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都市広場ホール |
都市生命館に一歩足を踏み入れると、現代の情報化都市を構成するさまざまな要素がすぐさま私たちの眼に飛び込んでくる。高速電車や目まぐるしく変動更新する株式情報、世界各都市の空のダイヤなど。それらのすべては私たちに都市のリズムとダイナミズムを感じさせるものばかりで、あたかもそこが本物の都市空間であるようにさえ感じてしまう。
上海万博の五つのテーマ館の中で、都市生命館は中国が独自に企画制作したものだ。当館の総合プランナーである中国美術学院の許江院長は、「都市は、それ自体が一つの生命体なのです。都市におけるヒト、モノ、カネ、情報、交通機関などの動きは人の血液、各種資源の輸送と廃棄物処理のためのライフラインは人の循環系、行政、教育、メディア、通信、医療、地域コミュニティなどは人の神経系にそれぞれ相当すると言えます。また、世界の各都市にはそれぞれ固有の文化があり、これは人に例えるならば、魂や精神に相当すると言えるでしょう。このように、都市は一つの生命体であり、その健康は私たち人類が力を合わせて守り、維持していかなければならないもので、これが都市生命館のメインテーマです」と語る。
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都市図書館 |
都市は一つの生命体だ |
都市生命館では、都市の生命を四つの要素に分けて、四つの展示ホールでそれぞれの要素を重点的に展示する。一番目の「活力駅」では、高度情報化時代の都市の姿を知ることができる。二番目の「循環パイプ」では、バーチャル技術を使って表現した水、電気、ガス、エネルギー、廃棄物処理などの各ライフラインの動きをまるで血管が脈打つように見せてくれる。三番目の「生活市街地」では、一軒一軒の商店が都市のさまざまなエピソードを語ってくれる。そして、四番目の「都市広場」では、五つの世界的に有名な都市の広場で起きるエピソードに関する映像が「オムニマックスシステム」を使って、リアルタイムで同時上映される。
都市生命館の以上四つのホールの中で、一番の見所は「都市広場」だ。このホールは直径40メートルの円形の映画館で、内部は七つの巨大スクリーンで構成されていて、ここで私たちは『魂の広場』と題された八分間の映画を鑑賞できる。この短編映画は世界各都市で取材した五つの「探す」をテーマにしている。アルゼンチン・ブエノスアイレスの五月広場では、ある子どもがテレビのアンテナを探していると、FIFAワールドカップが開催されている競技場でアルゼンチンの選手がゴールを決め、広場にいた人々は興奮の余りタンゴを踊り出す。ケニア・ナイロビ広場では、ある若者が偶然太鼓の音を耳にしたばかりに、思わず家に戻り太鼓探しを始め、深夜の広場でただ独り太鼓を演奏する。中国四川省漢旺鎮の鐘楼広場では、ある男の子が四川汶川大地震後の廃墟から将棋の盤と駒を見つけ出し、お父さんの墓前で独り将棋をさし、そして、哀惜の想いが込められた無数の孔明灯(諸葛孔明が発明したといわれる紙製の熱気球の一種で、亡くなった人の供養などに用いる)が大空に舞い上げられる。
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活力駅ホール |
会場内に展示されている電動高速列車 |
『魂の広場』はわずか八分間の作品だが、観る者に限りない想像的空間を与える。この作品の監督である中国美術学院映画・テレビ・広告学科の蘇夏主任教授の紹介によれば、作品に登場する各広場のエピソードはいずれもその都市の精神を物語るものだという。例えば、ブエノスアイレスの五月広場で起きた「テレビアンテナ探し」のエピソードからは、ブエノスアイレスの人々の情熱とロマンチズムが垣間見られ、ナイロビ広場の「太鼓探し」のエピソードからは、「踊りこそが人生である」というナイロビの人々のダイナミックな精神が表れているし、四川汶川大地震後の漢旺鎮の鐘楼広場で起きた「将棋探し」とのエピソードからは、四川の人々の精神的逞しさが溢れ出ている。
都市生命館では、都市を一つの完全な生命体として表現していて、私たちはこの生命体の特徴を一つずつ展示しているこの館に足を踏み入れることで、都市とは何かを感じ取り、さらに詳しく理解することができる。ここでは、都市は人が自らの発展を実現するための重要な「装置的空間」であり、同時に、人こそが都市の主体だということが再認識できる。「都市生命館への参観を通じて、皆さんに『自分こそが都市の主人公である』という意識をあらためて持ってもらいたい」と、許江院長は自らの願いを語ってくれた。
人民中国インターネット版 2010年6月22日
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