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タイル張りの全天周のスクリーンには、中国の伝統的な磁器「青花」を思わせるような紋様が映し出され、満開の花、流水、滝、竜などの映像が瞬く間に流れ、眩しいほど美しい。
これはイナックスが上海万博日本産業館に出展した「青花流水」だ。イナックスの上海万博担当の川出純子さんは「チャイナネット」の取材に対し、この展示のインスピレーションについて、次のように話した。
「染付け白磁はもともと中国景徳鎮で14世紀ぐらいに初めて作られたもの。この技術が日本に伝わり、最初は限られた場所でとても豪華な焼きものとして作られていた。その後、愛知県の瀬戸市の職人がその技術を学び、瀬戸に持ち帰ったことから、瀬戸で大量に作られるようになった。
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瀬戸では器だけでなく便器にも染付が施された。この染付便器は人目をはばかる空間だったトイレを美しく装うことで、お客様のための「おもてなしトイレ」をつくりあげた。その後、一般家庭にも広がり、明治から大正に染付便器は数多く生産され広まることとなった。
このように中国から伝わった焼き物の文化の流れとともに、日本のトイレ空間を「もてなし」「くつろぎ」の場に変えていった、日本人の美意識や価値観を感じてもらえるような展示を目指した」
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「青花流水」のほか、イナックスは「世界一トイレ」と言われる日本産業館のトイレに洋風便器などを提供した。12日から公開された「金のトイレ」は特に注目を浴びている。
「下の陶器の部分には本物の金を使い、上部は金色に塗装した。金色は中国でとても縁起のいい色と聞いており、これでさらにイナックスへの興味を喚起できれば」と川出さん。
イナックスはこれまで、デベロッパーや設計会社などのプロユーザーを中心にアプローチしてきたが、今回は万博という好機を生かし、直接製品を使うエンドユーザーへのPRに力を入れ、認知度の向上を図っている。川出さんは、「抽選券に当たった来場者だけが産業館のトイレに入れるので、どうしても体験してみたいという声に応えるため、上海にあるショールームに同じ便器を設置し、来場者をそちらに案内している。ショールームを訪れるお客さんは、通常の倍以上になっている。また、万博協賛セールを行い、便器とシャワートイレのセットで普段よりお求め安い価格にしており、販売も好調」と、早くも出てきた万博効果について話した。
今後の中国市場に対し、川出さんは、「中国の人たちの生活レベルはますます向上しているので、よりよい暮らしに欠かせない水周り製品へのニーズもまだまだ続くと思う。これからは中国人が好むようなデザイン開発をしていきたい」と話す。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2010年6月30日
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