郭冷秋=文
芒種
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プロフィール |
黒龍江中医薬大学、漢方薬薬理教育研究室副主任、医学博士。漢方の食事療法、養生の研究に従事、黒龍江漢方医薬科学技術進歩一等賞を受賞。 | 毎年太陽暦の6月5日前後、太陽が黄経75度に達した時が芒種である。麦など芒のある作物が成熟するという意味で、二十四節気の九番目の節気。このころ、大麦や小麦などが成熟するので、収穫を急ぐ。同時に秋に実る粟、モチキビやウルチキビなどの作物を植える季節でもあるので、「芒種」あるいは「忙種」と言う。各地の農民が収穫や種蒔きで最も忙しい時節でもある。貴州省の農家のことわざに「芒種に種蒔きしなければ、後で蒔いても無用」と言うのがあるが、四川には「芒種は種蒔きに忙しい、嫁の親に会っても言葉を交わす暇もない」という。このことわざは芒種のころは農事を急がなければならないことを言っている。
●芒種の節気と民俗
芒種が忙しいと言っても、各地の人々は忙しさの中に楽しみを見つけるので、おもしろい民俗活動が広く伝わっている。
「安苗」 安徽省南部の農村では、芒種の時期になると水稲を植えたあと、秋の豊作を祈るために、苗が無事育つよう「安苗」の祭祀活動を各地で行う。どの家でも新小麦粉で五穀や家畜、果物、野菜などの形にした饅頭を蒸かし、さらに野菜の汁で色づけし、お供え物として、五穀豊穣、村人の無事をお祈りする。
「打泥巴仗」 貴州省東南部一帯のトン(侗)族の青年男女は、毎年芒種の前後に泥投げ合戦、「打泥巴仗」祭りを必ず行う。その日、新婚夫婦は親友の男女とともに、集団で田植えをする。田植えをしつつ泥を投げ合ってふざけ騒ぐ。さて、終わったら、戦果を見る。着物に泥が一番多くついた人が一番の人気者ということになる。
「煮梅」 江南では毎年6月に梅が成熟する。三国時代に「青梅煮酒英雄を論ず」という物語がある。青梅にはさまざまな天然の良質な有機酸と鉱物質が含まれ、血の浄化や整腸、血中脂肪の減少、疲労回復、美容、酸と塩基のバランス調節、身体の免疫力強化など独特な栄養保健機能がある。ただ、新鮮な梅はあまりにも酸っぱく、加工しなくては食べられない。それで「煮梅」にする。
●芒種の養生
芒種のころは、雨が多く、気温も高くなって、中国の南方は長雨が続く梅雨のシーズンに入り、じめじめする。体の中の汗が気持ちよく発散しないため、人々は体がだるく、元気がなくなる。
こういう時は、体質を増強し、暑気あたりや水疱瘡など季節的な病気や伝染病の予防に注意する。同時に、気楽で愉快な気持ちを保つよう心がける。
夏は昼が長く夜が短いため、昼の適当な休みは疲労を取り除き、健康によい。この時期は、暑気払いの作用のあるものを多く食し、唾液を生じ渇きを押さえる飲食をしたほうがよい。お年寄りは体の機能の低下で、暑い日は消化液の分泌が減り、心臓や脳の血管がある程度硬化するので、食事はさっぱりとしたものを主にとり、胃腸や脾臓に優しく、血圧降下や脂肪減少に効果のある、暑気払いの食品で補う。
夏至
毎年、太陽暦の6月21日か22日に、太陽が黄経九〇度に達した時が夏至である。この日陽光が地面に直射する位置は一年中で最北端になる。ほぼ北回帰線上を直射し、北半球では昼が最も長い。
●夏至の民俗
夏至は中国で最も古い祭日の一つで、昔は「夏節」「夏至節」とも呼ばれていた。周代(紀元前1046~同256年)の時、疫病、凶作などの災いを祓うために夏至に神を祭った。宋朝(960~1279年)から始まって清朝(1616~1911年)に至るまで、夏至は一家団欒のための全国的な祝日になった。北方地方では、「冬至はワンタン 夏至は麺類」ということばがあるように、夏至の節気に北方各地では麺類を食べる習俗がある。江南の水郷である浙江省紹興市では、夏至の日に龍船(みよしが龍の頭の形をした舟)のレースが行われる。中国で緯度の最も高い漠河県では、毎年夏至の前後、つまり6月15日から25日までの9日間、白夜になり、オーロラが常に見られるため、当地では「夏至」を観光祭に定め、毎年数万人の観光客が漠河の北極村で夏至祭りを楽しむ。
●夏至の養生
夏は暑いため、和やかにのんびりと寛大で、元気溢れる状態を保つようにする。運動は養生の中で欠くことのできない要素の一つである。夏の運動は涼しい早朝か夕方に行うようにし、場所は水際、公園、庭など空気の新鮮な所が良い。飲食の面は、夏至の飲食はあっさりしたものを多めにとり、脂っこく甘いものを少なめにとる。
人民中国インターネット版 2010年8月
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