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大地に春がめぐってくる

郭冷秋=文

啓蟄

プロフィール
黒龍江中医薬大学、漢方薬薬理教育研究室副主任、医学博士。漢方の食事療法、養生の研究に従事、黒龍江漢方医薬科学技術進歩一等賞を受賞。

毎年、太陽暦の3月5日前後が24節気の啓蟄である。「蟄」は「隠れる」の意味があり、動物が土にもぐって冬眠することを「入蟄」という。彼らは翌春、地上へはい出して活動する。古人はそれが春雷に驚いて目を覚ましたと考えて「驚蟄」とも呼んだ。この時期中国の大部分の地区で、すでに春耕が始まっている。華中地域の農家のことわざに「啓蟄過ぎれば、春耕を止めず」というのがある。

啓蟄の時期の民俗

啓蟄になると、民間ではナシを食べたり、「掃虫」「炒虫」といった虫除けの行事や、白虎を祭ったりするなどの習俗がある。中国語の「梨」は別れの意味を持つ「離」と同音のため、多くの祝日にはナシを忌み避けるが、啓蟄に梨を食べる。害虫を遠くに追いやり、変わりやすい気候の春だけに病気を身から遠く離したいと願うからである。

浙江省の寧波では、農家はこの日、竹ぼうきを持って田畑に行き虫を掃く儀式を行う。ほかにも、各地で「虫を炒める」という習わしがある。除虫を忘れないように、虫の代わりにゴマやダイズなどを炒めて「虫炒め」「虫除け」の意味をあらわす。広東では、農民は啓蟄に百毒を駆除する獣王の白虎を祭って、雷に驚いて目を覚ました蛇や虫やネズミやアリに農作物が害を受けないように祈る。

啓蟄の養生

啓蟄の時期の養生は、自然の気候風物や自身の体質に合わせて調整する。啓蟄を過ぎると、だんだん暖かくなるが、気温は一定せず、とくに朝晩の温度差が大きいため風邪を引きやすい。お年寄りはあまり薄着をしないよう心がける。この時期は、酸っぱい食品を少なめに、甘い食品を多く摂る。野菜は、甘味のあるニンジン、カリフラワー、ハクサイ、ピーマンなどをよく食べる。タマネギ、セロリ、ニラなども多く食べた方がよい。

春分

太陽暦の3月21日前後は春分である。太陽の黄経が零度、春季の真ん中に当たる。この時太陽は赤道を直射し、昼と夜の長さがひとしい。

毎年、春分の日に各地で「玉子立てゲーム」が行われる。つるつるした新鮮な玉子を選んで、殻を壊さずに玉子をたてる

春分を過ぎると、日差しもうららかで、雨水も豊かで、本格的な春の到来である。この時期、中国の大部分の地区の越冬作物も春の成長期に入る。華北地区と黄河・淮河の平原では、春分は正に冬小麦が伸びる時でもある。この地の諺に「春分の麦身を起こし、一刻値千金」という。北方の春は雨が少ないので、農民は急いで水をかけ、施肥し、小麦の生長を促す。

春分と民俗

春分は大事な伝統的な祝日である。周代(紀元前1046~同256年)にはすでに春分の儀式があった。明(1368~1644年)・清(1616~1911年)に到って、春分の日、皇帝は日壇で太陽神を祭ったという。春分のこの日、春野菜を食べたり、春牛を送ったりする民俗行事がある。広東の客家は祖先や神を祭る。南京の人は「春社」(春分の前後に土地の神を祭る)を行う。後に、文人がこれを発展させ、郊外への遠足とし、詩を吟じたり絵を描いたりする会を催すようになった。しかし、毎年春分のこの日、各地で最も流行っているのは「卵立てゲーム」である。4000年前、中国の祖先はこのゲームで春の到来を祝った。「春分になると、卵が立つ」という言い方が今なお伝わる。天文学者によると、春分の日は昼と夜の長さが同じなので安定性が最も良く、卵が立つという。今は、海外にもこの中国のゲームが伝わっている。

春分の養生

春分は一年で陰陽が平衡を保ち、昼夜が均等で、寒暖が半ばしている。したがって春分の時期は精神・飲食・起居などは、気候に合わせて陰陽のバランスを保つよう心がけるべきである。また、春分の日は天地の陰陽が交わり、春の気が調和し、万物が生まれる。人々は早めに休み、早めに起き、朝、体を鍛える時期でもある。年配の人は散歩、ジョギング、太極拳などをした方がよい。ほどよい食事をとって陰陽のバランスをとる。飲食は自分の体調に合わせて調和のとれた食事を選ぶ。例えば、魚、エビ、カニなどの寒性食品を料理するときは、必ずネギ、ショウガ、酒、酢などの温性調味料を入れる。

 

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