陳言=文
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陳言
コラムニスト、『中国新聞週刊』主筆。
1960年に生まれ、1982年に南京大学卒。中日経済関係についての記事、著書が多数。 | 上海万博日本館ナショナルデーは六月十二日であり、日本はもう一度注目の的となる。
一日約四十万人、多い時は五十万人以上の人が万博会場にやって来るが、多くの人は二、三時間待っても日本館、日本産業館を見ることを望む。映画、小説を通じて日本を目にしてきた人、家電、自動車を通じて間接に日本と接してきた人は、会場で直接日本を知ることになる。自動車、情報機器など日常的に日本製品を利用している人にとっても、日本人の一日の生活、先進的な製品を生み出す社会背景、今後目指す方向など、ここで見られるのは入館まで二、三時間並ぶ価値があるものばかりだ。
万博の日本館を見たすべての来場者の頭には、新しい日本のイメージが形成されていくだろう。映画、小説の中の日本とはひと味違い、技術が優れているという既成概念に収まり切らない、親しみやすい日本のイメージが参観を通じて出来上がるはずだ。日本に対するイメージもまた、万博を通じて変化すると思われる。
映画、ドラマには描かれない戦後の日本
中国商務部が公表したデータでは、日本企業が中国で直接または間接に雇用した人の数は一千万人を超えている。しかし、一般の中国人は、映画、テレビドラマから中日関係の情報を得る。その中には第二次世界大戦時など戦争シーンもよく出てくる。映画撮影技術の進歩によって、戦争の場面はますます壮大になっており、そのぶん残酷さも強調される。
中日間には六十五年前まで過酷な戦争があり、映画、テレビドラマがそれを表現することも必要であろう。しかし、一九四五年以降の中日関係、とくに経済関係が政治関係よりさらに重要となってきた現在のビジネスにおける中日のかかわりについて、映画、テレビドラマがまともに取り扱おうという動きはあまりない。戦前の残酷な侵略軍人が跋扈(ばっこ)しているシーンが終わらないうちに、日本ブランドの家電製品、自動車の広告が一段と音量も高く登場してくる。そのようなテレビ番組を多く見ていると、時の隔たりも次第にあいまいになり、戦前も戦後も区別がつかなくなる。
中国で上映される日本映画にも、戦後の中国とのかかわりの中で日本の経済成長を描いたものはあまりなかった。あるいは、映画、テレビドラマはそれを表現するのにあまり向かないのかもしれない。実は、戦後の日本人がいかに戦前の欠陥を克服し、経済発展をしてきたかを描き出した作品も、最近の日本映画には見受けられるのだが……。
そうなると、普通の日本、今現在の日本を知るためには、日本に行くしかないことになるが、一般の中国市民にはそれがなかなかできない。少なくとも数千万人の来場者がある万博は、日本に接するいいチャンスなのである。
ニュース以外の日本を知る絶好の機会
もちろん中国の一般市民は、ニュースから日本を知ることができる。しかし、ニュースとは、常にいつもと違うことが取り上げられるものであり、日常ではない。
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書道の交流をしている中日の学生たち。近年来、経済面だけでなく、青少年、メディアなども含む各分野での中日両国間の交流がますます緊密化している(東方IC) |
ニュースでは、スポット的に日本の政治変化、経済の新しい発展などを報じることが多いが、その連続性はない。映画がそれを補うこともあまり期待できない。二十一世紀に入ってから、中国は発展速度を上げ、成熟段階にある日本は相対的に変化が少なく感じる。中国では一九七〇年代、八〇年代の日本ブームはすでに過ぎ去り、日本は熱く見られる存在ではなくなった。大きな政治的変化が出る時には注目されるものの、いまや一般市民の生活には中国製の日本ブランド製品があふれており、日本には新鮮さを感じない。
しかし、日本がかつて歩んだ道は、中国も間違いなく歩むだろう。環境問題、為替問題、少子高齢化などはその典型である。経済規模などから見て、中国と日本はほぼ同等であり、生産技術だけ見ると日本は中国より数歩先を歩んでいる。日本こそ中国が真っ先にきちんと見るべき国である。ただ、発展の速度があまりにも速いと、その重要な点を軽視しがちである。
万博はその場を中国に提供したものと言えよう。「ビザを申請せずに世界各国に行って見る方法はなに?」というコマーシャル・コピーは、世界に目を向け、万博に目を向けることを呼びかけている。その中で、日本館はもっとも人気のあるパビリオンの一つである。
ニュース以外の日本の日常はここで見ることができる。四季折々の日本風景だけではない。歴史から現在の市民生活、産業の発展、今後の生活への展望などが見られるのである。それこそ日本の日常であり、日本の今後であると同時に、中国がいよいよ近づいてきた「次の段階」であろう。
日本館を訪れ、また日本館についての報道を見れば、現在の日本を知ることができる。それは日本の特殊な歴史時期ではなく、またこつ然と現れた製品でもない。普通の日本の姿を、多くの来場者はここで初めて見ることになる。日本に対するイメージも、この中で変化していくだろう。
人民中国インターネット版 2010年6月24日
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