孫玲=文
上海万博で国際機関のパビリオンの中で唯一の「自建館」(自費で建設するパビリオン)である世界気象館。157年の万博史上初めて、気象をテーマとするパビリオンが登場する。
創意に満ちたこのパビリオンには、「雲の中のしずく」という詩的な愛称がつけられている。四つの楕円体によって雲を形づくり、外壁は明るい白色の膜からなる。この膜の上には数千のノズルが設置されていて、これがすべて開かれると、建物全体は雲霧に覆われる。このとき、太陽の高度が42度より低ければ、中央広場から気象館を眺めると、建物の周りを囲む「霧の中の虹」を観賞することができる。しかも、この膜構造と霧噴射の設計は気象館の温度を下げ、「皮膚呼吸」のように、省エネ・排出削減の役割を果たす。
パビリオンの周辺には浅い池が設けられているので、遠くから眺めると、建物全体が池の中に浮かんでいるように見える。建物の東北部にはカフェが設置されている。このカフェは透明の外膜を用いているため、近くの景観を眺めることができるうえ、太陽の光が過度に差し込むことはないので、日焼けの心配もない。
「同じようなアイデアでこんなにもすばらしい効果が得られた建物は、これまでになかったでしょう」。このパビリオンを設計した呉暁飛さんは自分の作品にかなり満足している。二万平米のユネスコ医療研修センターを設計したことがあるこの若い建築家は、世界気象機関と中国気象局が上海万博会場に共同で気象館を建設すると決定したことを知ると、自分の設計案を提出し、見事選ばれた。
呉さんは中国気象局のロゴの「雲」からイメージをふくらませ、「霧」「水」「虹」を結びつけた。実現したかったのは、雲の中を散歩する感覚だという。
気象館は、「序曲 自然を抱擁する」「気候変動、都市の責任とチャンス」「天気、気候、水及び人々の平安と福祉」「科学技術の進歩と社会の責任」「未来を展望 未来の天気予報サービスと都市生活の体験」「回想と体得」の六つのゾーンに分かれる。展示は、交響曲の楽章のイメージや4D映画技術と組み合わさって、物語形式で繰り広げられる。来場者は「熱気球」に乗って雲海を遊覧し、風雨や雷電を眺めながら、気象や都市、人間に関する物語を理解していく。
みどころ1 「熱気球」に乗って雲の中を散歩
気象館に入ると、可愛らしい雲のキャラクター「藍藍(ランラン)」と「朶朶(ドオドオ)」が迎えてくれる。彼らの案内のもと、館内の見学がスタートする。
2階建ての気象館にはエレベーターがなく、ホールの中央には巨大な熱気球がある。そのガラスの扉の中に入ると、まるで広い戸外に身を置いているかのよう。周りには同じような熱気球が無数にあり、ゆっくりと上昇を始める。
海抜ゼロの地帯からどんどん上昇する。気流を横切り、花や草木がしだいに遠くなり、周囲は一面の雲海。何の危険もなく、対流圏を通り抜けたのだ。
みどころ2 4D映画館で雨風や雷電を感じる
二分後、熱気球は上空で停止する。ガラスの扉から外に出ると、頭上は澄みきった青い空、足下はゆっくりと回る青い地球。このとき、「藍藍」と「朶朶」は水滴(しずく)と空気に生まれ変わり、目の前では「水蒸気凝結」の映画が上映される。
風雨や雷電の発生を自分のすぐ近くで感じることができ、大気の不思議が一つひとつ解明される。
みどころ3 有名なお天気キャスター大集合
「藍藍」と「朶朶」のすばらしい演出が終了したら、気候変動の歴史を紹介している長さ40メートルの廊下を通って、地球に戻る。すると、ガラス張りの壁の中では、世界各地の有名なお天気キャスターが現地の天気を伝えている。この「万博気象台」は単なる展示ブースに止まらず、来場者にタイムリーかつ詳細な天気予報も提供する。万博会場内では、携帯電話で「万博気象台」の天気予報を自動的に受け取ることができるのだ。
5月9日の「気象館デー」には、世界各地のお天気キャスターが勢ぞろいするかも?
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世界気象館 |
テーマ:人々の平安と福祉のために |
パビリオンデー: 5月9日 |
面積:2000㎡ |
位置:Bゾーン |
人民中国インターネット版 2010年4月30日
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