劉心蓮=文
現在、上海全体が万博を迎える最後の段階に入って、いかにして世界中から訪れる観光客が満足する飲食サービスを提供することができるのか、という調整もラストスパートの重要な段階となっている。
江蘇省南京のある料理学校の生徒・徐陶香さんは、現在、万博会場Aゾーンにある日本料理レストラン「柚子」で最後の準備をしている。彼女はこのレストランの副マネージャーである。
「数カ月のトレーニングと作業によって、今では一人前の日本式のどんぶり料理を三十秒以内に完成でき、お客様が注文してから料理を出すまで一分三十秒以内にできるようになった」と、徐さんは記者に語った。
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マスコット「海宝」をあしらった万博特製料理 |
「すべての料理は半製品の状態となっている。特に日本式のどんぶり料理の場合、営業開始前にある程度の部分をつくりあげて保温状態にしておくのです。注文を受けてから行う作業は、取り出しと組み合わせ、そして盛り付けだけなので、四人の作業員によるライン作業によってスピーディーに仕上げられます。このようなラインは少なくとも十二組で同時進行することになっています」と、つけくわえた。
約五百席のテーブルに十二カ所のレジ、十二組の盛り付けライン、百人余りのスタッフのいるレストラン「柚子」では、一日当り6000人ほどの受け入れ準備ができている。
秒刻みのスピード
予測によると、上海万博の一日平均の来場者数は40万人で、多い日では60万人に達するという。マーケット・リサーチでは、75%の見学者が会場内で食事をすると見ている。米アトランタの2009年の人口51万9000人、都市面積340平方キロに対し、上海万博は5.28平方キロの会場で60万人を受け入れる必要がある。その難しさは数字を見れば一目瞭然である。
効率よく会場見学をするのに、飲食時間による影響をできるだけ減らすため、上海万博の千人当たりの飲食場所の面積を200平米に増やし、2005年の日本愛知万博の千人当たり109平米という基準より二倍ほど大きくしている。
万博の組織側にとっても関係者にとっても、上海万博の飲食供給はその規模の大きさは記録に残ることになるだろう。万博の会期中、一日当り40万人の来場者で計算すれば、上海は毎日主食とお惣菜を546.64トン供給する必要があり、184日間で7000万人となる来場者では上海で十万トンの食品を食べられてしまうことになるという。
上海は食品自給率が低く、ほとんどの農産物は他の省市の供給に頼っているため、今年三月末ごろに上海西郊国際農産品交易センター(一期)が運営を開始し、上海万博開催中に上海のすべての野菜、肉及び肉製品の取引をする指定交易市場となった。万博へ食品供給のロジスティックスとしているのは、上海周辺の省市だけでなく、内蒙古自治区や山東省なども一部の特産農作物の供給基地となっている。
万博会場内に進出するすべての飲食サービス供給会社にとっては、細部の一つ一つにおいて、万博という巨大な食卓に向けて大きな知恵をしぼり、そして最大の客数に対応しながら、来場者にできるだけ豊かな食事を提供しようにベストを尽くすことにしている。
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あるホテルが新しく提供する「万博特製料理」の数々を見物している市民たち |
「食品の安全のため、寿司(すし)、刺身(さしみ)などの生ものを使う料理は、会場内で提供されないかもしれない」。レストラン「柚子」の星野尾雅人総経理は、こう語った。万博開催中の五月から十月までは、上海の一番暑い時期であり、そして原材料を運送するトラックは夜中にしか入場できないため、代表的な日本料理の寿司と刺身は遠慮してもらうことは避けられず、家庭風料理がメインになるという。
また、中国進出二十年のピザハットは、万博開催中にもっとも人気のピザ三種類をメインに提出するという。ほかにも、会場内に四つの支店を設けた「俏江南」レストランは、万博のメニューから一部原材料の仕入れが不便なため、調理時間が長すぎる料理をカットし、あらたに中華料理と西洋風スナック及び飲み物を提供する「蘭」コーヒーレストランをつくったという。
食品の安全対策
現在、食品の安全問題に敏感になっている中国だが、上海万博にとってみれば食品の安全性だけでも今回の万博が成功するか否かの鍵を握る重要な要素となる。
上海市食品薬品監督管理局の謝敏強副局長は4月13日の記者会見で次のように語った。上海万博は開催期間も長く、来場者も多い。会場内で提供される料理の種類は多岐にわたり、それぞれ特色のあるものである。そして、会期中はウィルス性食中毒の発生しやすい高温高湿の季節になるため、食品の安全性を管理する仕事を過去に例を見ないほど徹底して行う必要があると、決意を表明している。
中国の食品に対する安全性が多数の部門に管理されている現状に基づき、今回の万博は主運営指揮部の公共衛生および医療チームの下、その分野の専門家によって組織された食品安全保障部を設け、上海市食品薬品監督管理局、農業委員会、商務委員会、質量技術監督、商工、公安、出入国(境)などの関連部門によって構成されるという。
また、その道のプロと認められる飲食サービス供給会社を供給業者として推薦したことは、運営側の英断ともいえる。たとえばスーパーマーケット「メトロ」は、政府に指定された三つの食品供給業者の一つで、イタリア館の指定食品供給業者となっている。
上海市普陀区にあるメトロ本店では、一部の棚に「スターファーム」といったラベルが貼り付けられている。「このラベルは、該当する棚にある食品の出所を、すべて追跡することが可能だということを表している」と、メトロメディア事務マネジャーの陳立斌さんは語る。さらに、スターファームのある食品には通常の商品バーコードのほかに、トレーサビリティーコードも張られている。箱に入ったトマトをトレーサビリティーシステムの端末でスキャナーすれば、産地、育苗から収穫までの日付、運送ルート及び品質検証などの一連の情報がすべてわかるようになっている。そして、現在のメトロではすでに五種類900点余りの食品がトレーサビリティーシステムに登録されている。
万博組織委員会は食品の安全性を確保するため、会場内の飲食店に納品されるすべての食材などは、必ず清潔な状態のものや半製品状態であることを要求している。そのため、組織側は万博会場外に「メインキッチン」を設け、毎日会場内に運ばれる五百トンもの食品の検査を納品前の段階で徹底して行うことにしている。
さらには、これまで行われた万博のやり方も参考にし、万博会場内に三カ所の快速検査実験室を設けるほか、会場外にも指定実験室を幾つか設け、万博に供給される各食品に対する監督と抜き取り検査を行う方針。万博食品安全検査実験室では、最新の快速検査技術を利用し、わずか十分間で乳製品に抗生物質、メラミンなどが含まれていないかどうかを検査することができる。こういった検査は全部で58項目があり、食糧、肉類、野菜など十二種類の食品検査ができるという。
そのほかにも、会場内での飲食企業にはリモート映像監視システムを取り付け、食品監督スタッフが会場内で移動しながら各企業の厨房の状況をリアルタイムで監視、管理ができるという。
人民中国インターネット版 2010年5月3日
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