幻の白いお茶  
 

文=ゆうこ イラスト=tama  監修=徐光

上海にある豫園は、かつて城壁が築かれていた「旧城内」の東北部に位置しています。1559年に造られ、すでに四百年あまりの歴史を有している豫園ですが、ここはもともとは個人の庭園でした。今では上海でも指折りの観光スポットになっています。

江南の風情が美しい庭園の門外には池があり、島には二層の楼閣があって、茶室が設けられています。“海上第一楼”とも呼ばれているそうですよ。ここに座って景色を見ながらお茶を飲む、もう最高の気分です。これだけでも大満足なんですが、今回はそんな場所で“幻の白いお茶”と呼ばれる白茶をいただいてきました。

私たち日本人からすれば白茶という名前を聞いても、何のことやらさっぱりわかりませんよね。たぶん中華街のお茶屋さんに行っても、そう簡単には買えないと思います。それに実際、中国の人に「白茶ってなんですか?」と聞いても答えられる人は実は少ないんじゃないでしょうか。

店員さんオススメの白茶を頼んでみた私、期待に胸がふくらみます。待っている間に携帯で白茶について調べてみたところ、「白茶(はくちゃ、しろちゃ、パイチャ)は、主に中国の福建省で生産されている中国茶。茶葉の芽に白い産毛がびっしりと生えていることが、名前の由来である」と出てきました。なるほど。ということは、白茶の葉っぱの上は白い産毛で覆われてるわけね。

ところが、店員さんが持ってきてくれたお茶を見てびっくり。というのも、葉っぱの上に生えているはずの白い産毛はないし、色は白ではなくて、淡いグリーン。それも緑茶の色よりかなり薄い感じです。お茶を間違えて持ってきたのでは?と思い、慌てて店員さんを呼んで聞いてみました。

すると、「これは安吉白茶というお茶で、正真正銘の白茶ですよ」とのお答え。「じゃあどうして白い産毛がないんですか?それにこのお茶白くないですよね?」 

すると、店員さんは笑いながら「白い産毛が生えているお茶が白茶だと思う方が多いようですが、それは、海外で出版されている中国茶の本の中でよく、白い産毛が生えたお茶を白茶として紹介しているからなんです。実は中国では白茶の定義について、まだまだ色々な議論がなされているんですよ。なぜかと言うと、茶葉自体が白いんじゃないからです。白い産毛が生えているから葉っぱが白く見えるだけなんですよ。でも実はかつて、本当に葉っぱ自体が白いお茶があったという記録が残っているんです」

木の幹も葉っぱも白、入れたお茶も白。このようなお茶はもちろん大変珍しく、めったにというか、まずお目にかかることは出来ません。皆さんはホワイトライオンやホワイトタイガーを見たことがありますよね。彼らの毛はなぜ白いのかというと、なんらかの原因で、体内で黒い色素が作れないためなんですが、このように皮膚や毛が白く出る現象をアルビノ現象といいます。植物である茶樹にもこの現象が発生して白いお茶が出来たのだと考えられています。

北宋の徽宗皇帝が『大観茶論』の中で、「白茶」の茶樹の記録が出てきて、「白茶と一般の茶は違うものである。白茶は偶然の賜物であり、人知の及ばぬものである。その数は非常に少なく一、二本しか目にしたことがない」と書いています。しかし、こう記述された宋代から明代に至るまでの三百五十年間あまり、白茶が発見されることはありませんでした。

時代は下って、1930年。福建省安吉市にある考豊鎮という場所で、野生の白茶の茶樹が1十本生えているのが発見されました。伝説の白茶がついに“お目見え”したわけです。1982年には、安吉市の天荒坪鎮という高度八百メートルの場所でなんと樹齢百年を超す白茶の茶樹が一本発見されました。柔らかな葉っぱは真っ白で、葉っぱの中心部分だけがほのかに緑がかっていたそうです。実はこの茶木が、今私たちが口にできる安吉白茶のお母さんなんです。研究者たちが挿し木をして白茶の茶木を育てようとしたのですが、真っ白な葉っぱを再現させることが出来ず、葉っぱはもとの緑色をした緑茶に戻ってしまったそうです。なので、現在私たちは本の中に出てきたあの白茶を飲むことはかなわず、白茶とはやっぱり幻のお茶ということになるわけです。

安吉白茶を飲む時は、ガラスの器を使いましょう。また、白茶はとっても“かよわい”お茶なので、入れる時には気をつけなければならないことがあります。普通、私たちが緑茶を飲む場合には沸騰したお湯を使いますが、安吉白茶の葉っぱは柔らかくて、とても薄いので、お湯の温度をあまり高くしすぎてはいけません。大体摂氏80度から85度のお湯を使うのが最適です。また、ミネラルウォーターを使うと、水の中に含まれるミネラルがお茶の味に影響を及ぼしてしまうので、ミネラルウォーターを使うのは避けましょう。

安吉白茶には、他のお茶に比べて二倍のアミノ酸が含まれており、神経の緊張をほぐしてリラックスさせる作用があり、また、勉強の効率や記憶力アップに大変効果的だと言われています。

     安吉白茶
主要産地:福建省安吉市
分類:緑茶類
参考価格:500グラム約8000元

 

人民中国インターネット版 2010年6月21日

 

 
 
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