開幕式物語り(下)  
 

文=何晶

1851年にイギリスで行われた第1回国際博覧会を皮切りに、159年もの間、各国で開催されてきた万国博覧会(万博)のすべてに共通して言えることは、それぞれに興味深い特色があり、ほとんどの万博は知識、科学技術、環境保護などの理念をテーマに開催されてきた。これらは、はっきりと開会式でも表現されてきた。そして、上海万博の開会式から、歴代の万博開会式での素晴らしい場面がよみがえり感慨深いものが連想される。

もっとも気重い開会式——1968年アメリカ・サンアントニオ万博

偉大なる牧師マーティン・ルーサー・キング・ジュニア

万博の歴史上最も重い雰囲気の中での開催となった、1968年のアメリカ・サンアントニオ万博。同年4月3日、アメリカ公民権運動のリーダーといわれた黑人牧師マーティン・ルーサー・キング・ジュニアは、テネシー州メンフィスで行われたストライキの支援に向かい、そこでその人生最後のスピーチ「I've Been to the Mountaintop」(私はあの山頂に登った)を発表した。翌日、齢39歳のマーティン・ルーサー・キングはホテル二階のバルコニーで、白人男性に狙撃されて射殺された。キング師の暗殺直後、アメリカ史上空前の事態が現われ、全米125の都市で一斉に抗議のキャンペーンが起こった。

1968年アメリカ・サンアントニオ万博のテーマは、「アメリカ大陸の文化交流」だった。世界に知られた演説「I have a dream」(私には夢がある)を発表したマーティン・ルーサー・キング・ジュニアにとって、平等な「交流」と「対話」を実現させることは、まさしく公民権運動のリーダーとして最大の夢だった。万博は当然、この世界を驚愕させた事件を無視できず、4月6日サンアントニオ万博の開会式において、組織委員会は特別に星条旗を降ろし、この公民権運動のリーダーに対して黙祷を行なうことにした。そのため、アメリカ・サンアントニオ万博は史上最も気重い万博となった。

環境保護ともっともかかわりのある開会式——1974年アメリカ・スポーケン万博

毎年6月5日を世界環境デーに

1974年のアメリカのスポーケンで行われた万博は、初めて環境保護をテーマに取り挙げた万博として注目を浴びることになった。組織委員会の提出したテーマ「汚染なき進歩」は、国連にも注目されたこともあり、毎年6月5日は世界環境デーに決まった。

1974年5月4日午前10時、スポーケン万博のとびらが開き、8万5000人もの人々がこの開会式に参加した。記録によると、はじめての参観者はカーター(Al Carter)という名前のジャズシンガーだったという。開会式は、スポーケン川の畔にある劇場で行われ、あわせて10の参加国と地域の代表が出席した。慣例に則り、当時の大統領ニクソン氏が祝辞を述べた。開会が宣された後、50000個のカラフルな風船が空に舞い上り、花火が打ち上げられ、万博のテーマソング「Meet Me By the River」(川辺で会おう)がスポーケン川に響き渡った。そして、参加国と地域の旗が徐々に掲揚されたほか、パラマウントピクチャーズがスポーケン万博のために制作した23分間のIMAX映画「人類は地球のもの」が上映され、大勢の観客に大きなインパクトと感動を与えた。

また、当時話題になったのがスポーケン万博の開会式で放流されたマスのことだった。環境保護の一環として、スポーケン川に西暦と同数の1974匹のマスが放流されたのだ。これは、スポーケン設立100周年記念と、スポーケン川の汚染の撲滅という意味を込めたものであった。

もっとも華麗なる変身となった開会式——1988年オーストラリア・ブリスベン万博

オーストラリアでも有数の国際都市と変貌を遂げたブリスベン

ブリスベン万博は、オーストラリア建国200周年記念のために特別に開催されたものだった。1988年4月30日の開会式には、イギリス女王エリザベス2世もわざわざブリスベン万博開会式のテープカットに参加。エリザベス女王とブリスベン万博主席レウェリン・エドワーズ卿が、同時に会場のとびらを開いた時にはそこに既に約4万人が待っていたといわれている。ブリスベン万博の開会式では、この万博の主席レウェリン・エドワーズ卿が「ブリスベンはもはや以前の都市ではない」と語り、当時ではこの言葉が名言となって広まっていった。万博開催によってブリスベンは華麗なる変身を遂げ、大きな田舎町から華麗に「人々を興奮させる国際都市」に変貌をとげ、当時はオーストラリアでも憧れの都市の一つとなった。

もっとも環境保護に力を入れた開会式——2005年日本・愛知万博

従来のハイテクノロジーの展示といったテーマから、環境保護というテーマに方向転換した愛知万博

3月24日、愛知県長久手会場の円状ホール。午後1時56分にチョウやハチ、ナナホシテントウ虫などに扮した数十名の子供達が入場し、動物と舞台周辺に飾りつけられた菜の花とたわむれる場面を演じた。場内には鐘の音が響きわたり、愛知万博のマスコット、森のおじいちゃん「モリゾー」と森のこども「キッコロ」が登場。この後、愛知万博事務局長である中村利雄氏が開会を宣した。また、公式イメージソング「I’ll be your love」の演奏と児童合唱団の美しい歌声の中で、125名のベンチャースカウトが持つ121ヶ国の国旗、4つの国際機構の旗が入場した。そして、開会式の祝辞の後にトランペットが鳴り響く。そのトランペットを吹いていたのは、生き生きとした動きを見せる白いパートナーロボットで、後ろで伴奏する交響楽団とともに会場を盛り上げた。その後、14体のロボットがステージに登り、音楽を奏でる中で自在な動きを披露。その素晴らしい演出で開会式はクライマックスに達した。

そして最後に、森のこども「キッコロ」が未来のこどもからのメッセージを持ってくる。「I LOVE YOU」という手話で、美しい地球の未来のために立ち上がろうとを参加者に呼びかけた。

 

人民中国インターネット版 2010年5月12日

 

 

 
 
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