若い世代にいっそうの国連理解を
――上海万博はそのための絶好の機会
 
 

国連広報担当事務次長・赤坂清隆氏に聞く

沈暁寧 金田直次郎=聞き手

6月16日、国連館で行われた報告・交流会。活発な質擬応答に(写真=沈暁寧)

6月16日、上海万博会場内の国連館で「私たちの日常生活のなかの国連」と題する報告・交流会が開かれ、上海外国語大学と復旦大学から選ばれた英語、フランス語の話せるジャーナリズム・国際コミュニケーション専攻の大学生70人近くを前に赤坂清隆国連広報担当事務次長はじめ国連各機関の代表者が発言し、会場からの質問に答えた。赤坂氏は2007年に潘基文事務総長により広報担当事務次長に指名されて以来、世界各国の若者たちに国連への理解と参与を呼びかけてきたが、上海を訪れるのは初めて。報告・交流会終了後、赤坂事務次長に話をうかがった。

赤坂清隆(あかさか・きよたか)

1948年生まれ。京都大学法学部卒後、ケンブリッジ大学で経済学修士に。71年外務省入省。在ジュネーブ国際機関日本政府代表部、GATT、WHOなどで要職を歴任、2000年国連日本政府代表部大使、03年OECD事務次長、07年2月国連本部広報担当事務次長(広報局長)に。

――今回の報告・交流会は国連本部と国連各機関の代表が国連の具体的な日常活動を例に上海の若者たちに国連への理解と参与を訴える貴重な機会でした。初めて訪れた上海と上海の若者たちの印象はいかがでしょう

北京は何度か訪れていますが、上海は初めてですので、見るもの聞くものが新鮮で、驚きを禁じ得ません。活気にあふれた現代的な都市のイメージを各所で見て取ることができます。それときょうは多くの上海の若者たちと話し合う機会に恵まれ、実りある交流ができましたが、各代表者の発言に熱心に耳を傾け、物おじせずに積極的に質問する中国の若者たちをたいへん頼もしく思いました。今回は、国連児童基金(UNICEF)、国連開発計画(UNDP)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、国際原子力機関(IAEA)、世界貿易機関(WTO)、国連環境開発会議(UNCED)、国際通貨基金(IMF)、国連人口基金(UNFPA)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、世界観光機関(UNWTO)など多くの国連機関から広報担当が出席し、本部事務局からは私が出席しましたが、こうした大規模な会合が万博会場で開かれるのは初めてのことで、たいへん意義深いものがあります。学生たちの熱心な態度をとても好ましく思いました。

――上海万博の印象はいかがですか

中国館と日本館、それに国連館を参観しただけで、上海万博全体の印象を述べるのにはまだ早いのですが、中国館の「動く清明上河図」は実に素晴らしい。宋代の都市生活の様子が参観者の目の前に生き生きと再現され、文字通り「手に取る」ようでした。日本館の廃棄物ゼロを実現する取り組みの紹介やバイオリンをひくロボットなど最先端テクノロジーの展示も素晴らしい。どちらも歴史と伝統を踏まえ、科学技術イノベーションの助けを得て、いま人類はどこに向かって進もうとしているのかを啓示する出色の展示になっていました。連日長い行列ができているのもその人気の現われでしょう。

――上海万博のテーマ「より良い都市、より良い生活」は国連が『ミレニアム宣言』で掲げた発展目標とも重なります。万博が中国で開かれたことをどう評価されていますか

おっしゃるとおり、国連は今世紀を迎えるにあたって『ミレニアム宣言』を総会で採択し、その中で提起した発展目標は、人類の「より良い生活」を確保するための具体的な開発項目です。貧困をなくし、児童死亡率を引き下げ、初等教育を普及するという目標は中国ではきわめて際立った形で実現していますが、それは「改革・開放」以来、とりわけこの二十年の経済発展に負うところが大きいのです。中国の経験は、多くの発展途上国にとってたいへん貴重です。わけてもアジア、アフリカの発展途上国のよい手本になることでしょう。現代化は都市化の流れと軌を一にしていますので、「より良い生活」は「より良い都市」の実現とも重なります。上海万博のテーマは、現代化の途上で発生するさまざまな問題をどう解決するかという視点で提起されていますので、きわめて時宜を得たものといえます。中国館でも日本館でも環境を保全しながらどう持続的な発展を遂げるか、人類が共有する環境をどう保護するかに大きな関心が払われています。それは国連の『ミレニアム開発目標』が提起したものといっしょです。大気や水の汚染の問題、交通渋滞、スラムの存在……、都市化のかかえる諸問題に目を向けさせ、解決をはかる働きかけですが、中国の人々のみならず、特にアジア、アフリカ各国に大きな刺激になり、たいへん有意義な役割を果たすことになるでしょう。

――今回の報告・交流会は多くの学生にとっても初めての試みでした。質問に赤坂事務次長も英語で、あるいはフランス語で丹念にお答えくださいましたが、こうした若者との「対話集会」を国連の広報活動の中にどう位置付けていらっしゃいますか

今回の発言メンバーは「私たちの日常生活のなかの国連」について話しましたが、どの問題にも学生たちから的を射た質問が次々と出され、関心の高さをうかがわせました。こうした「参与」の姿勢をたいへん喜ばしく思い、上海の学生に、いずれの発言者も好印象を持ったことでしょう。「将来、国連関係の仕事がしたい。私にもできるでしょうか。いまからどう準備したらよいでしょう。具体的にお答えください」との質問もあって、会場が笑いに包まれましたね。その答えの補充になりますが、今年七月にはマレーシアのクアラルンプールで、来年は韓国の仁川で、国連主催の模擬国連世界大会(GMUN)が開かれます。世界中から大学生が集い、人類共通の諸問題の解決に向けて議論します。きょう質問した上海の大学生の英語、フランス語のレベルでしたら十分に代表の任務を果たせますので、ぜひ参加いただきたい。さまざまな活動を通じて中国の若い世代が国連に参与し、国連への理解をいっそう深めてくれるよう期待しています。国連は広報活動をたいへん重視していますが、世界各国の協力なしには多くの人々への浸透ははかれません。そのためにも若い世代の理解と参与が不可欠なのです。万博は世界各国と国際機関が一堂にそろい、人類の活動の成果を展示する場ですから、この会場を人類共通のプラットホームとして、国連の理念にも通じるさまざまな催事が活発に行われるよう心から願っています。

 

 

人民中国インターネット版 2010年7月15日

 

 

 
 
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