繊細に指先を動かしバイオリンを弾くロボット、下水を浄化して飲用水にする下水処理システム、充電できる自動車、それから生物のように呼吸する建物…。日本館の数多くのハイテク先端技術の結晶が訪問客の目を楽しませている。入館を待つ人々の長蛇の列、取材予約もなかなか取れないメディア、いずれも日本館の人気の高さを示している。
ピンク色のロボット、葉っぱの耳をつけた雪ウサギ、今はもうアニメ番組でしか見ることのない豚をかたどった蚊遣り器、朱鷺にまつわる話を題材としたショーや展示…。「ハイテク館」とも呼ばれるこのパビリオンは、単にハイテクなだけではなく、入場客の心を充分に和ませてくれる展示であふれている。
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上海国際博覧会日本館では、見学用エレベータの壁一面が芸妓や桜の花などの絵で彩られ、日本の風情を醸し出している。 |
茶道と焼酎で日本を表現
ツノのような形の3本の「エコチューブ」、「紫蚕島(かいこじま)」という愛称を持つ薄紫色の日本館はドーム型になっている。暑い日差しの下、この「紫蚕島」の姿が特別愛らしく見えている。
空気は通すが雨水は通さない、この「生命のように呼吸する」超薄型フィルム外壁材は、数々の新聞紙上で紹介されている。
1階横側の入り口まで来れば、日本館のテーマ「つながり」を意味する中国語「聯接」という文字が目に飛び込んでくる。これは日本在住の中国人書家である熊峰氏の作品である。続いて展示されている絵画は、日中両国の文化交流の歴史を表している。熱い外から展示場に入ると、少し寒いくらいに感じられるのは、地面に取り付けた排水口のようなエコチューブから床下の冷気が上昇する仕組みによるものである。これは循環式呼吸ホールシステムの一環である。
丸い天井に向かって、エスカレータでゆっくりと上がっていくと、そこには大和民族の息遣いが感じられる。四季折々の日本の生活がそこに紹介されている。春の情景は、桜の花の造花が満開になっており、その下には石籠や竹垣、小さな茶室が配置され、日本の茶道文化を表現している。夏の情景は、窓の外に蝉の声が鳴り響き、子どもたちが遊び戯れる声が聞こえる。夕立の様子、そしてその後の清々しい空気が表現されている。日本の秋は、月見に酌み交わす酒、そして冬は雪の上に置かれた可愛い雪ウサギが心を和ませてくれる。
日本館のスタッフである黄鸝さんによると「じっくりと日本館を楽しんでほしい」とのことである。
ロボットが奏でる「茉莉花」
伝統的な日本の生活や風景の展望空間を後にすると、ストリートダンスの音楽が流れており、見学者の心を現代文化に呼び戻すだろう。
上海市在住の洋洋くん(6歳)が、床発電のマットの上で何度も飛び跳ねている。「これ本当に発電するの?」と尋ねる洋洋くんに、トキをイメージしたユニフォームを着たコンパニオンの女性が、頭上の画面にカウントされているエネルギー量の表示を指さす。そして日本語なまりの中国語で「ほら、本当に発電しているでしょ?」と優しく答えている。
愛知万博では、日本が展示したロボットがトランペットを演奏し話題になった。昨日、上海万博日本館の展示ゾーン裏手でプレショーが行われ、身長1メートルを超すロボットがバイオリンで「茉莉花」を演奏した。手先を器用に動かし弦を押さえ、音楽に合わせ身体を揺すりながら演奏する様子に、多くの見学客の注目が集まった。
多くの人が「あれはロボットが弾いているの?録音されたものじゃないの?」と疑い深い声を上げている。
黄鸝さんは「本当にロボットが演奏しているのです」と答える。「中国も日本も高齢化社会に入ってきました。このようなロボットが普及されれば、高齢者のお世話などができるようになる、というテーマがもとになっています」
壁にタッチ、都市風景が田園風景に
日本館のハイテク技術はパビリオン全体に表現されている。「解剖」された電気自動車や、下水を浄化して飲用水にする処理システム、また次世代ジェット旅客機の模型などが展示されている。安徽省在住の見学客・程さんによると、「子どもにとっては、ここは知識の宝庫だ」とのことだ。
ロボットが演奏をする会場には、高さ6メートル、幅27メートルの巨大写真「超臨場感フォト」が壁の一部として構成されていることに多くの人が気づくだろう。この巨大写真の構成コンセプトは、カメラが木の上の蝶の羽まできれいに写すことができる、というものである。この万能カメラは今のところコンセプトカメラの段階にある。
ロボットが演奏する後ろの壁にも、数々の技術が盛り込まれている。時刻を知りたいとき、壁にタッチすれば時計が現れ、テレビを見たくなれば指を動かし壁のテレビの電源をつける。身体を動かしたくなれば、壁にテニスのシミュレーション画面が現れる。家の中の風景を変えたくなったら、壁に軽く触れると、都市風景が田園風景に替わる。この「ライフウォール」は今のところコンセプト上の技術であるが、人体と壁をつなぐセンサーの基礎技術はすでに完成している。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年5月6日
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