愛知万博から上海万博へ 日中を結ぶ観光大使として――山田外美代さん  
 

王浩=聞き手

山田外美代さんは2005年に開催された愛知万博の会期中、一日も休まずに会場に通い続け、185日入場の記録を達成、「皆勤賞」を授与された。2009年、彼女は家族と一緒に上海に転居、上海万博全期間百八十四日間の通し入場券を入手し、上海万博でも「皆勤」を果たす心積もりをかためたという。万博のなにが彼女をそれほどまでに引きつけるのだろう。また彼女の目に愛知万博と上海万博の違いはどのように映ったのだろうか。興味津津、記者は上海の山田さん宅を訪れた。

――山田さんが初めて万博をに触れたのはいつのことですか。愛知万博の会期中、なぜ連続185日間も通いつづけることができたのでしょう?

わたしが初めて足を運んだ万博は1970年の大阪万博です。そこで初めて万博とはどんなものなのかを知りました。愛知万博が開幕すると、会場が家のすぐ近くだったものですから、家族の者がわたしのために全期間入場券を買ってくれ、さっそく会場を訪れました。最初はせっかくの通し切符ですからムダにしないようにと通ったのですが、通いつづけるうちにだんだんと万博の魅力にとりつかれるようになったのです。会場では世界各国の人たちと交流ができ、世界中の人々やさまざまなものに触れることができます。たとえば、永久凍土が溶けて発見されたマンモスが展示されましたが、たいへんな人気でした。地球温暖化でシベリアの永久凍土が溶けてしまう。わたしたち人類の良くない活動がその最大の原因なのですから、わたしたち一人ひとりが環境保護に努めなければなりません。万博は、わたしたちに環境保護のためにはなにをしなければならないのかを伝えることもできます。万博はちょうど全体が大きな学校のようです。見学を通して、わたしは多くのことを学びました。

マスコットの海宝を手に。山田さんの「上海万博皆勤」の日々が続く

それと愛知万博が始まったころ、わたしは健康状態が思わしくなかったのですが、毎日万博会場に通うことで、体に力がわいてくるようになりました。主人もふたりの息子も、それでわたしが万博会場に通うのをたいへん喜んでくれて、こうした二つの理由から、わたしは185日間、全会期中「皆勤」できることになったのです。

――上海万博への「皆勤」が始まりましたが、どんな理由でご意思をかためられましたか? それも上海に引越しされてまで……。

愛知万博では中国館にも足を運びましたが、中国人の館員ととても仲良しになり、上海に遊びに行く約束まで交わしたほどです。愛知万博が閉幕した2005年の秋に、わたしは初めて上海を訪れましたが、その後は万博ボランティアとして何度も訪れる機会ができました。2009年4月、上海万博局は東京で上海万博宣伝キャンペーンを行いましたが、その会場で、光栄にも日本で発売する一枚目の入場券をわたしにプレゼントしてくださったのです。責任者のかたから、上海万博にも毎日通われますか、と聞かれましたので、わたしは笑顔でうなずいてしまいました。「皆勤」をお約束したようなものですよね。

上海に移り住めば、上海の普通の市民の目で万博を見ることができます。万博の楽しさをもっともっと味わえます。地下鉄に乗ったりして万博エリアの周辺も回ってみるなど、万博を迎えた上海の街の雰囲気を肌で感じてみたかったのです。

山田さん夫妻。手にするのは日本で発売する入場券の一枚目。上海万博局からプレゼントされた

――2005年に初めて上海を訪れてから今日まで、山田さんは上海をどんなイメージでとらえていらっしゃいましたか。

上海の変化はほんとうにスピーディーで、びっくりするほどです。初めて訪れたときには万博会場にあたる周家渡の一帯はまだ瓦れきの山で、いったいこんなところで万博が開けるのだろうかと心配になりました。ところが、その同じ場所にまったく新しい万博施設が立ち上がって、いまわたしたちを迎えてくれています。万博の開催にともなって上海市民の生活水準も文化レベルもハイスピードで向上していますから、すべてがスピーディーに変わっているといった印象を強く持ちます。

――中国館と日本館は近くに位置していますが、両方を参観されて、それぞれいちばん印象深かったのはどんな点でしょう?

わたしは中国館が日一日と建ちあがってくるのを見守ってきましたから、ちょうど子どもの成長を見つめているかのようでした。館内の展示はほんとうに素晴らしい。中国を訪れるまで、わたしは中国は後れていて、日本とは大きな開きがあると思い込んでいました。中国館では生き生きとした生活感にあふれる展示を目にしてとても感動いたしました。日中両国の人々の生活状態はもうほとんど同じと言ってもいいと思います。それと、中国館を参観して、日中両国の歴史と文化には多くの共通性があることに気づかされました。日本館には鑑真和上像の写真が掲げられていますし、九月からは上海博物館に東大寺の「鑑真和尚坐像」がいらっしゃいます。和上は度重なる困難を乗り越えて日本に渡り、仏教の戒律をはじめ多くの中国の文化をもたらされたのでした。遣唐使の時代から、日中両国はほんとうに密接な関係にあるんですものね。多くの日本人がぜひ上海万博にいらっしゃって、中国館と日本館の展示をご覧になってほしいと思います。

自宅の壁を飾る「万博記念写真」の前で山田外美代さん

――上海万博のテーマは「より良い都市 より良い生活」ですが、このテーマから上海万博と愛知万博とをくらべて、どんな共通点や違いがあると思われますか?

「より良い都市、より良い生活」のテーマはとても素晴らしいと思います。愛知万博のテーマは「自然の叡智」でしたが、それは人々に環境の保全と地球の保護を呼びかけるものでした。「より良い都市 より良い生活」というテーマにも、同じ環境保護の考え方が含まれていると思います。都市の建設にあたっては、人と環境の関係をうまく処理することがたいへん重要なのです。上海万博の浦東エリアには多くの国家館が建ち並んでいますが、浦西エリアにはベストシティプラクティス区が設けられていて、エネルギーの節約や環境保護を専門に検討するためのパビリオンが建てられています。「より良い都市 より良い生活」というテーマは愛知万博のテーマの継承と言ってもいいのではありませんか。異なったテーマのように見えますが、実際は多くの共通性を持っていると思います。

――山田さんは上海万博の観光大使に任命されました。上海万博に対してなにかご意見やご提案がありますか?

万博開催期間中、多くの観光客が日本からも訪れると思います。会場内に日本語の分かる館員やボランティアをもっと多く配置していただけたらと思います。日本人観光客により多くの便宜をご提供いただきたいのです。

 

 

人民中国インターネット版 2010年6月13日

 

 
 
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