全国日本経済学会、中国社会科学院日本研究所、社会科学文献出版社は25日北京で、「日本経済青書2010」についての記者会見を共同で開催した。同出版社発行の「日本経済と中日経済貿易関係発展報告(2010)」も同時に発表された。この報告は2009年以降の日本経済と中日経済協力の最新の動向について、現状と今後の情勢、比較と参照、循環型経済、低炭素経済、エネルギーと環境、貿易投資と地域経済協力などの各方面から、総合的な分析を行ったものだ。
▽日本経済、回復の兆しみえるが幾重ものリスクに直面
同報告によると、国際経済環境の好転、政府による力強い財政拡張政策、極めて緩やかな金融政策に後押しされて、日本経済の運営・発展における一連の重要な部分が驚異的な回復ぶりをみせている。経済成長はマイナスからプラスに転じ、株式市場は下げ止まって反転上昇し、生産規模は拡大し始め、消費ニーズが穏やかに回復し、企業の経営状況が徐々に改善され、日本経済が新たな周期の中で低下局面から上昇局面へ移る転換点にさしかかったことがわかる。これと同時に、日本経済の現在の回復プロセスには、日本円レートの継続的上昇、かつてない深刻な財政危機、インフレの再燃、雇用状況改善の難しさ、国際原油価格の急上昇といった種々の不確定性とリスクとが引き続き存在しており、このたびの回復プロセスにとって深刻なダメージとなり、さらには回復を中途で挫折させる可能性もある。
▽中日経済貿易協力には「危険」と「チャンス」が共存 「低下」の中に「上昇」
同報告によると、2009年の中日経済貿易協力は国際金融危機という厳しい試練にさらされたが、二国間協力の基礎は引き続きしっかりしており、全体としては「危険」と「チャンス」が共存し、「低下」局面の中に「上昇」局面もみられたということができる。中日経済のトップレベルの対話が、両国の経済貿易分野での戦略的互恵関係をうち固め、中日貿易は低下傾向の中に上昇傾向がみられ、日本の対中投資は底を抜け出し、中国の対日投資は情勢に反して上昇し、両国の省エネ・環境保護分野での協力が実務的推進の段階に入り、また中・日・韓国間の協力も積極的な進展を遂げた。二国間貿易をみると、09年の中日貿易額は2288億5千万ドルで前年比14.2%減少した。初のマイナス成長にはなったが、日本はなお中国にとって欧州連合(EU)、米国に次ぐ3番目の貿易相手先だった。投資分野をみると、09年下半期には日本の対中投資は年初に陥った底を抜け出して活発化し、通年の投資プロジェクト件数は同11.3%減少の1275件に上った。実行ベース投資額は41億1千万ドルで同12.4%増加した。一方、中国の対日直接投資は情勢に反して増加し、大型の買収プロジェクトが増加した。蘇寧電器は5700万元を投じて日本の大手家電量販店チェーン・ラオックスの27.36%の株式を取得し、中国企業として日本の上場企業の買収に初めて成功した。
同報告によると、2010年の中日経済貿易関係は新しいチャンスに直面すると同時に、新しい課題にも直面しているという。双方は省エネ・環境保護、技術貿易、サービス貿易、双方向の投資、中小企業、他国市場の共同開発、地域協力などの分野で実務的な協力を一層推進しなくてはならない。また経済貿易分野における中日の戦略的互恵関係のより高いレベルへの発展を推進し、アジアや世界の経済の安定、繁栄、発展の促進に貢献しなければならない。
▽東アジア共同体に多層的な人材ネットワークの構築を
同報告によると、09年9月に発足した日本の民主党新政権は「東アジア共同体構想」を打ち出したが、アジア地域の特殊性を考えれば、EUのような国家主権に制限を加える、法制化・制度化の水準が高い地域共同体を構築するのには相当な困難が横たわり、相当長い時間が必要になる。多層的な人材ネットワークを構築すること、たとえば問題を協力して解決するタイプのネットワーク、共通の利益を創造するタイプのネットワーク、生活・文化面での共通意識を醸成するネットワークなどを構築することが、東アジア共同体の実現にとって重要な通り道となる。アジア共同体の構築には全面的かつ戦略的に推進される構想が必要で、これによって各国が協力を有効に推し進め、共同体の構築をめぐるゼロサム式の悪性の競争を減らし、相互の信頼関係を構築し、不必要な対立を減らし、ひいては相互に利益を獲得できる地域協力を積み重ねて、多層的で総合的な協力の枠組の制度化プロセスを推進しなければならない。両国間の着実な協力にこそ東アジア共同体構築への希望が宿っている。
▽循環型経済の発展 日本の60年の経験が参考に
同報告によると、日本は世界で最も早く循環型経済の構想を打ち出し、推進し、目立った成果を上げた先進国の一つだ。第二次大戦後に日本が循環型の経済を発展させてきた60年あまりの歴史を振り返り、その基本的な経験を総括することは、中国にとって大いに参考にすべき意義がある。整った法律法規と対応する政策システムを築したことが、日本の循環型経済の発展にとって根本的な保証となった。企業の主体的地位を確立したことが、日本の循環型経済の発展にとってのカギとなった。また大勢の国民が積極的に協力したことが、日本が循環型経済を発展させる土台となった。中国は循環型経済の建設を積極的に推進していくために、考え方の転換、計画のしっかりとした立案、構造調整、法律法規と関連の政策の早急な充実、行政管理の強化、エコロジーに配慮した国民経済の算定の積極的推進、科学技術への依拠、モデルの提示と普及、宣伝の強化、民間組織の積極的な役割を十分に発揮させること、生産者責任制の拡大実施、エコ消費の衝動、エコ生産などに着手し、着実で有効な措置を取り、社会の各方面の力を動員して、循環型経済の建設を積極的に推進しなくてはならない。
▽未来の科学技術の発展ポイントを占領 日本の低炭素経済は緩やかに進展
同報告によると、日本は低炭素経済の発展や低炭素社会の建設で、エネルギー不足の圧力や汚染物資排出削減義務の履行といった現実的な問題点を抱えるほか、これからの科学技術の発展ポイントを占領して、経済の発展空間を開拓するという長期的な目標ももっている。日本は主に次の4方面で低炭素経済の発展と低炭素社会の建設を推進するとみられる。
(1)エネルギー消費料の削減、省エネ
(2)消費エネルギーの化石燃料から再生可能エネルギーへの転換促進(たとえば熱機で使用する化石燃料を再生可能エネルギーに変更するなど)
(3)緑化(植樹造林、森林破壊の防止、土地使用に対する管理の強化)などを通じた炭素固定の促進
(4)自然界、農業活動などで排出される温室効果ガスの削減(家畜のし尿の管理と利用、森林火災の防止などを強化する)
「人民網日本語版」 2010年5月26日
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