上海万博における情報発信源  
 

上海万博日本国家館館長 江原規由

7月1日、上海万博は中盤に入った。朝、7時45分、いつもの通勤バスに乗るとテレサ・テンの『時の流れに身を任せて』が流れていた。開幕以来、通勤バスの中で歌謡曲を聞いたのは、この時が初めてであった。右手の黄浦江の悠長な流れを見ながら聞き入っていると、川向うに万博浦西エリアのメルクマークの煙突温度計が摂氏28度を示しているのが目に入った。今日も暑くなるなと思って、冷房のきいたバスから降りると、眼鏡が曇った。

煙突、携帯電話、そしてボランティア

万博会場では、浦西の煙突温度計が足下の気温を知らしめているのと同様、場内情報の提供には気配りが感じられる。特に、携帯電話。前日に待ち時間の長かったパビリオンが伝達され、「昨日の状況を参考に今日の参観順序をうまく調整するように」といったパビリオン待ち列情報から、「待ち列に割り込まないように、ごみ類はちゃんと分類して捨てるように」、そして、「熱中症にならないように水分を多めにとるように、食べ物の衛生には十分注意し食べすぎないように」といった親が子どもに諭すかのような情報までが入ってくる。こうしたメール情報に接するたびに、中国人民向け情報伝達手段は、何といっても携帯電話なのだと思わず納得してしまうが、勝手に入ってくる情報に戸惑いも感じる。

場内情報は、ボランティアからも発信されている。彼らのいる案内所は訪ね人でいつも賑わっている。日本館の前にもこの案内所があるが、行く先や場内循環バスの乗り方などの問い合わせが多いようだ。ボランティアの丁寧な対応ぶりにはいつも感心させられている。

会場案内に努めるボランティア

ウェブサイトでの日本館の評判

参観者からの情報発信はどうか。例えば、日本館。開幕以後後2カ月で日本館参観者は131万人、上海万博総来場者数の16人に一人という多数の人に日本館を参観いただいている。

ウェブサイトのブログや掲示板をみると、日本館の人気の背景がわかるようだ。例えば、

○虽然不喜欢日本人,但他们的科技还是很高。

(日本人は好きじゃないけど、ハイテクはさすがにすごい)

○人的确是超级多,哎,不过值了!!

(人は超多いが、見る価値がある) など。

また、「アテンドさんには、卡哇伊(注1)(かわいい)くて漫画チック、空呢吉娃(注2)(こんにちは)などと、一生懸命挨拶してくれる」と好意的評価をいただいている。行ってみたくなるような日本館情報がより多く発信されている。その結果、「我暑假去世博一定去日本的馆,体验高科技(夏休みに万博に行って日本館のハイテクを見るぞ)」ということになるのであろう。

注1と注2 発音による当て漢字

 

人民中国インターネット版 2010年7月22日

 

 

 
 
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