新緑と緑茶  
 

文=ゆうこ イラスト=tama  監修=徐光

さて今回は茶芸館のお話。前回もお話したが、上海にはお茶を楽しめる場所がたくさんある。お茶のメニューは一般的に、緑茶、紅茶、花茶などにわかれて書かれており、好きなお茶を選んで飲むことが出来る。もちろん茶芸館では、種類だけではなくて、中国茶の名前も目にすることが出来る。なんといっても茶芸館はお茶を味わう専門店、普通のお店よりもお茶の種類が多いのだ。

碧螺春(ピルチュン)茶や龍井(ロンジン)茶は、緑茶の常連で、知名度は抜群だ。ちなみに、以前ご紹介した陽羨雪芽(ようせんせつが)という名のお茶も緑茶である。緑茶とは、発酵させずに作られたお茶のことだ。ここでもまた店員さんに「日本で緑茶は、よく飲まれる飲み物で、必ず家に置いてあるいわば常備品なんです。でも、せっかく上海に来たんだから、いままで飲んだことのない味のお茶が飲みたい!」と注文をつける私。

すると、店員さんは、摘みたての“新茶”はいかがですかと薦めてくれた。店員さん曰く、お茶は種類が違えば、味わいも違うそうだ。中国茶すべてに共通している点は、とても香り高いという点だが、例えば、烏龍茶はしっかりとした味わいだが、紅茶の味わいはどちらかといえばまろやか、緑茶はみずみずしい澄んだ味わいなのだそうだ。緑茶のみずみずしい味わいの秘密は、茶葉に含まれるアミノ酸にあるとのこと。しかし、このアミノ酸、時間が経つごとに減少してしまうらしい。なので、春の緑茶が一番おいしく、夏になると少し質が落ち、秋や冬は言わずもがな。“新茶”は、すごく珍しいという類のお茶ではないが、しかし、一年に一度、それも一カ月ほどしか飲めない、いわば旬のお茶なのだ。

となるとぜひ緑茶が欲しくなってくるのだが、緑茶の鮮度はいかようにして判断するのだろうか?答えは、1触る、2色を見る、3折る、である。まずは、茶葉を触ってみよう。新茶は乾燥しており、手でよじると粉状になるが、古いお茶は柔らかく、手でよじっても粉状にならない。次に、茶葉の色を見てみよう。新茶は、色が鮮やかなのだが、古いお茶の方は深く沈んだ色をしている。最後に茶葉をポキッと折ってみよう。新茶の方は簡単に折れるが、古いお茶だとそう簡単に折れない。

さて、次は緑茶の製茶工程をご紹介しよう。緑茶の製茶工程はとてもシンプルだ。殺青(さっせい:発酵を止めるために熱を加える)、成型、焙煎、のたった3工程しかない。また、緑茶は殺青の方法によって、晒青緑茶(さいせいりょくちゃ)、蒸青緑茶(じょうせいりょくちゃ)、烘青緑茶(きょうせいりょくちゃ)、炒青緑茶(しょうせいりょくちゃ)という4つの種類に分けられる。

殺青とは、高い温度で茶を煎ることによって、茶葉の酸化を遅らせることで、茶葉の質、すなわち鮮度を保っている、と言われている。中国緑茶の製造過程は、植物の鮮度を保つための過程と同じなのである。

茶葉を高温で処理する方法として、一番始めに用いられたのは、日光を利用して乾燥させる方法だ。日光に晒して乾燥させ、その茶葉を保存するという製法である。雲南省は、中国の南に位置する高原地帯であり、日照時間が長く、すぐに乾燥させることが出来るので、晒青緑茶の生産にもってこいの場所なのである。

しかし、日光で乾燥させるやり方は、天気の影響を受けやすい。そこで、考え出されたのが、茶葉を蒸す方法である。しかし、蒸青緑茶の登場は比較的後の時代になってからで、茶葉が大々的に貿易で用いられるようになってからだ。その理由は、茶葉を遠くへ運ぶ必要があったためという点と、散茶(成型していない茶葉)は場所を取るという欠点があったが、茶葉を圧縮して、丸い団子状の形や、平べったい餅状(びんじょう)の形に成型することで場所を取ることなく効率的に運べるから、という理由からである。圧縮成型するには、湿気を含んでいるという条件が必要であるため、乾燥した茶葉は圧縮成型するには適さない。こういった理由から、人々は高温で殺青が出来、かつ圧縮成型が出来るという利点を兼ね備えた茶葉を蒸す方法を用いるようになった。蒸青緑茶は、貿易におけるニーズに見事に答えた知恵の結晶といえよう。

烘青緑茶の製造はかなりシンプルで、茶葉を炭火で煎ったらそれで出来あがりである。しかし、烘青緑茶も散茶であり、成型するのが難しい。散茶は貿易に適さないので淘汰されたのではなかったか?実は、烘青緑茶は、中国で茶を飲む習慣がかなり広まってから用いられるようになった製茶の方法なのだ。この製法が用いられるようになった頃には、茶葉の栽培が全国で行われるようになっており、茶葉を遠くまで運ぶ必要がなくなった。そのため、自然と、茶葉を蒸して、圧縮成型するという面倒な方法を取る必要も無くなり、茶葉を山から摘んできて、炭火で煎ってすぐに飲む、という簡単な方法でお茶を楽しむようになったというわけだ。

鍋を用いて茶を煎っているのをテレビでよく見かけるが、あれは、炒青緑茶の殺青方法である。なぜ炒青緑茶の殺青方法を使うのかと言うと、烘青緑茶の場合は、茶葉の形状が乱れてしまい、見た目があまりよろしくないので、商品として売るのに適さないからだ。鍋を使って煎ると便利かつ茶葉の形状を整えることが出来るという利点があり、更には、揉みながら煎ることで、茶葉の組織膜が破れるため、殺青した茶葉にお湯を注ぐと、茶葉のうまみ成分がお湯の中に簡単に溶けだしてくるというわけ。これが炒青緑茶のおいしさの秘密なのだ。

     太平猴魁
主要産地:安徽省黄山市
分類:緑茶類
参考価格:500グラム約2000元

 

人民中国インターネット版 2010年5月24日

 

 
 
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