急にしかるべき制度を整えることだ。各締約国が京都議定書の定める義務を忠実に履行し、「共通だが差異ある責任」の原則を導きに各自の責任をよりよく引き受けてこそ、気候変動対策の国際協力のさらなる推進が可能になる。
「人民網日本語版」2010年4月21日
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