河北省蔚県の民間切り紙

文=力強

中国の切り紙は、ハサミまたは小刀で紙の上で芸術的な加工をなす、ある種の造形芸術である。大多数の民間切り紙の作品は、働き者で聡明な農民の手により、純朴な風格と色濃い郷土の空気に満ち、人々に歓迎される中国伝統の民間工芸品になっている。

中国各地には、あまねく民間の切り紙があり、それぞれ特色を備える。北部の切り紙のなかで、代表的なものは、河北省蔚県の民間切り紙である。河北省蔚県は、切り紙の郷であり、河北省蔚県の切り紙は、我が国の第一回非物質文化遺産として発表されている。河北省蔚県の民間の切り紙は、河北省武強の木刻画印刷の窓に貼る飾り、天津楊柳青の木版年画、そして当地の小刀で切り抜くカットワーク刺繍などの、民間伝統の芸術形式を継承し、吸収のうえ、一種の芸術のジャンルを生み出しており、模様を白く切り抜く手法と細々とした色づけを特色とする。河北省蔚県の切り紙は、窓に貼る飾りを主とし、非常に豊かな装飾性に富む。毎年、旧正月を迎えるにあたり、家々では、切り紙作品を新しく張りなおした窓枠の紙の上に貼り、室内に喜びの気分を添える。河北省蔚県の切り紙は、切り方の細かさ、着色の鮮やかさ、構図内容の豊富さ、造形の生き生きとして活発な点が特色である。

蔚県では、南張荘の切り紙が全国の切り紙において屈指に数えられ、南張は、“中国切り紙第一村”と称えられる。南張荘は、古村である。この地の切り紙は、200年の歴史があり、以前には、切り紙の名人・王老賞さんがいた。王さんは、7歳で染色を学び、12歳で小刀により切り紙を始め、一生を切り紙に捧げた。王さんは、各地の民間切り紙を広い範囲にわたって集め、細かな研究を行った。王さんは、継承のなかに絶え間ない創新を行い、100あまりの劇のなかの600人あまりの異なる人物を設計し、切り抜いた。彼の作品の多くは人物のみであり、特別の物語を伴うわけでなく、画面には、枠や背景はない。人物の動きは大きく、それぞれ豊かな持ち味があり、色は特別に鮮やかであるが、目を刺すようなものではなく、華麗で優雅である。使う色は多くないが、濃淡の変化は無限であり、独特の芸術的風格を形成し、南張荘の切り紙に新しい特色を加えている。現在、南張荘はみなそれぞれが切り紙をたしなみ、彼らは王さんの切り紙芸術を受け継ぐとともに発展させている。

蔚県の切り紙は、設計、型をおこす、型を複製する、紙を重ねて整える、型と紙を動かないようにとめる、水にひたす、細かく染める、重ねた紙をわける。紙を切る、包装の10工程に分かれ、そのもっとも重要なのは、紙を切ることと、細かに染める2工程である。

紙を切る時には、数十枚の宣紙を重ね、上にこれから切ろうとする図案の原稿を重ね、図案の模様の違いによって、それぞれ違う形状の刀を選び、ゆっくり引いたり、早く引いたり、強く押したり、細かに線引きをしたりして、緻密に切る。また刃が傷んでいないか、絶え間なく調べる。もし刀に欠けがあったり、丸くなっていたりすれば、即座に研ぐ。そうでなければ、切ってはならないところを切ってしまうなどして、その切り紙全体がゴミになってしまうからである。

細々とした染色は、大変なものである。特に一色により染め、その濃淡をなすなら更に難しい。例えば、紅の花なら、花の芯は色を濃く、外側に向かうに連れ、だんだんと浅くし、そこには、グラデーションの層が明らかに見えてはならず、また立体感を備えなければならず、それは、すべて切り紙の作り手の技術による。

蔚県の切り紙は、大きな発展があり、全県の切り紙作品は、数千の図案にのぼり、1幅のものから連続画面のようなセットの切り紙もあり、切り紙の幅は、次第に大きくなってきている。蔚県の切り紙は、中国人に人気があるだけでなく、世界の40あまりの国家と地区に売られている。

 

 

 
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