蔚県の切り紙の製作工程

設計

設計は、切り紙制作の第一歩である。また重要な一歩である。1枚の切り紙が美しいか否か、意味があるかないか、はすべて設計の良し悪しにかかっている。紙を切るのは難しくなく、他人の図案を用いても、それを切り紙にすることはできるが、自分の想像あるいは他人のリクエストに従って切り紙をするとなると、頭を働かしての設計が必要になる。まず下絵を描き、それが自分でよいと思ったら、本番用の絵を描き、満足するまで続ける。そして本番用の絵に従って、彩色した図を描き、設計を完成させる。社会の絶え間ない発展に伴い、伝統的な切り絵の継承とともに、絶え間なく新しい創造を行い、より多く、より美しく、より社会の需要と結びついた切り紙作品を創造することが必要とされる。絶え間ない新しい創造により、切り紙は、人々の需要を満たすものとなり、さらなる発展がとげられる。

刻板

刻板は、新しい切り紙のサンプルの設計完了後、やや厚い白い紙の上にそのサンプルを載せて切り紙をし、型を作ることである。このような型は、切り紙をたしなむ人がすべてできるわけではなく、比較的高い技を持つ人のみが可能である。なぜかといえば、型をつくる紙が厚い、というだけでなく、型は、設計の図と完全に一致していなければならず、少しの誤りもあってはならないからだ。型に間違いがあれば、すべての切り紙にそれに従って間違いが起きてしまう。型ができれば、その後、「熏様」あるいは、スキャン、あるいはコピーなどの方法により、型と同じ複製品を作ることができる。また、設計の図案に従って型を染めれば、のちの色を染める工程の担当者の参考になる。

熏様

熏様は、大量に同じ切り紙を作る際の、重要な工程であり、型を大量に複製するときの過程ともいえる。かつて、「熏様」の方法は、複製したい型をまず白い紙のうえに置き、一緒に水に浸し、とりだしたのち、型を上にして白い紙と一緒にガラス板の上におく。ガラスの板をひっくり返し、下から燃えるロウソクでいぶす。ロウソクの炎は湿り気のある型と白い紙にあたると炭が付着し、それを黒くする。型をはずすと、白い紙の上の型の穴のあいた部分は黒くなっており、それが「熏様」といわれる。この方法により、一枚の型から多くの「熏様」を生み出すことができる。現在では、このような伝統的な方法はすでに激減している。なぜならスキャンやコピーなどの方法が「熏様」に取って代わっているからである。

理紙

理紙は蔚県で用いられる上等の宣紙である。制作される切り紙の大小の違いにより、一度に切られる枚数も違いがある。20センチ以下のものなら、一般的には、一度に50枚、大きくなるほど一度に切り出せる数は少なくなる。一枚まるごとの宣紙のような大きな作品なら、一般には、1度に5枚である。小型の切り紙なら、50枚の宣紙を平らにし、ととのえ、5枚ごとにタルカムパウダーをまき、切ったあと、紙がはなれやすくする。宣紙を平らにするには、紙をおさえる釘で周辺を固定する必要があり、それによって一体化する。

釘様

釘様は「熏様」(またはスキャンされた型、またはコピーされた型)を一列一列ごとにきちんと準備された重ねられた宣紙の上に置き、「紙釘」で、「熏様」の四隅と宣紙をとめることである。すべての「熏様」をとめてのち、その外側に沿ってそれを切り抜き、それぞれの宣紙のうえにこれから切ろうとする「熏様」が残る。現在では、スキャンやコピーなどの方法をもちいるため、「釘様」は容易になっており、「熏様」では宣紙と同じ大きさの紙のうえにスキャンまたはコピーし、このような多くの図案の紙を宣紙のうえにおけば、「釘様」のときには、整っていて、また便利である。

浸悶

浸悶では、「理紙」の工程が終わった表面に型のついた厚い宣紙を水にひたし、取り出したあと、厚い白い紙の上におく。白い紙の大小によって、いくつかの束が置ける。その上にまた厚い白い紙を重ねる。手でその紙を平らにしたあと、力持ちの人間によって、足を使って思い切りそれを踏む。重ねられた宣紙がじゅうぶんに固く踏みしめられてのち、それをまた取り出し、日陰において陰干しする。陰干しのあと、表面に型がついたプレスされた宣紙は、すなわち切り紙の原材料となる。

刻紙

刻紙は、特殊なテーブルの上で行われる。このテーブルは、中央に丸いくぼみがあり、そこに熱くとけた蝋を入れる。蝋が冷えてかたまったあと、ロウの板になるのを待つ。蝋の上で切り紙をすれば、小刀とテーブルを守ることができる。紙を切る時には、「熏様」が表面についた宣紙をその蝋の板の上に置き、「熏様」の模様のそれぞれ違う形状にしたがい、大小の刀は、ゆっくりひいたり、すばやくはねたり、強く押したり、細かく区分したりして、「熏様」の上の黒い部分を切り除けていく。その時には絶え間なく刀の傷に注意しなくてはならない。刀に欠けや磨耗があれば、すぐ研ぐ。さもなければ、1つのミスが一重ねの切り紙を台無しにするからである。

点染

点染は、容易なものではない。作り手たちは、よく、切り紙芸術は、三分の切る技、7分の染め、という。ここにも、染色の重要さがみえる。特にある1つの色に濃淡をつける必要があるときは難しい。例えば、紅の花なら、花の芯は色を濃く、外側に向かうに連れ、だんだんと浅くし、そこには、グラデーションの層が明らかに見えてはならず、また立体感を備えなければならず、それは、すべて切り紙の作り手の技術による。蔚県の切り紙が使用する絵の具の原料は多くを鉱物としており、色彩は豊かで、切り紙は鮮やかで豊かなものとして称賛され、農民たちに広く歓迎されるだけでなく、街の人々もその色彩を好んでいる。

掲分

掲分は、2段階で行われる。第一段階の「掲分」は、切り紙を切り抜いたあとである。宣紙には、5枚ごとにタルカムパウダーがまかれているので、それはすぐ10枚に分かれる。その後は染めの工程になる。第二の「掲分」は、染めたあと、その5枚を一枚一枚わけることで、その時には、特別な注意を必要とする。敗れないように、大きな力は加えてはならない。大型の切り紙をはなすのは、ある種の技術を必要とする。刻まれた紙は、ほそいライン、しかもそれは入り組んでおり、それをはなし、1本のラインも失ってはならない、というのは、まったく容易なことではない。もし、この工程でミスをすれば、それまでの工夫は水の泡である。

包装

包装は最後の工程である。「掲分」が終われば、切り紙は、完成品である。切り紙を保護するため、それを1枚1枚白い紙のなかにいれ、二つ折りにする。蔚県の切り紙は、多くが花鳥魚虫、京劇の隈取りの8枚組など複数の枚数のセットであり、もっとも多いものは12支のセットである。

そして、それをセットにし、専門の印刷された硬いケースのなかにいれなくてはならない、切り紙の作り手のなかには、違ったサイズの、精度が違ったレベルのアルバム式のギフト式の包装にしているものがあり、切り紙をそのなかにおさめ、封をする。最近では、掛け軸式のものや、額縁のなかに入れたものもあり、それらの切り紙はさらなる包装を必要とし、格がさらに高くなる。

 

 

 

 

 
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